第54話 ゴーレム
「不味い!」
「これは!?」
ティーエさんとパーが突然声を上げる。
次の瞬間――何かが広がるのを感じた。
何がとは説明できない。
だが……目には見えない何かが辺りに充満していくのがはっきりと感じられる。
「これは……たかしさん!」
「ああ……」
「どうかしたのですか!?」
フラムも気づいた様だ。
だがアランや王女はこの異変が分からない様で、俺達が警戒する姿に狼狽える。
「ゴーレム……」
冗談抜きで視界が全て埋まるレベルの表示数だ。
どうやら俺達がウィルスだと思ていた物は、超極小のゴーレム――魔物だったらしい。
余りに大量の情報に、頭の処理が追い付かず思わずスキルを止める。
俺は頭を軽く振ってからティーエさんに声をかけた。
「ティーエさん!拡散を防ぐための結界を!」
俺の叫びにティーエさんは首を横に振る。
冷気対策に張った結界がゴーレム達にすり抜けられている以上、拡散を封じるにはそれ以外の結界を張る必要があった。
だが、どうやら彼女は別種の結界魔法を持ち合わせていない様だ。
「フラムやパーは!?」
「私の
「僕のも同じだね」
「くそっ」
仮にゴーレム達を遮る事が出来ても、2面だけでは意味が無い。
こうしている間にも、ゴーレム達が壁をすり抜け広がり続けて行っているのが感じられる。
非常に宜しくない状況だ。
「不味いね。僕の魔法を吸収して増幅しただけじゃなく、その魔力を利用して遠くにまで拡散していってる」
近づかなければゴーレムが移れなかったのは、魔力不足だった為だろう。
だがパーの魔法から魔力を吸収し、活動する為の魔力を大量に抱え込んだ今のゴーレム達は、新たな宿主を求めて城内を精力的に駆け巡る。
いや、城内だけじゃない。
下手をしたらこの国中を蹂躙しかねない勢いだ。
「いったい……何が……」
王女が苦しげに呟く。
その顔色は先程よりも更に青ざめている。
「テ……テール様……」
ふらつく姫をアランが支え様と動くが、当の彼も足元が覚束ない程に苦しそうだ。
2人は立っていられなくななったのか、ゆっくりとその場に崩れ落ちた。
そんな二人にフラムが駆け寄り額に手を当てる。
「たかしさん、二人とも凄く熱が」
ウィルス性ヒックス症の症状だろう。
いや、ゴーレムが起こしている以上は別物か。
ひょっとしたらこれまでにあったもの全て、ゴーレムによって引き起こされたものという可能性もあるが。
「僕達が平気なのは、覚醒のお陰かな?」
「多分な」
俺を含めて、何時もの面々には影響は出ていない。
これは間違いなく覚醒による強化の賜物だろう。
不幸中の幸いとはまさにこの事である。
もし俺達までやられていたら、完全にアウトだった。
ともかく、今は現状を打開する為に――
「厄災を倒すぞ」
「え!?厄災……ですか?」
「ああ、厄災だ」
だがその中に厄災の眷属というテキストがあった事を、俺ははっきりと目にしている。
つまり――
「厄災を倒せば、眷属であるゴーレム達も消滅するはずだ!」
確証はない。
ないが、ゴーレムを処理できない以上、その可能性に賭けるしかないだろう。
こうして王墓に続く、新たなる厄災との戦いの幕が切って落とされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます