第11話 舞香の事情


五十嵐拓成29歳

背が高くてイケメンで

銀縁メガネのの奥に隠れた切れ長の

涼しい目


ニッコリ笑うシャイな一面。

ギャップがたまらない。

スッとした立ち姿は

どこぞの令嬢方も一目見ればポーッ

となる。



そんな拓成もお年頃

見合いの話が押し寄せる。

仕事を理由に見合いを断り続けるが

限界が来ていた。


二、三人と見合いをする。

拓成は、断られるように仕向け

何人かは引き下がった。


ギャンブルが趣味だの、

夜遊びが好きだの..

女遊びは飛び切り大スキ‼

そんな話を見合い席でする。


遂に親父がキレた。


「お前‼取り引きに問題が起きる

だろ!」



「だったら見合い持ってくるな‼

自分の嫁は、自分で、探すから‼」


「勝手にしろ‼」


親父は何とか説き伏せた。

業務成績も鰻登りだ、文句は言わせない。


来年舞香の卒業を待って結婚する。

何人かの友人には、話してある、

だから変な見合い話が出たら断る

ように根回ししている。


何日かたった頃、祖父の康成の友人

が娘を連れて乗り込んで来ていた。


祖父の康成は、温厚な性格で、仕事では頼りにされ辞めたくても辞められず82歳になった今も会長として君臨している。


白髪の髪は七三でまとめ昔は高かった身長も大分ちぢんでいる。

顔は拓成によく似ていて昔は

モテたようだ。



「おう‼山本どーした。

この間会ったばかりじゃないか?

さては、温泉の誘いか?」


泰成の同級生が尋ねて来るのは

暇な会長職の康成には

持ってこいの暇つぶし。

息子も孫もしっかりしてるし

社員も中々の凄腕揃い、余程の

事が無い限り康成は暇‼

頼りにされてはいるものの

「いて下さるだけで

心強いです。」


そう言われ会社へ出向く

有難いことだ。



「いやいや今日は、話があってな‼」

康成と同じ背丈の同級生である山本は色黒く如何にも建設会社の社長という感じだ。


「こんにちは。おじ様、杏です。」


「おお、可愛らしいお嬢さん

じゃないか‼

今日は何事だ。」


「いや〜娘が拓成君を雑誌で見てな‼

偉い気に入ってな‼

どうだろう。」


「お父様。恥ずかしい。」


「 あぁ‼拓成も、もうすぐ帰る頃か?こういう事は、本人同士で話したが早い。」


ニッコリ笑う康成に焦れったさを感じた山本は、

「そうだ杏、会社をみせて

もらいなさい。

康成は、色々やっているから

勉強になるぞ‼。」


父、山本巧の言い出しに杏は、

目を輝かせ

「うわあ、嬉しい。

嫁ぎ先の会社見学なんて、嬉しい。」


「ああ、なら秘書に案内させよう。

嫁ぎ先とは又ハハハハ 気が早い‼

拓成がなんと言うかな?」


康成は、拓成に会った事も無い

杏がもう結婚を視野に入れている

事に多少呆れてしまった。


今まで手に入らなかったモノは

無いのだろう。


「大丈夫だよ康成。

お前が勧めてくれたら、

長年の友だろ‼

お前と親戚なんて、なぁハハハ

それに杏も親の目から見ても


いい女だと思うぞ。

拓成君も気にいるさ‼」

ハハハハ

杏は秘書を従えて会長室をでた。





「貴方名前は?」

杏より遥かに年上の秘書に

偉そうな態度でものを言う。



「村田です。」

眼鏡をかけ髪を結い上げ黒のスーツを着こなした彼女は、30半ばのベテラン秘書だった。


秘書は、年上に向かって口の聞き方も知らんのか!と心で怒った。



「お前がよこれんぼした彼女は、

元気か?」

康成は、からかいながら山本に

聞いた。


「よせよ。随分昔のはなしだろ、」

首の後ろを書きながら昔の話だと

山本は笑う。


「お前も随分酷いやつだと

仲間と話したもんだ。」


「若かったんだよ。」


「嘘つけ‼60だったろう。

善し悪しの区別はつく歳だぞ。

勿論養育費は、払ったんだろうな‼」



「勿論そのつもりだったが

父親も再婚したようで


祖父母に養育費の申し出をしたら

いらないと投げ返されたよ。ハハハ」


「何笑ってんだよ。

俺は小さな子がいると聞いて

拓成連れて見にいったんだ


可哀想に玄関に一人座ってたよ。

きっと母親をまつてたんだろう

よ。」


「まあ..な、それはそうかもしれん。

小さかったと聞いていたからな‼」



「あれから何回かあの家の前を通った、木の影で泣いていたり

家の入り口で泣いていたり

拓成も気にしていた。」



「お前はホントに酷い奴だと思ったゾ

‼みんな言ってたぞ.・・・

お前の結婚相手見て、年が離れ

すぎてて、

娘かっ‼ってな。」



「アハハハそうか?」


「気にならんのか

家庭を壊して‼」



「・・・もうやめよう。

掘り返しても何にもならない。」


「もう、あんな事はやめろよ。」



「今更だろう。

昔の話だ、そんな元気無い‼」

山本はバツが悪そうに苦笑いを

した。


「あ‼お茶をたのむよ。

こいつにはコーヒーをブラックで

わたしは日本茶で。」

康成は秘書が、話の腰をおらぬ様

気を使っているのを感じて

お茶を頼んだ。


秘書は、慎重な顔をして

「わかりました。

お持ち致します。」

と言いながら出て行った。


ドタバタと足音がひびき息子の

直臣(たっおみ)が、駆けこんできた。


康成に耳打ちすると


康成は、ハッとした顔をして山本巧を見て 言った。


「山ちゃん悪いがこの話は

無かった事にしてくれ

拓成には、彼女がいるようだ。」


「えー‼そりゃないだろう。

娘は、スッカリその気なんだ‼

金でどうにかならんか?」



「いやいや山ちゃん

孫の人生まで介入したくはない‼

悪いが諦めてくれ。」





「ねえ、拓成さんはまだなの!

何時頃来るのぉ!

ねえ、電話してよ。

秘書だったら働きなさいよ‼」


「はい、先程お電話しました。

もう直ぐお着きです。」


するとエレベーターが止まり拓成がおりてきた。


エレベーターの前の自販機前で杏が

見たものは背が高くて理知的で

すっすと杏の元へと歩み寄る今まで

に会った事の無いタイプ


冷たそうに見えて近寄りがたく

それでいてそそられる。いい男‼


20歳の杏は、直ぐに飛びついた。

「ツ キャーーーッ♡

たくなりぃ~さ~あぁあ~ん♡」



「ええ、君?誰、?誰?

村田この子誰?」


急に馴れ馴れしく飛びついた杏を見て

拓成は、ぎょっとした。


「会長のご友人の山本様の

お嬢様です。

お名前は..えっと」


「杏です。」


「ああ、ジーちゃんの友達の..」


「杏って呼んでください。」

すっかり旦那様になると杏は思い込み

自分の男な、態度を取る。


「山本さんの孫?」

拓成はビックリして杏を見る。


「いえ‼娘です。歳いってからの

結婚なんで。」


「そう、なんだね。へー」

拓成は村田を見るが

村田は呆れながら業務に戻りますと

言って去っていった。


♪♬♩♬(♩♪♬♩♪♪♪

携帯がなると

「はい、はい、一緒ですよ。

分かりました。

行きます。

大丈夫ですよ。」

電話を切ると



「ジーちゃんが君と来いって

なんだろうな。

君は大丈夫?

時間ある?」



そう杏に尋ねると杏はにっこり笑い

腕を組んできた。

下から見上げてくる目が舞香を

思いださせ、上手くひっぺがせない。


まあいいかぁと思い社内を歩く。

社員が目を丸くして驚いている。


会長室の前に行くと、杏は自分から

ドアをあけ、


「お父様。彼氏ゲットしましたー。」


と、あからさまに叫んだ。



「おい、おい、拓成。

結婚の話なんだが。」


「あー、もう耳に入りましたか?

噂って早いな〜。

何処からもれたのかな?」


「ほら見ろ!康成

心配要らんと言ったろうが。」

山本は超ご機嫌に康成を見て

肩をポンポンと叩いた。


杏と拓成は、見つめ合いながら

なぜか頭を掻く拓成を見て

康成は不審な気持ち

になり


「いいのか‼ こんな早く決めて

考えてからで良いんだぞ‼」

と念を押した。


「その話ならまた後でゆっくり

僕は彼女を気に入っています。

彼女がいいんですよ。

人を待たせてるので会議に行きます。

時間なんで。」


拓成は、腕に填めたロレッ〇〇の

時計を見ながら出ていった。


「拓成さん、またね。」


「ああ、またな‼」

そんなふたりのやり取りを山本は、

嬉しく聞いていた。


「改めて家族で会おう。

こちらから連絡するから笑、」

山本と杏は、機嫌よく帰っていった。



舞香は、結婚式場のスタッフに

逆もどりしていた。社長命令で又

ここに引き戻された。


ザワザワと、後片付けが始まる。


「ねえねえ舞香聞いた?」


「何を?」


「社長、結婚するらしいわよ。」

同僚のミキが消毒液をシュシュッと

テーブルに吹き掛けながら

言った。


.。oO 「えぇー

言わない約束なのに...」

舞香は拓成のおしゃべりめ、と半ば

嬉しそうに呟いた。


「舞香しってたの?

御相手、山本建設の 令嬢だってよ。」

ミキは舞香が社長の結婚話を

知っていた事が

超ビックリ‼




舞香は、相手が自分じゃなく

杏だと知るとまたまたビックリ

「えーっ( ꒪⌓꒪)?嘘ー‼」

舞香はテーブルを拭く手が止まる。



「ホントホント、本社じゃ評判

なんだってよ‼

しかも2人で社内を腕組んで仲

良さそうに 歩いてたんだってよ‼。」


アハハ💦

「そ、そうなんだ」

(๑–̀ω–́๑)へ、へぇー

そう、な、んだぁ」


「社長も年頃だし、仕方無いかもね。

あーあー‼

楽しみが減ったワ」


と項垂れるミキに、同僚の友香も

近ずいてきてミキと楽しそうに

喋り出す。



「間違いなく山本建設の娘?」

舞香の問いかけに


同僚のミキと友香は、

シュッシュッシュッ

とアルコールでテーブルを拭きなが

らウンウンと答えた。




山本建設、母親恋しさに何度か

通った。

受け付けに行くたび居ないと追い返

された。

母親は、そこで事務員をしていた。

そして社長に見初められ不倫の末

結婚した。



私の人生、山本建設に潰された。


ポケットの中の携帯が振るえる。


「明日休みだろ。

遠出しょうぜ。

朝7時迎えに行くからな!」


呑気な拓成の声‼何を考えての電話?


「何いってるの?」


「いいな、朝7時、迎えに行くからな!」


「えーっダメダメ、ダーメ‼」

舞香が強く拒絶する。


「ダメはダメ‼明日七時だからな‼」

拓成は、知らない。

あの日、大吾を狙ってたのも杏


そして今度は拓成を狙って来た。


はあああぁぁぁ‼


深い長ーい溜め息が💨でる。




マンションの窓から眺める景色は

街の灯りがポツポツと灯り始めた。


洗い髪が風に煽られ乾いていく。

少し冷えて来たから部屋に戻り

ドライヤーをかける。

首筋から温まりほっとする。

杏は、父親違いの異父姉妹。


拓成と杏の結婚が決まるなら

このまま拓成と付き合って行けば

妹の旦那と姉が不倫。

母親より最低‼




さすがに私は母親の娘、手を叩いて

笑った。

母と、会うことをはばかれ母には

似ないはずなのに、こんなに似るな

んて・・・最悪


理由は、どうでも杏が妹で杏の

婚約者が拓成なら、離れなくちゃい

けない。


当たり前の事


私と杏が姉妹だと・・・

全てを拓成が知る前に・・・

杏と父親違いの姉妹と知れば拓成は

どうするんだろう!


どうにもならない事で

悩ませたくは無い


明日は雨っぽい、遠出は、キャンセル


そうあの日も大雨だった。

母の浮気がバレ、父親が怒り💢母親を

追い出した。


あの時は優しい父親が怖くて

怖くて、テーブルを投げ飛ばし

椅子を蹴りあげ大きな声で

怒鳴っていた。


母親も負けずと物を投げ飛ばし

泣きながら父親を責めていた。


その日からデカい音と

怒鳴り声を聞くと震えが来て

息が苦しくなる!

そのあと父親も出て行き

舞香1人残された。




時々母親がジュースとお菓子を

袋ごと投げて、又出ていく。


3日に一回

1週間に一回

2週間に一回

三週間に一回

大量の食パンとジュースをポイ投げ

母親が出て行ったあと

慌ててベランダに飛び出し

母親を呼んだ


「ママ━━━━」


「ママ━━━━━━」



母親の服装が良くなっているのが

不思議だった。

毎日お菓子を食べながら

白いご飯が食べたいと思った。


お腹が空いて、道も分からないのに、

ドア開けてバーちゃん家に行こうと

思った時、

ジーちゃんが駆け込んできた。


アパートを、出た時ホッとした。

それから祖父母は母を娘と呼ば無く

なった。

「あんな鬼のような娘なんて

育てた覚えは無い‼」


祖父母のお陰で両親は、虐待の罪を

まぬがれた。


あのままだったら死んでいたかも

しれない。

食べる物は殆ど残って無かった。

幼かったがあの日の事は良く覚えて

いる。


それは、運命だと諦めるには

余りにも幼すぎた。


母親が山本建設にいるのを知った

のは小学校5年の時だった。


1度母に合って聞きたかった。

私への愛情はあるのかと、

知りたかった。



父親は、たまに遠くから見てくる。

そして静かに去っていく。

私の成長を確かめるように、しかし

母親は、あれ以来姿を見せない。


それが答えだと分かっていたのに...



「もしもし‼」

又拓成から電話がなった。

拓成は不思議そうに聞いた。


「どうしたの?なんかあった?」


「明日キャンセルね。」

舞香はスパッと答えた。



「え‼なんで?」


「結婚するんだし、

色々忙しいんじゃない?」


「ああ‼大丈夫。

ジーちゃんが全部まかせろてサ

はりきっちゃて、

ジーちゃん孝行出来て

良かったよ。」



「そっかぁ、良かったね。」


「まあな。」


「しばらく合わないで置こう。」


「なんでだよ。」


「噂って怖いよ。

変な噂がたったら結婚も

危うくなるし。」


「オーバだな。

見つからないようにすれば

大丈夫だよ。」



「ダメダメ、ね、拓成幸せ?」


「それ、聞く。

今までになく幸せ。」


「そっかぁ、良かった。おやすみ。」



「わかった。

おやすみ舞香。」


結婚するのに会っちゃダメ

だって?。

“あたりまえだ“っうの!

誰と結婚すると思ってんだっっうの‼

私の妹だよ‼

気使え〃舞香は電話で怒鳴りたく

なるのをヤットコサ抑えた。


「チエッ‼明日

プロポーズするつもりだったのにな。

お楽しみはとっとくか‼。」


拓成は、風呂に入るため服を

脱いでた時、ジーちゃんから着信。



「拓成、明日先方と会うから

急なんだが大丈夫か?向こうから

の話なんだよ。」


へ?


「あーそうでしたか

さっきデートに誘ったら

振られたんですよ。


納得しました。

行きますよ。

ハハハ大丈夫です。

じゃあ明日。」


なんだなんだ舞香のやつ

思わせぶりだな‼

さてはサプライズか?

いきなり顔合わせかよw


ふふんふんふん🎶

拓成はシャワーを頭から浴びて

ご機嫌様様

喉仏くんも優しくソフトに

洗いだした。

ふふんふんふん↻ 🎶🎶 ↺




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る