第21話 運命?
「ふむ……」
話を聞くとカンパではなかった。
どうやら鋭い嗅覚で俺の財布の中の大金を嗅ぎつけた訳ではなかった様だ。
リンと名乗る少女が言うには、増えすぎたワイバーンのせいでエルフの里の多くが大きな被害を被っているらしい。
そのため彼女は救援を求め、単身ルグラント王国へとやってきた。
という訳だ。
必死で故郷のために救援を求めてきた少女を、詐欺と勘違いした自分が恥ずかしい。
でもいきなり美少女が声をかけてきて、森を救ってくださいとか言ったら普通疑うよなぁ。
そうそれこそが普通の反応!
だから俺は悪くない!
聞かれてもいないのに、自分を納得させるための言い訳を心の中で唱える。
心の逃げ道って大事。
「事情は分かったけど、俺に助けを求められても……」
「里の被害は本当に大きくて。私達エルフだけでは手の打ちようがないんです!魔術師様!どうか力をお貸しください!お願いします!」
魔術師?
なんでそんなもんと勘違いしてるんだ?
魔法自体は確かに使える。
だがそれは召喚士としての魔法であって、魔術師のそれとは全く別物だ。
「いや、俺魔術師じゃないんだが」
「え?でも先程
「あー」
どうやら召喚士である俺の
この二つ、スキル名自体は同じだが効果はまるで違う。
魔術師のそれは自由に色んな所に移動できるらしいが、俺の方は加護を受けている街や村などの定点にしか移動できない。
魔術師の行使するものより優れている点を挙げるとすれば、飛べる場所であれば距離がほぼ無制限な所ぐらいだろう。
魔術師の方は、距離で消耗する魔力が違うらしい。
「俺は召喚士だから、魔術師の使う
「そう……なんですか……」
説明すると、少女がしょんぼりと肩を落とす。
落ち込む姿もかわいいなぁ……お近づきになりたい。
我ながら不謹慎な話ではあるが、可能であればとか思ってしまう。
俺に任せろ!と言えればどれほど幸せか。
だがいかんせん力が足りない。
ワイバーンはドラゴンの近親種だ。
その強さはドラゴンに比べれば鼻くその様な物だが、それでも俺にとっては強敵になる。
そんなワイバーンの大群に立ち向かうなど、俺には無理だ。
まあ彩音達に相談する手もあるが、きっとティーエさんが渋るだろう。
彼女は2週間後、教会から
当然拝命式には俺達も参加する様頼まれている。
なにせ
もしリンの為に彩音とエルフの森に行くとなれば、彼女の顔に泥を塗る事になってしまう。
共に戦った戦友に対しそんな不義理な真似はしたくない。
何より、腹黒で金と権力を持ってるティーエさんを敵に回しかねない行動は避けたかった。
彼女には可哀そうだが、国か教会辺りに正式に依頼して貰うしかないだろう。
「この村にはフラムさんを頼ってきたんです。でも、もうこの村から出て行った後みたいで、私どうしたらいいのか……」
「え?君フラムの知り合いなのか?」
「フラムさんを御存じなんですか!?」
なんたる奇縁。
たまたま宿をとるためにきた村でフラムを頼る美少女と出くわすとは、なんだか運命を感じてドキドキしてきた。
まあ手伝わないけど。
取り合えず、フラムの所に案内するとしよう。
それぐらいなら罰は当たらないだろう。
仮にフラムがそれでエルフの森に向かったとしても、俺がティーエさんに恨まれる事はないだろうしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます