第18話 心に傍寄る強さ
──相手の目を見て話す。
──相手の目を見て、きちんと話す。
「見れる状況なら、やってんだわぁ!」
リンの猛攻から、兎に角逃げ回っていた。
時に避け、時に異能で
最初は応戦するつもりだった。本当に『つもり』だったわけだが。
リンは前と同じファルシオンを握っている。けれど、今回は剣が変異することは無かった。
代わりに、真っ黒い狼を連れている。
新たに奪い取った異能だろうか。リンは狼を、長年連れ添っていたかのように従えている。
剣術に優れた少年と、彼に忠実な狼が襲ってきたら、ほとんど使い道のない異能持ちの
「ホンッット無理! 無理じゃって! どこで捕まえてきよったその犬っ!」
「
「ふざけなやぁ! 元居た所に返してらっしゃい!」
ぎゃあぎゃあと、夕暮れ時の鴉の様に喚いても、暗闇に消える体に一つたりとも傷はつかない。
狼の歯牙が胸で音を鳴らす度に、リンの鋭い剣が首を通り抜ける度に、惨めな思いが、
「どうして、お前なんかが……」
リンは歯ぎしりをして、そう呟いた。
とてもとても悔しそうな、重い一言で、
「愛されてるって? 馬鹿も休み休み云っとくりゃあ!」
振り返った勢いで、
白い肌がじわじわと赤くなっていく。自分の手のひらも、ピリピリとした痛みとストーブに触れたような熱さが広がった。
リンは叩かれた頬に触れ、
「あんたがどんな生活してっか知らんけどな! あんたがどんな思いで生きてきたか知らんけどな!
食べたかったケーキ。目の前に居たのに与えられた罰則。欲しいものを飲み込んで、微笑む彼らから目を閉ざした。
自分の心すら、見ることを辞めたこの悔恨を、此奴には『幸せ』に見えるのか。
「……羨ましいなぁ」
気がつけば、
「良いよなぁ。褒めて欲しい人がいるのってサ。認めて欲しいものがあるんだもんなぁ。
一度は頑張った。
いや三度くらい、自分も褒めて欲しくて頑張った。
朝の掃除も、お昼ご飯の片付けも、小さい子のお昼寝の準備も。
ご飯を抜かれても、知らないことで怒られても、泣かずに我慢して、笑ってみせた。
(全部無駄な努力だった)
生きているのか死んでいるのか、分からないこの異能が、忌まわしいほどついて回る。
リンが欲しいと云うのなら、笑顔で譲ってやりたい。それで彼が褒められるのなら、きっと
けれど今は、死ぬには惜しいと思ってしまう。
面白いことなんてない。けれど、顔が笑っている。どういう事だろうか。
「やっぱりあんたも
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