第23話 いざ!エルフの森へ!
「サーベルタイガーって凄いですね!」
リンが大きな声で叫ぶ。
「ほんと、足が速くて例え魔物と出くわしても簡単に振り切れちゃいます!」
それにフラムが大きな声で答えた。
俺達3人はカルディメ山脈を横断し、エルフの森へと向かっている最中だった。
森はルグラント王国の西に位置し、山脈を超えた向こう側に大きく広がっている。
移動手段は俺の召喚したサーベルタイガー2匹。
草原を力強くかけるその速度は馬などより遥かに速く、このまま順調にいけば明日には目的地へと到着する事だろう。
サーベルタイガー。
機動力と戦闘力に優れたモンスターであり、こうやって乗り物として活用する事も出来る便利な奴だ。
これ以外にも、ミノタウロスやガーゴイルと言った強力な召喚を俺は習得している。
これらは一重にドラゴン討伐の恩恵だった。
大量の経験値を入手できたお陰で、俺のレベルは40まで上がっている。
正に彩音様様と言っていいだろう。
「……」
サーベルタイガーは既に山脈の麓に差し掛かっている。
ここに来るのは2度目だ。
あれからまだ3週間しか経っていないのだが、凄く以前の様に感じてしまう。
初めてカルディメ山脈に来た時の事を思い出す。
あの時は馬ではなく、彩音が馬車を引いてここまで来ている。
そんな真似をしたのは、ドラゴン討伐の際のイレギュラーを想定しての事だった。
もし
だから馬はミケと一緒にコールスの宿屋に預け、彩音がその代わりを務めたという訳だ。
しかし……あれは酷かったな。
彩音が力任せに豪快に引くもんだから、馬車が死ぬほど揺れ揺れて。
お陰で俺は気持ち悪くなって、途中何度も吐くはめに。
車酔いや船酔い等、乗り物酔いは数あれど、まさか彩音酔いを体験する事になろうとは夢にも思わなかった事だ。
何故そんな事を思い出したかというと、山脈の斜面に差し掛かった事で。サーベルタイガーも乗り心地が一気に悪くなったからだ。
まあそれでも彩音車よりはましではあるが。
「ここらでいったん休憩しましょうか。サーベルタイガーちゃん達も疲れてるみたいですから」
サーベルタイガーは軽やかな足取りで、山脈の斜面をぐんぐんと駆け上っていく。
山頂付近でフラムが振り返り、必死にしがみ付く俺に休憩を提案して来た。
「あ、ああ……そうだな」
俺の乗っているサーベルタイガーの手綱はフラムが握っており、俺はその背中にしがみつく形で乗っている。
男のお前が後ろかよ。と、思われるかもしれないが。
身体能力に関しては全ての面においてフラムが勝る為、これはこれで合理的な形なのだ。
というか、手綱の扱いとかわかんないし俺じゃ無理。
因みにリンは一人でサーベルタイガーを乗りこなしている。
男としての面子丸潰れな訳だが、まあ出来ないものは出来ないのだからしょうがない。
フラムがジェスチャーで、器用にリンに向かって休憩の指示をだす。
開けた場所でサーベルタイガーが足を止め、それぞれ思い思いに身を投げ出して休憩を取る。
まあ身を投げ出してるのは俺だけだが。
あー、しんど。
「この山脈を越えるのは3度目ですけど、いつ来てもいい景色ですねぇ」
リンとフラムはぴんぴんしている。
二人の細い体のどこにそんなパワーがあるのか不思議だ。
「はぁー」
俺は大きく深呼吸して大地に横たわり、空を眺める。
埃が付いてしまうがお構いなしだ。
フラムが休憩を言い出してくれて助かった……結構限界だったからな。
まあグロッキー気味だった俺に気を利かしてくれたのだろう。
サーベルタイガーの体力は再召喚すればいいだけなので、休憩を取る必要はないからな。
しかし、ほんときつかったぜ。
体力的な物もそうだが、とにかく匂いがきつかった。
フラムからはすごく良い匂いがし、そしてサーベルタイガーからは強い獣臭が漂う。
混ぜるな危険――この二つの臭いが混ざると、とても不快な臭いへと変わってしまう。
平地であるならば口で呼吸すればある程度緩和できた。
だが山道で激しく揺れるサーベルタイガーの上で口を開けるのは危険極まりない。
その為、この山脈横断において俺は強い我慢を強いられていたという訳だ。
「ふーーーーーー」
深い深呼吸をし、目を細めて青空を眺め続ける。
……ん?鳥か。
ふと、空に鳥がいる事に気づく。
俺はその優美な姿を、なんと無しに目で追う。
すると、その姿がどんどんと大きくなって来る。
んん?
鳥にしては随分と大きい。
そんな事を考えている最中も、その姿は更に大きくなっていく。
いやいやいや!明らかに大きすぎだろ!?
明らかに異常事態だ。
俺は飛び起きて上空を凝視する。
異変に気付いたのか二人もたかしに続き空を見る。
「あれは!まさかガルーダ!」
そうフラムが叫んだ。
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