第42話 一緒に戦います!
「くっ!」
全身に衝撃が走り弾き飛ばされる。
何とか転倒は免れたが、腕や胸が焼け付く様に痛んだ。
見てみると、痛みの部分から煙が上がりぶすぶすと焼け焦げているのが分かった。
ブラドに触れていた部分だな……
視線を上げると、ブラドが蹲りながらうめき声を上げている。
一瞬攻撃のチャンスかとも思ったが、その眼は真っすぐ此方をとらえていた。
目が死んでいない……慎重に動くべきだな。
攻めるべきかどうか判断するため
ドラゴン戦では
その経験から、今回は敵のHPをこまめにチェックする様にしている。
スキルを発動させると、ブラドのステータスや特徴が瞳に次々と映し出されていく。そして最後に本命のHPバーが表示された。
ブラドの残りHPは6割。
致命傷には程遠いか……
一瞬で生命力の4割も奪われれば相当な痛みだろう。
だが戦闘不能には程遠い。
恐らく、動きの方にもそれほど大きな支障は出ないはず。
つまり、未だ不利な状況のままという訳だ。
やはりあのオーラを何とかしなければ……
私の攻撃でダメージが通らないのは、まず間違いなく奴の体から放たれる黒いオーラのせいだ。
アレを何とかしなければ私に勝ち目はないだろう。
「彩音さん!今のうちに逃げましょう!!」
リンが叫ぶ。
リンから見れば、ブラドが痛みで動けない様に見えているのだろう。
だが、此方が逃げようとすれば素早く対応して来るのは目に見えている。
走って二人で逃げきるのは不可能だ。
ブラドの行動範囲がこの広い空間だけなら、逃げ切る事も不可能ではなかっただろう。
だが――
奴がどの程度の範囲で動けるのか正確には把握していないが、推測は出来る。
エルフは神樹に決して近寄らなかった。
そして奴の余裕の態度。
さらに神樹の枝を生活拠点にしているワイバーンが奴に操られていた事から、この神樹全体が奴のテリトリーである可能性は非常に高い。
まあ神樹全体はオーバーかもしれないが、ここに至るまでの長いスロープは敵の行動範囲と考えるべきだ。
たかしもそう思ったからこそ、先程私に触れて
私とたかしが逃げていれば、残されたリンがどうなっていた事か……
「無理だな。私一人ならそれも可能かもしれないが、お前を連れて逃げ出すのは不可能だ」
「わ……わたしの事は見捨ててくれて構いません!」
「たかしはお前の事を守ろうとしていた。そのお前を見捨てる様な真似は出来ん」
私はたかしの意思を優先させる。
黙って囮にした借りもあるからな。
ふふっと自嘲気味に笑う。
もちろん、たかしなら何とかするという信頼があればこその行動だが。
「お前は先に脱出しておけ。私はこいつを倒してから行く」
「そ……そんな事出来ません!だったら私も一緒に戦います!!」
想定していなかった返事を聞き、驚く。
戦う?
戦えるのか?
この娘は……
疑問が素直に顔に出てしまったのか、リンが答える。
「エルフの頃だったらとても戦えませんでした。でもヴァンパイアになって……以前とは比べ物にならない位強くなりました。それに、契約した時にたかしさんから凄く力が流れ込んできたんです。彩音さんみたいにはいかないけど、今なら少しは戦えると思うんです!」
どうやら彼女は本気のようだ。
それでも戦力としてはたいして期待できないので、個人的には下がっていて貰いたい所なのだが……
だが、本気で命を賭けて戦おうとする者に無粋な言葉をかけるのは自らの信条に反する。
「身の保証は出来ないぞ?人質に取られる様なら、お前ごと奴をぶちのめす」
「お願いします!!」
「やれやれ、無茶だけはするなよ」
「無茶します!!だってそうじゃないと、二人に顔向けできませんから!!」
ふぅ……リンを庇いながら戦う事になるな。
不利な状況で、誰かを庇いながら戦う。
リンを切り捨てる気が無い以上、負担は大きくなったといえるだろう。
だが何故だろうか。
一緒に戦うという言葉を聞いて、先程からわくわくしてしょうがない。
今まだって仲間と共に戦って来ていた。
しかしそれらは全て、自分が前に出て仲間が後方からサポートする。
そういう流れだった。
だが今回は違う。
誰かと肩を並べて戦う……か。
悪くない。
思わず綻びそうになる顔を引き締め、叫ぶ。
「ならば行くぞ!リン!!」
「はい!!!」
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