第20話 カンパ詐欺?
「くっそ彩音のやつ、人の首筋に手刀なんか叩き込みやがって」
首の裏辺りを押さえながら呻く。
まあ彩音のお陰で失言をうやむやに出来たのは有難いんだが、もうちょい加減して欲しい物だ。
気が付いてからもう2時間もたつが、未だに首が痛む。
結局意識が戻った時にはカーターさんは出かけいたので、お金だけ受け取って別邸からはさっさとおさらばさせて貰った。
ティーエさんから王都滞在中は別邸に泊まっていくよう勧められたんだが、それは丁重にお断りしておいた。
あんな居心地悪そうな場所で寝泊まりするのはまっぴらごめんだ。
「しかしまいったなぁ」
自らの失態を痛感しつつ呟く。
初めてきた街を適当にぶらついていたせいか、道に迷ってしまったのだ。
しかも、もう日が傾いてきている。
正直今から宿屋を探して見つけるのは絶望的だ。
アルバート邸の方角は分かっているから、最悪戻って泊めてもらうという手もあるが、断っておいてやっぱり泊めて下さいではかっこ悪過ぎる。
できれば避けたいところだ。
どうしたものかと思案すると、ふと名案が浮かんできた。
そうだよ!
別にこの街で寝泊まりする必要ないよな!
別の町の宿に行けばいい!
行き来は
そういやコールスの村の宿の飯美味かったなぁ。
宿は少しぼろかったけど、まああそこでいいか。
ハーピーを呼び出し
足元に自分を中心とした光輝く魔法陣が描かれ、俺を包み込む。
直後視界が暗転し、体は浮遊感に包まれる。
だがそれは一瞬だけの事だ。
地面に足がつく感覚、重力による肉体の重みを感じ視界が戻った時、転移は終了していた。
目の前にはコールスの村の中央にあった噴水がある。
「よし。転移成功」
失敗するなど微塵も考えた事はないが、何故か毎回口走ってしまう。
不思議な物だ。
さて、宿屋に行くとするか。
「あ、あの!今のって
「ん?」
突然の声に振り返ると、少女が驚いたような表情でこちらを見ていた。
年の頃は14~5と言ったとこだろうか。
耳が長くとんがっている事からエルフである事が窺える。
……可愛いな。
金のショートカットに、吸い込まれそうなほど深い緑色の瞳。
顔立ちは整っており、綺麗と可愛いが調和し引き立てあう奇跡レベルの顔立ちだった。
俺的美少女ランキングで、ティーエさんに続く堂々の2位と言っていいだろう。
「あの!私、リンっていいます!」
少女が大声で自分の名を告げる。
そして――
「どうかエルフの森を助けてください!」
いきなり訳の分からな事を口にする。
エルフの森がどうこう以前に、初対面の俺に助けてとか意味不明なんだが?
その時、俺はピーンと来る。
少女の目的に。
あ!分かったぞ!
森を守るための活動資金をカンパしろって事か!!
カンパ詐欺。
まさか異世界に来てまでそんなものに出くわす事になろうとは、夢にも思わなかった。
しかもこんな可愛い子がそんな物の片棒を担いでいようとは……やっぱ外は怖い事でいっぱいだな。
しかしこのエルフの娘、なんでつなぎなんか着てるんだ?
つなぎがルグラントでカンパを求める時の基本スタイルなんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます