第34話 洞窟

「くそっ!追いつけねぇ!」


リンを連れ去ったワイバーンを追跡しているが、まるで距離が縮まない。

他のワイバーンに発見されない様に森すれすれを低空飛行している事と、俺がしがみ付いているせいでガーゴイルが思った様に飛べないためだ。


もっとも、追いついたところで俺がしがみ付いている状態のガーゴイルではワイバーンと戦うのは厳しいだろうが。


「目的地はやっぱり神樹か……」


前方を飛ぶワイバーンは明かに神樹へと向かって飛んでいる。

あまり想像したくはないが、餌としてリンを巣に持ち帰るつもりなのだろう。


神樹の幹を利用してガーゴイルを再召喚し、挟み撃ちにするべきか?


少し前から経験値が一切増えていない事から、先程の大群との戦闘はすでに終わっている事がわかる。

だがまた大群が再び押し寄せてきた場合、一匹では防ぎきれないだろう。

フラムに期待するという手もあるが、流石にそれは酷という物だ。


それに、下手に空中戦を仕掛けるとリンが落ちて地面に叩きつけられる恐れがある。

そう考えれば、ワイバーンが巣にリンを降ろしてから仕掛けた方が安全だ。

場合によっては2匹目を呼び出す事になるかもしれないが、それは最後の手段にする。


今懸念があるとすれば、巣についたとたんワイバーンがリンをがぶりとやってしまわないかという点だけだった。

ひ弱なリンでは、ワイバーンに齧りつかれては一溜りも無いだろう。

こればっかりは天に祈るしかない。


「ん?」


ワイバーンが神樹の目の前まで迫まる。

すると奴は急に高度を落とし、神樹の根元辺りへと降りてしまった。

てっきり枝にとまると思っていたのだが、予想外の行動だ。


着地したワイバーンは翼を畳み、そのまま走って神樹の根元へと消えていく。

俺も急いで後を追い、神樹の根元にガーゴイルを降ろす。


「これは……」


上からでは見えなかったが、眼前には洞窟がぽっかりと口を広げていた。


こんな所に洞窟?

そういえば、神樹の下にはヴァンパイアが封じられたダンジョンがあったよな?

ワイバーンはそんな所を巣にしてるのか?


そもそも本当に巣なのだろうかと疑念が湧き、嫌な予感が沸き上がって来る。


いや、今は余計な事を考えている場合じゃない。

とにかくリンを追いかけないと。



状況的に、悠長に足踏みしている余裕などない。

俺はガーゴイルを戻し、代わりにサーベルタイガーを召喚する。


洞窟はそこそこの広さはあるが、飛んで進める程ではないからだ。

確実に此方の方が早いだろう。


俺は素早くサーベルタイガーの背に乗り、中へと突入する。


バンパイアが封印されているという洞窟へ。

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