第5話 大吾のウワキで終━━了

「おはよう。」

大吾は、普通に起きてきた。


今日は2人ともシフト休みだ。


「学校から帰ったら買い物行こう。

お砂糖とか、お醤油とかキレてるし。」


「ふああぁ‼ハイハイ分かった。」


聞いてるのか聞いてないのか

大欠伸を繰り返して

トーストをパク付きながら気のない

返事。


パンも舞香が捏ねて発酵させて

焼いたものだ。


サラダも菜園グッズを2人で

買いに行き育てた物なのに

なんの感動も、ナイ‼


ピコーんとなったラインに

ポチポチポチポチポチポチ

人差し指と両目は、シッカリと動いておるのに、口は、ゆっくりゆっく〜り

カミカ...ミ カミ カミ


食うか、ラインするかどっちかに

してほしい。


だら〜んとのびてる大吾に


「買い物前に映画行かない?」


「夏色のロマンス。凄ーく

見たいんだー。」


大吾は、フツーな顔して


「却下‼

女の見る映画なんかヤだね笑‼

行きたきゃ友達誘いなよ。」

ポチポチ、ポチポチ


「俺、疲れてんだー

今日留守番してるから

行っておいでーオレあんなん

苦手で無理、誰に誘われても

行かね━━━し‼」



「え‼」

あの人達とは、ロマンス映画見て

たのに?


「もうちょっと寝かして‼

買い物は映画の帰り電話して

寝たい💤」


そう言うとソファーにゴロンとなって軽い寝息を立てて眠ってしまった。


サラダもパンも、かじりついた程度

大吾の中で何かが変わってしまった。


食いかけの🍞を片付ける。

お揃いのコーヒーカップには

手の付いて居ない珈琲が舞香の

寂しそうな顔を写しだしていた。



「おーお‼

スゲー腕あげたな‼

これ焼きたてじゃん。

ウメー

まさかジャム手作り

舞香‼さすがあ。」


「だって大吾には、

手作り食べさせたくて

勉強し.た.の‼。」

焼きたてのパンをテーブルに

乗せるとまだ暖かいパンを

切り分ける



「大吾ほんとにやるの?」


「うん。だから買いに

来たんだろ!」


「野菜なんてプロにまかせたが

良くない?」



「大丈夫‼ネットで調べて

夏野菜沢山作るぞー。」


あれから暫く野菜の水やりを頑張って

たのに...

パッタリとやらなくなった。



暫く午前様が続くどんなに鈍い

舞香でも浮気を疑ってしまう。


「おはよう。」


「おはよ。」

だけの会話


「今日バイト?」


「うん。」


「今日就活」


「うん。」


「美味しい?」


「うん。」

「先に出るね」


「うん。」

うん。しか言わなくなった大吾。


たまには一緒に帰り関係を修復

しょうと努力して見る。


高校の時から尽くしてくれた

大吾だもん。

きっと帰って来てくれる。


今はただ迷ってるだけだよね。



カラオケ店は、

カフエから15分位の所にある。

時計をみたらまだ10時、終わるまで、

もうチョットある。

今日はお客さんが早く引いたから

大吾を迎えに来た。


歩寄らなきゃ離れてしまう。

そんな事を思いながら

カラオケ店の前の本屋さんに入り、

出入りが見える場所に立ち大吾を

待っ。


30分位たった時五.六人の男女が

本屋の前を通りかかった。


慌てて本を戻し声をかけようと....

本屋を飛び出た。


「だい・・・・ご」

呼びかけた声が急に小さくなる。


大吾の隣には大吾の腕に抱きついた

ポニーテールの可愛らしい女子がいた。

二人の会話が聞こえてくる。


「お腹すいたね。

夜食作るよ、チャーハンでいい?」

大吾の腕に絡みつき嬉しそうに

彼女は大吾を見つめながら

そう言った。


「俺、作るよ。

中々上手いんだよ。」

大吾は彼女の頭を撫でながら

ニコニコしている。


「えー、大吾ありがとぅ〜

今日も泊まる?」


「泊まるよ、こんな時間キツくて

奈緒は嫌?」


「嬉しいに決まってる💓」


皆で歩いてるから後をつけた。

3人は駅の方へ、1人はバス停へ



残りの2人はこじんまりしたマンションへと入って、行った。


震える声で呟いた。


「心配ない。

心配ないよ、

大丈夫、大丈夫だから。」


その日以来舞香の中で何かが壊れた。

一番頼りにしていた人

一生を捧げ、この人の為に頑張ろうと

決めていた。


大きな裏切り。

でも、もう大丈夫‼

そうだよ。

あき、あ、あきら・・・める・・

事には、慣れてるんだもん。


その夜は大吾と過ごしたベッドの中

で声を出して泣いた。

今、大吾はあのマンション・・・で


帰るはずの無い大吾を待ちな

がら眠れぬ夜を明かした。


鳥の動き出す頃には

舞香の気持ちが固まっていた。



カフェの仕事を辞めた。

オーナーは、未だ知らない。

店長に辞める事を話した。

急にヤル気が無くなった。



そして悶々とした時間が流れ

久しぶりに大吾と話す機会

があった。

そんな中で大吾が呟やいた。

久しぶりの会話だった。


「ねえ、カフェの帰り大丈夫。

ずっと1人にしたけど気にしてるんだ。

ごめんな?」



「やだぁ、今更?

大丈夫だよ。

大丈夫‼»」


その時》として

一瞬大吾の顔が、驚いた顔を向けた。


「どーしたん。?」


いっもと変わらない舞香の態度に

ホッとした表情をみせた。



「もう何ヶ月、1人で帰るにも

慣れちゃった。へへっ」





「買い物とかいいの?

大変じゃない?」

大吾は何がいいたいのだろう。

愛情はとっくにないくせに

そして私も何を迷っているのか?


そんな気持ちを知る由もないのか?

久しぶりに顔を見ながら大吾は

喋ってくる。



「うん。大吾朝しか食べないから

そんな、買うものないし...

平気、平気。」


舞香も笑顔を見せて答えた。


「じゃ話せて良かったよ。

じゃあね!」

舞香はニッコリと大吾を見た

大吾とはもうやって行けない。


『バイバイ大吾、長い付き合い

だったね。』

今日出ていくからとは言わないでおく。

大吾は、俯いてウンウン。

ポチポチ、ポチポチ

又彼女とのラインに身をいれる。


あの日から2ヶ月、

舞香はキャバクラにアルバイト先を

変えていた。茉莉奈の紹介で高級で、客質のいいクラブ。


マンションも、借りた。

3年貯めたお金を投げ出し築40年の

手頃な家賃、

店は少し遠いが電動で、通勤。


舞香は向いているのか?はたまた

母親の血筋がうずくのか、メキメキ

頭角を表した。


化粧のやり方もクラブの下働きに

潜り込み、おねーさん達から

習った。


デパートの化粧品売り場に行き

バーちゃんが使った手と一緒で

泣き落としを決め込み丁寧に

教えてもらった。


今までリップクリームか、化粧水、

ニベ〇

しか使った事がなかった。


しかしあの夜大吾と腕をくんでいた

彼女は綺麗な化粧をしていた。


“色気を学ぶ、“

に考えが至った舞香は

その道のプロに聞くが一番と考え

茉莉奈に相談した。



なら本格的にキャバ嬢になりなよ。

茉莉奈は、自分の務める店に

推薦してくれた。




店に務め出すと、色んな男がいる事に


スゲェ!!驚き‼


色んなノウハウを身に付けた。

茉莉奈は、お真面目な職場に着く為

店を辞めた。



大吾は、気づかなかった。

最近奈緒の家にお泊まりが続き舞香と顔を合わせるのが気まずいため時間をずらし避けていた。


しかしおかしい事に2ヶ月

気づかなかった。

ある日ふと思った。

全く舞香の気配が消えていた。


食器も位置も変わらない。

料理好きの舞香がキッチンを使った

形跡が・・・な・・い。



舞香の部屋を開けて見た。


すっからかーん。


靴箱の中を見てみた。



すっからかーん。


洋服もお気に入りのクマちゃんの抱き枕も、居なくなっていた。




««««あああああ»»»»

頭を抱え込み呆然とする。



舞香を失った事を知る。


甦るのはあの日「大丈夫。」

あれが最後の会話.....‼


あの日感じた違和感は、当たりだった?

舞香とは....終わった?

ブルブル、ブルブルと震えた。


携帯に電話してみる。


「はーい、大吾どうしたの?」


「舞香‼舞香‼ゴメン。

ゴメン。」



「え‼何?急に、どしたー?」


「帰って来いよ。」


「イヤイヤ、それは無理‼」


「今日からまた送り

迎えするから。」


「舞香だけ、大事にする。

ロマンス映画も付き合う。

買い物にもついて行く、舞香を

絶対、絶対1人にはしないよ。

約束する‼」




「やだな?どーしたの?彼女と

お泊まりしてるじゃん。

彼女に来てもらえば?

あ‼

とうにカフェ辞めてるし…

送り迎えは要らないよ、

彼女大事にしたらいいじゃん。

あの子、高校生の時

SNSに出てた子だよね。



可愛い子だね。

大吾が心変わりするの

当たり前だよ。



毎日送り迎えしてるし

大事な人なんでしょ。あ‼

時間ないから

私は大丈夫だよ。



もう、かけてこないでね。

あなたのマンション出て

2ヶ月になるんだ。

言わずに出た私も悪いけど

今更気づく大吾も、なんだかなぁ〜」


2ヶ月?2ヶ月....


「いや、舞香あれは遊びなんだ

愛してるのは、本当に舞香なんだ」


「・・・大吾、変わったね。

私の大吾は遊びでお泊まりする

様な男じゃ無かった。


本当に変わったね、

だから簡単に裏切れたんだね。

最低‼」

Puーpuーpuー



何度も掛け直したが着信拒否されて

それ以来、舞香とは繋がらなかった。



あれは...始まりは...


「店慣れてきたね!

声も出てるし。」


「うん。お蔭さまでっ。

でも、ほらあの人…」


「ああ、最近よく来るね!

前はあんまり見なかったけど。」



「実は毎日、後ろから付けてくるの。

昨日もその前も

偶然かな?と思ったけど気持ち悪く

て‼」


「よし‼じゃあ今日後ろの後ろを

付けて見る から安心して

帰りなよ。」


そう約束して奈緒の帰りをつけ回す

男か、確かめてみた。


不安そうに歩く奈緒。

一人の男が電柱に寄りかかってタバコをふかしている。


奈緒が歩き出すと

煙草を吐き捨て奈緒の後ろを歩いて

いる。


“奈緒‼“


俺が走りよると男も走り逃げて

行った。

それから奈緒を送るようになった。


最初は、マンションの前まで

だったが、

飲み会の後つい、誘われ、あがりこみ酒の勢いもあり

関係を持ってしまった。


奈緒に謝り、再度好きな子がいると

言ったらそれでも言い、と言われ

断れなくなった。


舞香は、俺の家にいるし

気づかれ無ければいいと、説得され

了承してしまった。


店からマンションが近いのは

凄く利点だった。

疲れた体は奈緒で癒され眠りに

つくと、朝だったりした。

奈緒との始まりは舞香との別れに

繋がっていた。


軽い付き合いのつもりが

取り返しの付かない

方へ進みだしていたんだ。

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