第7話27 カミソリ拓



気の重い日が流れた。


淡々と仕事をこなす毎日。

舞香の事を思いながら…


キャバクラへの足は遠のいて

舞香は、今頃…

舞香は、舞香は、舞香は、

いたたまれない日々は続く

それから1ヶ月後、1ヶ月前に戻ったかのように、同じ事をしていた。


舞香のマンションに車で乗り付け

電話をかける。

舞香が休みな事は店のシフトで

確認ずみ。


「はーぃ‼もしもーし。

なに?

又ハブりに来たの?

顔見たくないんだけどっ‼」

つんけんドンな舞香の受け答えに

多少ムカムカ


「じゃ、お前は、どうなん。

人待たせて

笑いながらごめーんって

なんなん?」


「へ?

....それは.メンゴ‼」



「は?

ふざけてるのか?」


「違うケド、もういい?」

舞香はめんどくさいのが苦手‼

早く切り上げたい!

そんな性格を何となく理解してる

拓成は・・・

「分かった。

来なけりゃ終わりだ‼


もう、会いにも来ないし

関わらない‼


二度と合わない。

10分待つ。


俺はお前に誠意をみせたから、

” な”‼。」


「行かない‼」

舞香は即答‼

10分過ぎた。

煙草の火を消しながら車に乗り込む。


後5分...予備の時間を過ごす。


バックミラーを不意に見た時

花柄の黄色いワンピース姿の

舞香がエレベーターの脇に立って

此方を覗くように様子を伺っている。



チラチラ、チラチラ

車にエンジンをかける。

ハツとしたように、舞香が慌て

始めるが行動しない。


車を走らせる。

慌てたように二、三歩歩いて出て来た。


車のバックミラーで確かめ

蹲る舞香をみながらの発進


ぐるりとマンションを周り又

駐車場に入る。


静かに徐行して、車を止めると

ワンワン座り込んで泣いている舞香が車の少し前にいる。


暫く堪能する。

「全く気が強すぎるんだよ。

可愛い。」


バタンという音に振り返り舞香は

⋘し、しまったー⤵⤵⤵⋙

と言う顔をした。


プイッっとして涙を拭いている。


舞香の手を引っ張って車にのせる。

「戸締りした?」

コクコクと頷いたのを確認して車を

走らせる。



あのスーパーの前を通ると

「牛乳アイス泣いちゃったから

喉を潤したい。」


車をスーパーに止め

2人で入って行く。


お目当てのジャージアイス2個購入。

車で食べている時

舞香がわらった。


「可愛い。」


「は?今なんて言った、可愛い?」

口に着いたアイスをティッシュで拭きながら俺は舞香の言葉にハツとする。


「別に好きじゃないから...

くってるだけだし」

俺は一言釘さした。


「ん?それ、アイス?私?」

今まで泣きべそかぶってたのに

なんという立ち直りの速さだ。


俺はアイスを丸々口に放り込み

モグモグ モグモグ モグツ モグツ

ゴクン

飲み込む量が多すぎて喉に丸っ

と感触が詰まる感じグ、苦しい!!

アイスは何とか食道を通過して

胃袋に落ちる。

冷たい経路が良く分かる。

ハアハア

アイスに苦しみながら俺は

なんでこんな過酷な、彼女を

選ぶのか?呆れながら又ŧ ‹”ŧ ‹”車を

走らせた。


なのにコイツは苦しんでる俺に

気づかない!


「ね、ね.ね、答えてよ~」

ツンツン、ツンツン

ツンツン、ツンツン


「💢つッつくなー‼

運転中だぞ!」

あーむかつく!




あまりの怒号にビクッとビビった

舞香‼

しかし声は、小さめに、怒ってるぞ‼

もう喧嘩は避けたい。。


「冗談なのに〜

本気でおこんないでぇ‼」


気まずい雰囲気の中彼のマンションに到着。大吾のマンションも、

相当高級だったけど

拓成のマンションは、かなりの物だった。


ちょっと頭冷やしてくるから

好きにしていて..一言残して拓成は、

出ていった。


一人ぽっんとデカーイ、ヒローイ

リビングに残され暫くつつ立って

いたが・・・

「シャーない‼待つか‼」

と勝手に冷蔵庫をあけ、

きれーなワインニャハハハ

発見‼


アイス食べたあとだったし、お喉

かわいてるし..丁度ワインもいい具合に冷えてるし..ウヒヒ

拓成は、好きにしててって言ってたし、

好きにさせても━━━━━━らぉ


グリグリとワインオープナーで開けた。



スッポーン➹➷

いい音がして芳醇なワイン独特の香り~

「1杯だけ‼..ん〜美味しつ‼

...もう1杯

...もうすこーしっだけっとぉ~」

ウィ〜ヒック


すっかり気分の良くなった舞香は、

窓からたくさんのビルが見える事に

気づいた。


「ウワァすご━━━━━━い‼

遊園地の観覧車よりたか━━━━い‼」

窓に張り付きながら一望する。

じーちゃん、ばーちゃんにも見せて

あげたい、ビックリするよねぇ



拓成は...もしかしたら、私が好き

なん?自分も、拓成の事が好きだと

気づいたのは、ついさっき‼

もう会いにもこない、これきりと

言われ・・・


寂しくて悲しくて辛かった。

確かめたい。

彼の気持ちを..

またワインをグビッ、グビッ


部屋を物色していると、

隠れん坊できんじゃね‼グビッ、

うま﹏‼

ワインを右手から離さない。


明治後期の酔っ払い状態ワハハ

酔った勢いでパンプスとバック

を掴み抜き足、さし足忍び足

誰も居ないのに必要無くない!

抜き足差し足忍び足は要らないやー

ケラケラ

アハハハハハ


一先ずワインにポンと栓をして

⌒☆ポイッ


ベッドルームへGO

ドレッサーの中に隠れていたが

中々帰って来ない拓成を待つのに

疲れてきた。

限界、立ってられなくなった舞香は

ダブルベッドで横になる。


ボヨヨヨョ~ン、ボヨーンボヨーン

ジヤアアアンプボヨ~ン

スッカリ良いが回って超ご機嫌


ベッドのスプリングを堪能する。


ウッハウッハ言いながらテンション

あ、が、るぅ。ヒャッハー

ベッドルームにもデカいテレビがある。

この部屋だけでもバーちゃんちの

下の部屋ぐらいあんじゃなかろうか?


拓成何様?

ベッドの布団を綺麗にした後

拓成のドレッサーから1枚コートを引っ張り出しベッドの下に潜り混んだ。


拓成の整髪料や軽い香水のにおいが

舞香を包む。


拓成が自分を好きなら探し回るハズ


ウキウキしていたが、ふあああぁ

突然またまた眠気のお誘い。

「ダメダメ‼おきてなくちゃ眠気は、

また怒らせちゃう。


目を両手で広げたり、目に力を入れたり

努力したが.....眠けに..は..かてな

ま‼⤵いいかぁグググ

何とかなるっしょーw

両目は重なるようにくっ付いた💤

寝る一択


拓成は今、親代わりで育ててくれた

ツネの家にいた。


ツネに愚痴る。

「まあまあ、その娘さん面白いですわ、まあああ、置いてきぼりですの~。」

拓成は、罰が悪そうに


「つい、怒鳴ってしまった。

運転中だぞっ!

子供ならまだしも、

ツンツン、ツンツンって

つつかれてみ━━━━━💢

誰だってムカつくワ。」



まあまあ、まあまあ

「坊ちゃんすっかり尻にしかれて

おいでですけど、ケラケラケラ」


「ぇ、えええ?

しかれてる~オレが? 」


「そうですよ。早くお帰りになって仲直りなさいませ。

時間がたっと仲直りがむつかしい

んですよ 。」


「あっ‼そうだった👏今日伺う

つもりで、坊ちゃんの好きなプリン

沢山作りまし た。

二人で、仲良くこれ食べて早く

仲直りして下さい。」


子供の頃よくせがんで作って

もらった。カラメルが香ばしくパリッ

としていて、中はしっとり口溶けの

いい絶品プリン


何度も作って見るがツネの味には、

及ばない。

ツネが来たのは小学生4年の頃

生意気盛りの小生意気な俺を叱りつけ常識を叩き込んでくれた。


ツネも子供に恵まれず、追い出されるように屋敷にきた。

ツネは、一緒に住む両親より俺を

一番に考え世話をやいてくれた。


有難い存在。

子供を望む親がいるなら

親を望む子供の親になりたい。

ツネはそう言って、俺が成人したなら養子を迎えたいと言っていたが

俺がいたからもういいと言っていた。


そんなツネに肩を押されプリンを

抱えマンションへと帰る。


ふとツネの言葉が甦る。


「尻に敷かれてる?

おれが..


まさか、そんな事あるはずがない。」


小、中、高と知能犯だった。

カミソリ拓成と呼ばれたぐらい

ヤバかった。ツネのお説教の

おかげで・・・


「暴れるなら悪い奴と世の中の為に

なるように、やりなさいまし‼」


その言葉で目が覚め喧嘩三昧の日は、終わった。


いじられキャラ、に徹して

いじめられ役に回り、呼び出しを

くらった所で、 ボコボコにした。

もう起き上がれない程に。


正体を知ったヤツらが触れ回っても

ひと睨みでおとなしくなった。

俺はヤンチャしているやつを見る目はキレのいいカミソリに見えるらしい


付いたアダ名は

カミソリの拓


ある日

小学生の話し声が耳にはいる。


俺は公園でパンをくっていた。


「おい、アイツまた泣いてるぞ!」


「ああ、舞香だ‼」


「明日からハブるぞ!

面白くなるぞ…。

もっと泣かせようぜ﹏。」


イジメは、1人の言葉ではじまる。


ツカツカと近寄りガキの首つまんで

ニッコリほほえみ‼


「アイツは、俺の嫁だ‼

イジメてみろ‼


お前の家ごと潰すぞ

お前俺を知ってるか?」


龍のように凄みが聞いた眼力に

ガキは、小さくなり

オシッコをちびり出した。」


「名前、言え。」



「ヤ、ヤス、前田康夫。」


「おいヤス、ヤバいよ

名前言ったら..


コイツ、カミソリ..」

⋘ジロツ⋙

「スっ、すみません。

イジメはしません。」


そう言って2人でにげていった。

ヤスをおいて逃げなかったもう1人に

拓成は、関心していた。


そしてメソメソしていた女の子の

そばにいき優しく言い聞かせる。


「泣いてたらイジメの対象に

なるよ。笑えるか?

自分を守る為には、笑顔も、武器だ

よ。」



女の子は、クリっとした可愛い目で

拓成を見た。

瑞々しい目は小学生と言えど高校生の拓成を魅了した。



「なんで泣いてたの?

名前は?」


「舞香‼

昨日ママが来たの。」


「来たって、ママが?」


「うん。

離婚?して、弟と妹がいるの..


だから、もうママじゃないの‼

バーちゃんがママになるって

ママはママじゃないって‼」



「そうか‼

辛かったな‼

ん〜だけどバーちゃんも

泣いてるぞ‼」


「えっ‼バーちゃんが泣いてる?

なんで?」



「いいか、舞香‼

バーちゃんは、お前の為に

言ったんだ。

優しいバーちゃんだな。」


舞香は、黒い綺麗な目をして、


「バーちゃんが泣いてる?

どーしよう。」

舞香は、また

「どーしょう。」

と、また泣きそうな大きな瞳に

泪が潤んでヒックヒックと肩を揺ら

した。


「ほら、舞香、また泣くのか?

泣いても解決しないぞ‼」

拓成は、頭を優しく撫でて


「いいか、困ったら自分に言うんだ。


大丈夫。

大丈夫だからってな。」


舞香はキョトンとした目をして

呟いた。


「だい..じょーぶ?」

拓成は、ニコニコ笑いながら大丈夫‼

そういった。


拓成の大丈夫を聞いていたら何だか

ホントに、大丈夫な気がしてきた。


「元気に、”ただいま”って言いな‼

バーちゃんが喜ぶようにな。


舞香が元気になれば

バーちゃんも、泣かないさ。」


道の端に咲いてるたんぽぽを拓成の

ハンカチに包み


「ほら、これをバーちゃんに

やりな‼」


拓成からたんぽぽを受け取り小さな

丸い手は、ゴシゴシと涙をふいた。

そのタンポポは黄色が濃ゆいオレンジ色

で舞香の鼻を優しく撫でた。


「ハンカチは…いっ返す?」


フフフ

「ハンカチは、あげるよ。

舞香が泣きたい時使いなよ。

そして笑う。

約束‼な‼。」


「うん、ありがとう。

お兄ちゃん。」


舞香も、そんな昔の事を拓成の

ベッドの下のあの時に似た匂いの

中でうっすらと思い出していた。


ワインのお陰かフワフワした

夢心地にすっかり昔の

記憶深い日を思い出していた。。


優しい瞳...あれは

あれは..だれ?


タンポポは春のタンポポじゃなくて

秋の日の暖かい日が続いた小春日和

の、タンポポだった。


春のタンポポをみても

秋の小春日和のタンポポをみても

甘い思い出...


一見怖そうな、でも優しい彼

あの日のハンカチは、舞香のポーチに変身して今もバックの中にある。

舞香の初恋。



舞香の大事な思い出。




あの日の大丈夫‼は、お守りみたいに

舞香を守ってきた。

舞香を明るくして前に進ませた。


その日急いで家に帰った、

59歳のバーちゃんがゆるふわ

パーマをかけて、

二段のつけまつ毛をつけて、爪も綺麗に

してバーちゃんは、大丈夫だった。

泣くどころかパワーupしていた。


厚化粧しないとシワが隠れないし

網タイツ履かないと足のラインが汚く

見える。


バーちゃんの弁解は、ジーちゃんを

納得させた。

ミニスカートを履いたバーちゃんの

後姿は20代。


しかし振り返ると、どうも気持ち悪い。

ジーちゃんは、胸を抑えながら

トイレに駆け込み...


「ウ、ウ、ウエェェェー、

ウゲッウゲッウゲッ。」


極めつけのウインクにジーちゃん

リバース。


欲情する所かジーちゃんをICU送り

にしそうな雰囲気さえある。


ジーちゃんジーちゃんジーちゃん

舞香の叫びに

ジーちゃんは、

「だっ、大丈夫だ、大丈夫だから。」

そう応えてきた。



それを聞いたら安心した。


それからバーちゃんは

やり過ぎたと思いデパートの

化粧品売り場のおねーさん達に相談して、それなりに綺麗になって行った。


バーちゃんは、役員をかってでたり

ママ友達とランチいったり

韓国スターにベッタリだったのに

日本のアイドルにも目を向けたりした。


キャラ弁がんばったり

流行りのドラマ見たり

本当に頑張ってくれた。


自分の娘のような人達と

友達になるために、いや何もかも

舞香の為に。

名ばかりの母親より、本当の母親の

ように。


並大抵の努力じゃ無かったが

持ち前の明るさと看護師をしていた

経験から、子供の事で

皆バーちゃんを頼ってくれて

ママ友との仲も好調‼


本来のババ友にも若返りを教え

コレも好評


バーちゃんはデパートのお姉さん

達にも利益をもたらした事は

間違いない。


まるっと丸々収めるバーちゃんは

凄い人かも知れない。


バーちゃんは2度目の子育てを

楽しんだと言ってくれる。

舞香が申し訳なく思っているのを

知っているかように・・・

舞香に優しいのは昔から

有難うが足りないくらいありがたい。

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