第19話 口は災いの元

「おお!皆さん良く来てくださった!」


豪奢な大広間の中央。

立派な金の髭を蓄えた大男が、体に負けない大きな声で俺達を出迎えてくれる。


彼の名はカーター・アルベルト。

ティーエさんとティータの兄にあたる人物だ。


「カーターお兄様、お久しぶりですわ」

「お久しぶりです兄上。相変わらず御元気そうで何よりです」

「おお!ティーエにティータ、良く来てくれたな!お前たちの顔が見れて兄は嬉しいぞ!」


カーターさんは感激しているかの様に、2人を強く抱きしめた。


ぶっちゃけ、暑苦しそうで正直苦手なタイプだ。


ここは王都カルディオンにあるアルバート家の別邸。

報酬を受け取りに来たわけだが、別邸とは思えない程の豪華絢爛さについ気圧されてしまう。


しっかし、いつまで抱き合ってるんだこの兄妹は……もう5分近く経っているんだぞ?


兄妹はずっと抱き合ったままだった。


久しぶりに会えてうれしいのは分かるよ。

だが待たされる身としては、得るものが何もないのでさっさと終わって欲しいんだけども。

それでなくとも建物が豪奢すぎて場違い感が凄く、居心地が悪い訳だし。

ほんとさっさ終わらせて欲しいんだが。


「カーター様、余りお客様をお待たせするのは……」


後ろに控えていた初老の執事が、兄弟に声をかける。

ナイスだ爺さん。


「おお、そうっだった!お待たせして申し訳ない。久しぶりの再会でつい感激してしまって」

「いえ、お気になさらないでください。感動の再会をお邪魔するほど、私達も野暮ではありませんから」


フラムが丁寧に対応するのを見て感心する。

見た目以外は本当に完璧だな、この人。


「そう言って貰えるとありがたい。そういえば自己紹介がまだでしたな。私はカーター・アルバート。アルバート家の次男で、この別邸を預かる身です。どうぞ気軽にカーターと呼んでください」

「初めましてフラム・リーアと申します。私の事も気軽にフラムとお呼びください」

「おお!貴方がフラムさんですか、大変優秀なドルイドだと妹達から伺っていますよ」

「いえ、そんな。私なんてまだまだです」

「ははは、謙虚な御方だ。」


だる。

こういう寒いやり取りは苦手なんだよなぁ……


二人の和やかなやり取りを横目に、はよ金よこせと言いたくなる。

言ったら言ったで面白そうではあるのだが、後々生じるであろうデメリットを考えると、流石に実行する気にはなれない。


フラムとのやり取りがまだ続きそうなので、暇つぶしに後ろに控えているメイドさん達を眺めてみた。

どの娘も美人だ。


これは絶対顔で選んでるな。

そう考えると、途端にカーターの顔がスケベ顔に見えてきた。


そんなどうでもいい事を考えながら時間を潰していると、カーターに声をかけられる。

どうやらやっとこっちの番が周ってきた様だ。


「たかし君と彩音・彩堂さんだね。」

「初めまして」

「はよ金くれ」


言う気はなかったはずなのに、突然声を掛けられてついつい本音が出てしまった。

だって何もかもが無駄に長いんだもん。

しょうがないよね?


「――ぐえっ!」


瞬間、俺の首筋に強い衝撃が走る。

何が起こったのか分からないまま、俺の意識は途切れた。

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