第7話 悄然
城下町まで走りきると、さすがに息が切れた。二度の爆発にさすがの住民たちも騒ついていたが、誰も城には近づこうとはしなかった。まあ兵士もいないし怖いだろうな。
自然と城から走ってきた俺たちに視線が集まる。
どうなっているのか聞きたいが、声をかけられない。そんな空気だ。マリーが俺の背中を小突いた。わかってるよ、俺の役目だって。
「あー……城にネズミが大量に出て倉庫の物をダメにしたんだが、いま駆除が終わったところだ。念のために城の外にもわいていないか確認してくるから、道をあけてもらっていいか」
周りに聞こえるように言うと、皆なぜか納得したように道をあけてくれた。
やはりこの国は平和ボケしているな。隣のマリーから舌打ちが聞こえたが、何も言うまい。ミランダはやけに静かだと思ったら、唇をきつく結んでいた。
「行こ。面倒になる前に」
マリーに手をひかれてようやくミランダは歩き出した。
「大丈夫。ちゃんと敵は間違えないから」
俯き加減で歩くミランダに、陽が沈むわずかな光を背にマリーは力強く言った。
「だから安心して。ね? 大丈夫だから」
結局ミランダは城下町を出るまで何も言わなかった。何も見たくないと言わんばかりに下を向いたまま、マリーに手をひかれたまま。
それを俺もマリーも咎めなかった。わかっていたんだ。ミランダは優しいから。きっと苦しむだろうと。
「よし、追っ手は来ていないな。マリー、いいぞ」
王国を出てすぐの森に隠れて周囲を確認したが、兵士は追ってきていない。俺たちを探している場合じゃないだろうからな。当然か。
マリーはひらけた場所を探して、赤い発煙筒を打ち上げた。
陽が落ちて
それを、俺たちはただ見ていた。
赤い煙が風によってかき消されるまで、ただ見上げていた。それしかできなかったんだ。
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