第4話 準備

 イタカの第一印象はとても良かった。だから絵師も筆が乗って、石像のデザインが完成した。

 俺が言うべきではないが、一番良い顔をしたイタカだった。

 国王も満足し、すぐに石像の制作を命じた。同時に勇者の弔いの儀の準備も進められ、今夜にも執り行われるらしい。

 まだ帝国と公国に帰れないマリーとミランダには王宮内の客室が用意されている。既に三日も泊まっているので、二人は自分の部屋のように使っているようだ。

 マリーに弔いの儀と石像の件を話そうと部屋を訪ねると、ちょうどよくミランダもいた。

「ちょうど良かった。二人とも、今夜は勇者の弔いの儀が行われる。腹が立つかもしれないが我慢してくれ」

 ショットガンとライフル銃を手入れしていたマリーに釘を刺すように言うと、そこまで子供じゃないと返された。たしかに。失言だったな。

「あ、あの、コモドールさんの言われた通りに、使い魔を配置しておきました。その……指示通り、たくさんのラットを……」

「さすが仕事が正確だな、ミランダ。助かる」

「いえ、そんな……これから危険な目に遭うお二人に比べれば、なんでもないです」

 ミランダは心配そうに俺とマリーの顔を見て、俯いた。

「なに言ってるの? ミランダもでしょ? あんなに大量召喚して、持続させるの大変だよね。コモドールのせいにしていいんじゃない」

「そこは俺じゃなくて、勇者のせいにしてくれ。指示通りに動いてくれなきゃ困るんだ」

 俺の一言に、二人の気が引き締まった。

 おそらく魔王城に入る直前と同じくらい、いや、それ以上に真剣な顔をしている。

 失敗が許されないんだ。俺たちには。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る