第2話 嬉々として脱走
(…………完全に飽きたなぁ)
長い一日は、まだ半分しか過ぎていない。そろそろ皆が昼休憩に入る頃、
かといって、外に出ようとすれば、必ず誰かに見つかって、ソファーに戻される。
寝返りを打ち、ソファーの上でぐうたらしていると、「お茶でも」と、穏やかな顔つきの少年が、芽吹に声をかけた。
「悪いが、お茶より外出がいいなぁ。お勧めはあるかい?」
「え? いやァ、外出は駄目ですよ」
「ほぅ。何でまた、駄目なんだろうなぁ?」
「や、それはちょッと云えなくて……」
「云えない。けど外には出せない? 理由が無けりゃ、
「それは〜、困りますッて」
「知ってるだろうがね、
一週間前、芽吹はバイトしている図書館で会った知り合いに、一つの茶封筒を渡された。そこには宛名も何も書いていない。ただ薄い封筒の底がほんの少し膨らんでいて、何かの情報媒介があるんだろうと察していた。
『武装探偵社の福沢という男に届けてくれ』
それ以外は何も聞かされていない。仕方なく届けに行けば、その福沢は探偵社の社長だった──知らずに思いっきり呼び捨てにした──し、その場で封筒を開けたかと思えば、家に帰してもらえなくなった。
理由を何度尋ねても、濁した答えが帰ってくるばかり。もう聞き飽きた。
「そうだ。納得する理由を教えてくれよ。そうしたら
そう
痛みに体を引っ込めると、谷崎もホッと胸を撫で下ろす。国木田は眉間に寄せられるだけのシワを寄せた。
「うちの社員を
「おう、
「事情があると何度云えばいい」
「その事情を教えてくれと云っただけサ。それすら許されん?」
「教えられないとも云っただろう」
「堅物め」
「別に良いだろうよ。
「文句を云うな。我慢しろ」
何を云っても突き放される。国木田と話すと全部押し問答だ。「お前の為」だ? ふざけるな!
ふと
「
軽く
「な、んな! 俺が、こんっ……」
「
思った以上の効果に、
追い出すような仕草をされて、廊下に出る。ドアを閉めて、
「…………にひっ」
思わず変な笑いが漏れてしまう。
音を立てたら気づかれるので、
一度着地する時は、慎重に、つま先だけを階段につけて、体勢を整える。それを四階分繰り返し、
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