第127話 狩人と虫

 大きな両手剣を片手で振り回す。

 2m近くありそうな、大柄な毛むくじゃらの亜人。

 4人のまだ若い男女が、2体の亜人と戦っていた。

 軽装の少年が、亜人の正面に立つ。

 鉄の脛当てと鉄の手甲を着け、革の胸当てだけという軽装だった。

 武器も持たず立つ少年に、亜人が大きく振りかぶる。

 体重を乗せ、力任せに大剣を振り下ろす。


 少年は臆せず踏み込んだ。

 脇を締め、絞り込むように左腕を引き込み、右腕を突き出す。

 振り下ろされる剣の内側へ踏み込んだ、少年の拳が亜人の顎を捉える。

 力任せに振り下ろし、下がった顎をカウンターの拳が突き上げる。

 少年と共に戦っていた、軽装の剣士が素早く前に出る。

 崩れる様に膝をつく亜人の、首筋を刎ね切った。

 急所を斬られた亜人が倒れると、2人はもう1体を抑える仲間に駆け寄る。

 大きな楯を構えた重装の戦士が、亜人の攻撃を受け止め、抑え込んでいた。

 頭一つ低いが、亜人に負けない程の巨体だった。

 その周りを身軽に動き回る少女は槍を持っていた。

 重戦士の陰から、鋭い槍の突きを繰り出す。

 細かい攻撃だが、流れる血は確実に亜人を弱らせていく。


 少年と剣士が合流し、4人で亜人を倒す。

 連携のとれた、危なげない戦い方だった。

「今回の依頼は、これで終了かな」

 巨漢の戦士アンドレが振り返り、皆の無事を確認する。

「まぁ、この程度じゃ幾らにもならないがな」

 剣を拭いながら、剣士のモーリスが、金にならないとぼやく。

「またロシュの病気が出たんだから、仕方ないじゃない」

 槍を持った少女イザベルが、ため息混じりに諦めろと言う。

「これで村の人達が、安心して暮らせるならいいじゃないか」

 小さな村の為、金にならない仕事を引き受けた少年はロシュ。

 Aランクの狩人ハンター4人組のリーダーだった。

 甘ったるい性格で、困っている人を放っておけない少年だった。


 そんな彼等を丘の上から見下ろす2人。

「暇だなぁ……」

「早く、どっか行ってくれるといいね」

 隣に座るリトが、のんびり声を掛ける。

 サトーと名乗る侍を確認に来た男は、丘でのんびりしていた。

 どこかのお偉いさんが来ているとかで、街に入れなかったのだ。

 少し離れた村に宿をとり、使節団が立ち去るのを待つ事にした。

「宿はあったが、食事はないからな。狩りでもするかぁ……」

「おにくぅー! うさぎがいるよ?」

 ウサギ肉が好きなのだろうか。

 狩りと聞いた兎の獣人リトが、急に張り切りだした。


 旧共和国首都だった街。

 ロシュ達はそこを拠点として、賞金のかかった魔物を狩っていた。

 一旦街へ戻る事にした一行。

 小さな川沿いを歩いていると、イザベルが噂を思い出したと口にする。

「そういえば、この川の近くで最近、魔物が出るらしいよ」

「被害が出ているのかな?」

 ロシュが心配そうな顔で気にする。

「おっきぃ虫型の魔物で、旅人なんかが襲われてるんだって」

 心配するロシュの顔は可愛いなぁ、などと考えながらイザベルが答える。

「虫かぁ。面倒なのが多いよな」

 大きな体のアンドレが嫌な顔をする。

 虫の魔物は面倒なのが多い。見た目も気持ち悪い。

「アンドレは虫嫌いだもんね。まだ手配はされてないけど」

「賞金が懸かってないなら、はなしにならないな。相手にしていられねぇよ」

 剣士のモーリスは、金にならないなら興味はない、と切り捨てた。

「困っている人がいるなら、放っておけないよ」

 ロシュの言葉に、仲間が苦笑いする。

 困っている人を助けるのが、彼の病的な趣味であった。


 そんな彼の願いが叶ったのか、突如地中から大きな黒いものが飛び出した。

 硬そうな鎧の様な甲羅を背負い、無数の足をワサワサさせた虫が立ち上がる。

 後ろ足で立ち上がった、ダンゴムシかワラジムシのような黒い虫だ。

 ただ、その大きさは尋常なものではなかった。

 10mはありそうな虫が、足をワサワサさせて寄って来る。

 3~4階建てのビルくらいの、気持ち悪い虫が、凄まじい速さで迫って来る。

 虫が苦手なアンドレは、ぞわっと全身にトリハダが立つ。

「おいおいおい。アレは受け止められないぞ」

 攻撃を受け止めるのが役割ではあったが、アンドレが泣きそうな声を出す。

 剣士のモーリスが素早く駆け寄り、足に斬りつける。

 その剣は弾かれ、傷もつけられない。

「ちっ、鉄の鎧以上だな。こりゃあ無理だ」

 ロシュも殴りかかるが、打撃も効果があるようには見えない。

 虫の方が走るのも速く、逃げられそうにない。

 絶望が狩人達にし掛かる。

「まだだ! 諦めたら、また誰かが傷つく。此処で止めるんだ!」

 ロシュだけが怯まず、虫に殴りかかっていく。

 しかし、気合でどうにかなるものでもない。


 翼を広げたアホウドリが3.5m程あるそうです。

 怪獣な大きさだと思いますが、古代にはさらに巨大な生物が実在しました。

 ペラゴルニスは翼幅7mあったそうです。

 クロコダイルが飛んで来るようなものですね。

 史上最大の蛇ティタノボアは体長15m体高1mあったそうです。

 5階建てのビルくらいですね。もう漫画です。

 ギガノトサウルスやティラノサウルスは14mあったらしいです。

 噂では40mの恐竜も居たとか、まだ骨が揃っていないので確定していませんが。

 現代にいなくて助かりました。

 古代には巨大な生物が溢れていました。

 史上最大の動物は26m以上あり、30m近くになることもあるそうです。

 そんな最大の動物がシロナガスクジラです。

 恐竜よりデカイ哺乳類が現代にいました。

 ファンタジーならば10mやそこら、どうって事ありませんよね?

 伝承には、単位がKmの魔物もいますから。

 10mのクジラを、銛で仕留める人もいますから。

 8mのワニを槍で仕留める人もいますから。

 どうにかなるのかもしれません。

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