第27話 エルフの森
暑い。
どうしようもなく暑い。
まるで蒸し風呂だ。
ここはエルフの森。
昼なお暗く、鬱蒼と茂る木々の中、俺たち三人はリンが暮らしていたエルフの里へと向かっていた。
しかしこのエルフの森がとんでもなく暑かった。
日の光があまり差し込んで来ないというのに、森の外よりも明かに気温が高い。
おまけに湿度も高いため、不快な事この上なしだ。
いったいどうなってるんだ、この森の中は……
これほどの暑さにもかかわらず、前を行く二人は涼しい顔でずんずんと歩いていく。
どうやらエルフは暑さや湿気に強いようだ。
それも相当。
何せフラムさんはウェディングドレス姿にもかかわらず、汗一つかいていない程だ。
まあエルフは長くこの森で生活してるわけだし、暑さに弱くちゃ話にならんか。
森に入ってからまだ2時間しかたっていないが、俺はそうそにへばってきた。
暑さに加え、慣れない森での行軍は俺の貧弱な肉体には堪える。
前を行く二人に休憩を打診したい所ではるが……。
男の俺が真っ先に、辛いから休憩しませんかとはかっこ悪くて言い出せない。
何とか休憩に持ち込む良い案はないかと思案していると、ふいに視線の様な物を感じた。
何だ?
誰かに見られてる?
魔物か?
立ち止まり辺りを見渡すが、特に何かがいる様子もない。
勘違いか?
フローティングアイで確認しようかと迷っていると、フラムさんがこちらに気づいたのか近づいて声をかけて来た。
「たかしさん、どうかしました?って、凄い汗じゃないですか!?」
「え?ああ、この森って暑いよな」
「ごめんなさい、私全然気づかなくって。今
魔法をかけて貰うと一気に体感温度が下がり、楽になる。
「ふぅ。ありがとう、助かったよ」
「ごめんなさい。エルフの森に人が来る事って滅多にないから、完全に失念してました」
「しかし異常な暑さだな、この森は」
「私もよくは知らないんですが、神樹の力で森は常に一定の環境に保たれている見たいなんです」
「神樹?」
「森の中央にある神聖な力を持った大きな木で、この森を守ってるって言われています」
神樹か。
ゲームとかだと、下にダンジョンとかが広がってたりするんだよなぁ。
「ダンジョンがあって、そこには強力な魔物が封印されてたりして」
冗談めかしに言ってみる。
「え!?何で知ってるんですか?」
あんのかよ!
さすが異世界!
「神樹には、強力な力を持つヴァンパイアが勇者様の手で封印されてるんですよ!!」
リンが嬉しそうに説明してくる。
勇者が着ていたというつなぎを着ている事と良い。
どうやらリンは、かつてエルフ達を救った勇者に強く憧れているようだ。
しっかし、つなぎを着てる勇者ってどうよ?
つなぎ姿のラフなイメージを想像し、俺は渋い顔をする。
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