第49話 種

「御二人とも御無事ですか?」


ティーエ達が上空から舞い降り、こちらに安否確認の声をかけてきた。


「ああ、無事だ。しかしなんだその翼は……衣替えか?」

「これ、ティーエさんがかけてくれた飛行用の魔法なんですよ!かわいいでしょ!」


ティーエの魔法か……ティータはともかくとして、二人は確かに可愛いともいえるな。

特に純白のドレスを着こんだフラムが降りて来た時は、天使が舞い降りて来たのかと思った程だ。


今のフラムを見れば、きっとたかしも見惚れていただろうな……


本人は否定していたが、神様が言うぐらいだ。

間違いなくたかしはフラムに惚れているのだろう。


「たかしさんが見当たりませんが、彼はいったい?」

「ああ、たかしなら何処かに飛んで行ったぞ?」

「ふん!自分一人で逃げたのか!あの卑怯者め!」


言葉足らずだったためか、ティータに誤解を与えてしまったようだ。


「違います!たかしさんは逃げたんじゃありません!」


ティータの失礼な発言にリンが怒って反論する。

人に説明をしたりするのは苦手なんだが、まだ子供のリンに丸投げするのもあれだと思い私が説明する。


「まあ、あれだ。ヴラドにダメージを与える為帰還魔法テレポートをかけたんだよ」


ティータが何を言ってるんだこの女は?

という顔でこちらを見てくる。

うん、これは確実に伝わってないな。


「成程。帰還魔法テレポートでの移動を封印に反応させて、ヴラドにダメージを与えした訳ですね」


私の説明を理解してくれたのか、ティーエが分かり易く補足してくれる。

ナイスティーエ、それでこそ私の相棒だ。


「ああ、今頃どこかで気絶しているだろう」

「え?気絶してるんですか?」

「たかしが攻撃したとき、結構な衝撃が発生したからな」


そう言いながら、両腕を上げて火傷の跡を見せる。


「あ、ごめんなさい。私とした事が彩音さんの怪我に気づかないなんて。すぐに回復します」

「すまない、頼む」


ティーエが此方に駆け寄り回復魔法をかけてくれる。


回復魔法とは本当に便利なものだ。

見る見るうちに火傷の跡が治っていく。


とは言え、便利ではあるが毎回頼る破目になるのは流石に情けない。

いずれは回復に頼らずに済むぐらい強くなりたいものだ。


「でも彩音さんがそこまでダメージを受けるって事は、たかしさん大怪我してるんじゃ?」

「ひょっとしたら死んでるかもしれませんね」


ティータが不吉な事をさらりと言う。

彼は姉に寄る虫と判断しているのか、とにかくたかしには辛らつだ。

フラムが居るので、心配する必要はないんだがな。


「たかしさんは死んでなんかいません!私にはわかります!」


ティーエが叱りつけるよりも早く、ティータの不吉な言葉にリンが強く反発する。


「それは何故だ?」

「私……たかしさんと契約したから分かるんです。たかしさんは生きてるって。それは間違いありません!」


契約というのたかしのスキルか何かだろう。

その繋がりから、リンは確信している様だ。


まあそれを抜きにしても、ミノタウロスがそこにいるのであいつは無事だろう。

召喚主が消えたなら、召喚も消えるのが普通だからな。


「っと、そうそうこれを」


さっき拾った事を思い出し、ズボンのポケットから種を取り出した。


「これが落ちて来たんだが、何の種かわかるか?」


そう言ってフラムに種を投げる。


「あ、え!?これって……これって神樹の種ですよ!間違いありません!この種から神樹の息吹を感じます!」

「え!?本当ですか!?」


やはりそうか。

神樹を吹き飛ばした後に上から落ちて来たから、多分そうなんじゃないかと思ってはいた。


「これなら神樹は甦ります!!」


それはよかった。

正直神樹がどうなろうが個人的にはどうでもいい事だが、ハッピーエンドに越した事は無いからな。

これならたかしも囮にした事に文句は言わないだろう。


そういえば、もうずいぶんと長い事たかしを蹴り飛ばしていないな。

ぐだぐだ言う様なら久しぶりに蹴り飛ばすのもいいか。


楽しみだ。

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