第41話 初めての共同作業
「彩音!
戦っている二人に聞こえる様、大声で告げる。
2人の動きを止める為だ。
素早く動き回られていたのでは、彩音に意図を伝える事が出来ない。
そして狙い通り2人の動きが止まる。
「やれやれ、無駄だと説明したはずだがね……」
馬鹿にしたようにブラドが呟いた。
その態度は完全にこちらを見下しきっている。
さっきリンを奪われた時驚いていた癖に……
だがまあそれでいい、警戒されるよりはよっぽどましだ。
「いけ!ミノタウロス!」
ミノタウロスが雄叫びを上げてブラドに突っ込んでいく。
ごつい図体だが、その速度は驚く程に速い。
「奴の動きを止めろ!!」
ブラドの肩越しに見える彩音の目を見ながら、今まで最も大きな声で叫ぶ。
俺は作戦を堂々と口にするほど馬鹿じゃない。
彩音だってそれぐらいは分かってくれるはずだ。
実際は真逆。
そんな俺の意図に気付いたのか、彩音が俺を見つめたまま小さく頷いた。
伝わった!
そう俺は確信する。
直後彩音が動き、ブラドの横を無理やり通り過ぎ様とした。
が、手首を掴まれ阻止される。
「本気で逃げられると思っているのかね?」
「ぶもおぉぉぉぉぉ!!」
その直後ミノタウロスが雄叫びを上げ、体当たり気味にブラドに突っ込んだ。
「無駄だ!」
体を捩じり、背後から突っ込んでくるミノタウロスを彩音を掴んでいるのとは反対の手でやすやすと奴は受け止めてしまう。
だがミノタウロスの攻撃を受け止める為、彩音からその視線が外れた。
いや視線どころの話ではない、ほぼ彩音に背中を向けている状態と言っていいだろう。
普通に考えればあり得ない。
彩音の攻撃など効かないという、まさにそれは傲慢からくる奢った行動だった。
彩音は、そんな奴のスキを突いて動く。
捕まれている左手で相手の手首をつかみ返し、それを捩じり上げて右手を相手の脇の下から突っ込み羽交い絞めにする。
いい判断だ。
ダメージを与える事は出来なくても、羽交い絞めにしてしまえば相手の動きを抑える事は出来る。
「捕まえたぞ」
「何のつもりだ。少し動きを封じた所で、あの様な牛の攻撃など私には効かんよ」
「だろうな」
言いつつ、俺は目の前のブラドの胸に掌をつけた。
拘束された事で奴の視線がミノタウロスから離れた瞬間、リプレイスで位置を入れ替えたのだ。
ここまで上手く行くと、逆に怖いぐらいだった。
油断万歳って所だろうか。
「な!?」
「ハーピィ!」
ハーピーには、俺が名を叫ぶと同時に
直後俺とブラドの足元に魔法陣が展開される。
一瞬、彩音にも触って一緒に
俺と彩音だけが逃げれば、リンは確実に捕らえられてしまうだろう。
逃げた後に効果範囲外でしたとか笑えないしな……
「貴様!何をするつもりだ!?」
何が起こっているのか理解できず、ブラドが焦った様に吠える。
「細かい事は気にするなよ、おっさん」
言い終わると同時に魔法陣が2人を包み込んだ。
その直後、体から重力が失われ視界が暗転する。
封印さん、ちゃんと仕事してくれよ。
次の瞬間、強い衝撃と痛みが全身に走り俺は気絶してしまう。
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