第60話 残念なレディー

「はー、食った食った」

「御馳走様でした」

「ごちそうさまです!」


俺が食い終わるとタイミングで、フラムとリンも食事を終える。

3人とも息がぴったりだ。

と言いたいところだが、リンだけは実は俺達の倍平らげていたりする。


まあ育ち盛りだしな。

ん?あれ?そういやバンパイアって成長すんのかな?


そんな疑問からか、リンをまじまじと見てしまう。

リンははっきり言って美少女だ。

成長して大人になれば、間違いなく絶世の美女と呼ばれる部類に入ってくるだろう。


そう考えると将来が楽しみで仕方ない。

育てばの話ではあるが。


育たずにこのままだと、流石にちょっと残念だな……


別に今のままが悪いわけではないが、個人的には美少女よりも美女の方が好みだったりする。


「たかしさん?私の顔どうかしましたか?」

「え!いいいや、な……何でもないんだ!何でもない!」


不埒な事を考えていたせいか、急にリンに声をかけられ思わず声が裏返ってしまった。

そんな俺をリンは不思議そうな顔で眺めてくる。

どうやら俺が何を考えていたかはバレずに済んだようだ。


「あ!たかしさん!今リンちゃん、将来美人になりそうだとか思ってませんでした!?」

「そんなわけないだろ!!」


この女、何でこんな無駄に鋭いんだ?


「もぅ、鼻の下伸ばして。駄目ですよ、そういうイヤらしい目で見ちゃ。リンちゃんはまだまだ子供なんですから。でないと彩音さんに言いつけちゃいますよ!」

「いやらしい目でなんか見てねーよ!ただヴァンパイアって育つのかなって、思ってただけだ!あっ……」


言ってから気付く。


失言だ……


これならスケベ心を赤裸々に話した方がましだった。

リンには極力普通の娘として生きて貰おうと、その手の話は意図的に避けてきたってのに。


まあ戦闘になればリン自身嫌でも意識する事になるんだろうが、せめて普段だけでも普通でいてもらうための配慮していたのだが、大失態もいい所だ。


「あの!気にしないでください!わたし気にしてませんから!!」


子供に気を使わせるとか。

どうしようもねぇな、俺は……


「種族なんて関係ないよ。リンちゃんはリンちゃんだもんね」

「はい!!」


く、フラム。

ナイスフォローだ。


原因はてめーが余計な突っ込みを入れたせいだがな。

とは思いつつも、まあ一応感謝する。


「チーズケーキお持ちしましたー」

「わーおいしそう!」


丁度いい所で、給仕のニカが俺達のテーブルへとケーキを持ってきて、テーブルに並べてくれる。

朝のアップルパイでも思った事だが、とにかく量が多い。

3人でワンホールは最早2食目レベルだ。


「悪いな、毎回毎回俺達の為だけにケーキ作って貰って」

「いえ、気にしないでください。実はケーキ作りが趣味だったりするんですよ。だから仕事って名目でケーキ作れるんで、逆に有り難いぐらいですから」


むう、文句のつけようのない100点満点の返しだ。


ニカの返答が完璧すぎて思わず感心してしまう。

この子ほんとに14歳かと疑うレベルだ。


「このチーズケーキすっごくおいしいです!」

「ふふふ、有り難う御座います」


リンが口いっぱいにチーズケーキを頬張りながら、美味しい美味しいを連呼する。

その手元には、当たり前のように俺の分が引き寄せられていた。


うん、いやまあ良いんだよ。

俺お腹いっぱいでもう入らないから。


初めからリンに譲る積もりではあったが、流石に何も言わずに強奪するのは如何な物かと。

こう何というか、女性らしさというか、奥ゆかしさという物がリンの行動からは欠片も感じられなかった。

特に勤勉なニカと並べると、どうしても子供っぽく見えてしまう。


このまま成長すると、見た目だけの残念なレディーが出来上がりそうで怖いな。


天真爛漫と言えば聞こえはいいが、要はあほの子だ。

将来マーサさんの元に返す時、図体だけデカくて中身そのままなのは流石に憚られる。


何らかの方法で、ちゃんと教育してやった方が良いんだろうな……


今その事を相談できる相手はフラムだけなのだが、フラムに相談すると別の意味で偉い事になりそうだ。

とりあえず今度ティーエさんにでも相談してみるとしよう。


既に1つ目のケーキを平らげ、2つ目に必死にかぶりつくリンの姿を見て、出来るだけ可及に相談しようと心に誓う。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る