第3話 吃驚追いかけっこ
賑やかな商店街に身を任せ、
買い物する主婦の声に、呼び込みの店主の声。往来する途切れぬ車に、彩り鮮やかな商品をずらりと並べた店先。
目の前で宝石の
唐辛子の根付を買って、携帯電話に早速付ける。服屋を見て回り、本屋にも顔を出してみる。
そういえば、ここは中華街があるんだったか。赤レンガ倉庫なるものもあったような。図書館だって、田舎のものの比では無いほど大きいだろう。
行きたいところ、行ってみたい所に思いを馳せて、
「は〜ぁ。最高ってのは
「あれ、笹舟渡さん?」
しばらく街中を
敦はまだ 探偵社に居る
お互いに見つめ合って三秒経った。ようやく敦が驚いて叫ぶ。ちょっと遅すぎる気もするが、ちゃんと私が外に出ていることに気がついた様だ。
だが敦は
体力も人一倍あるのか、どんなに走っても速度が落ちない。むしろ加速してきているみたいだ。このままでは、
「……っと、危ねっ!」
意識が逸れたまま走っていたら、思わず道路に飛び出してしまった。急停止する車のボンネットを跳び越えて、運転手の怒号に空返事する。残りの一欠片を口に放り込んで、
敦が何か叫んでいたが、良く聞こえていない。
だが、封筒を届けただけの田舎者が、土地勘もない横浜を、感覚だけで逃げているのだ。知識もないのに家を建てるような無謀をしているのだから、行き着いた先が袋小路なんて、当たり前だろう。
来た道からは、「ささふなどさぁ〜ん」なんて、敦の疲れた声がする。逃げ道を無くし、途方に暮れていると、「遅かったな」なんて声を掛けられた。
横浜に知り合いなんて居ない。私が声の主を見れば、案の定知らない金髪の男で、暖かい日に黒いコートを羽織っていた。
男はコートの内側に詰め込んだ、白い粉をチラつらせる。
「捜し
「おうおう、
「あ? お前、使いじゃねぇのか?」
「何ら関係ねぇな」
男に気を取られているうちに、敦が
「はぁ、はぁ。だ、駄目ですよぅ。ほら、早くこっちに……」
「何であんな処に閉じ込められんといけねぇのよ。
「駄目ですって! 笹舟渡さんは、事件の」
──事件の?
興味深い話が敦の口から零れた。私が目を丸くすると、敦は慌てて口を塞ぐ。
「なぁ、
敦に詰め寄ってみれば、敦は白粥の様に血の気の引いた顔で、首をぶんぶんと横に振った。そこまで云ったなら、答えて貰わなくては。
「探偵社に閉じ込められてた理由が、その、何かの事件に関係してるって云うのけぇ?」
「いいいいえっ そんな訳じゃ!」
「云え。
どうして閉じ込められた? どうして外に出られなかった? 誰も教えてくれないその理由を、どうしても聞きたかった。
ずっと気になり、いずれ出てくる筈の答えはお預けのまま。もう、待つのは飽きた。
その方向を見やると、先程まで居た筈の男が居ない。代わりに、男が着ていたコートだけが、その場に残っていた。
そう云えば、新聞にも載っていた。あちこちで、人がいきなり、消えてしまう──事件が。
「なぁ、中島くんや。今、男が消えたことにも、
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