第58話 勝利!

「OKです」


その声を聴き、俺は胸を張ってカプセルからでる。

向かうは係員しゅくてきの元。

一歩、また一歩と奴に近づくにつれ、俺の鼓動が高鳴る。


恐れるな。

今の俺は以前とは違う。

そう心を奮い立たせ、前を向き着実に歩を進める。


その先にある俺の輝ける未来レベルを信じて。


目と鼻の先。

奴の元に辿り着く。

敗北を糧に、一回り大きくなった俺を前に奴は何を思うのか?


まるで悟りを開いたかの様な凪の心で、言葉を待つ。

するとそんな俺に恐れおののいたのか、奴が驚愕の表情で此方を見つめかえしてく来た。


その大きく見開かれた驚きの眼は、さながら浣腸を喰らった出目金の如く。


そして奴は口を開き紡ぐ。

俺の偉業を称えるその言葉レベルを。


「驚きましたレベル81です」

「いよっしゃあ!!!!!」


俺は天を突かんばかりの勢いで両拳を掲げ、体を軽く仰け反らせながら魂の慟哭を放つ。

そんな異様な熱気にあてられたのか、周りの人々モブの視線が集まるが、今の俺にはそれすらも心地よい。


「俺の!!!!勝ちだ!!!!」

「あの。あんまり騒がれると周りの方に迷惑なんで」

「あ、すいません」


係員に注意されてしまった。


全身を覆う熱気が急激に冷め。

係員から書類を受け取り、そそくさとその場を後にする。

その際フラムに声をかけられたが、外で待ってると返すのが俺には精一杯だった。


目を瞑れば、あの時の事が鮮明に脳裏に蘇る。


あの時何故私はあれ程興奮していたのか?

若さゆえの情熱の暴走か?

それとも神の悪戯か?


一体それが何だったのか、結局その答えは生涯得られることはなかった。



たかしの黙示録

2章23節 生き恥より抜粋

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