第十話 ムト、シルジンと出会います
扉が開き、五人が部屋の中に入って来た。
二人が前に立ち、その後ろに三人、素早く位置を整える。
前二人と、二列目の左右二人は右手に何か棒のようなものを構えてた。
わたしが
「……お前は何者だ? オリバーはどうした?」
全員、頭には何も
青や茶色の髪に、青や灰色の瞳。
その
でも、なんで日本語で話してるんだろう?
だいいち、オリバーなんて知らない。
わたしは混乱し、質問に答えることも忘れ、立ち尽くす。
「む、聞こえんのか? お前は何者だ?」
「シルジン様、ひょっとするとミツカイサマかもしれません」
二列目、向かって右側の人が、シルジンと呼ぶ人に小声で
ミツカイサマってなに?
頭の中に
急に、心臓の鼓動を感じ、脚が震えてきた。
よくわからない、怖い、どうしよう。
「む、
「いえ、
「ゴルドー貴様……ケンジンカイはともかく、父は関係ない! オレが判断する!」
シルジンという人は、カッと怒ったような口調で言い返す。
よく見ると、少年のような顔立ちにも見える。
「し、失礼いたしました」
ゴルドーと呼ばれた、こちらは年配に見える男性が頭を下げて謝罪する。
「いつまでもここにいるわけにもいくまい、そやつを下の
「お、恐れながら、下には一般の
「むぅ、それではソリスキュアに
「わたくしがどうしました?」
状況についていけないわたしの耳に、鈴のような声が聞こえる。
彼らの後ろ、開かれたままの扉の向こうから近づく足音。
「ソ、ソリスキュア、いやこれはだな」
五人は近づく人物に距離を取るようにさっと広がり、シルジンと呼ばれた男が後ろを向いて言い訳するように答える。
綺麗な髪。
わたしが最初に思った感想は、少女の青い髪に対する賞賛だった。
年の頃はわたしと同じ、柔らかな顔立ちなのに意志の強さを感じさせる、髪と同じ青色の瞳に見入ってしまう。
ソリスキュアというのがその少女の名前なんだろう。
髪よりも淡い水色のドレスは、まるで童話の世界に住むお姫様のようだった。
「お兄様、こちらのお方は?」
「し、知らん。いずれにせよ
「あら、お兄様はご存じなかったのですか? ムトゥ神の
「……
「ええ、今年の試練は300年に一度の特別なもの。
「オリバーも、
「はぁ、やはり耳を貸してはくださらないのですね、王家の
「あれらの資料が本物である
「長きに渡り、この国を
その言葉はとても静かで、リンとした
それはわたし以外も同じだったみたいで、シルジンはそれ以上何も言えず
「というわけで、そちらの方はわたくしがお連れいたします。
「……そんな勝手が通用するものか、オレはこの国の王だぞ!」
シルジンがそう反応する中、ソリスキュアはそれを無視してわたしに近づく。
わたしと同じくらいの
にこやかな顔の可愛さは圧倒的に向こうが勝ってる。
近付き過ぎると目のやり場に困る。
「あら、それは」
彼女はわたしが握りしめている『
シルジンたちに向き直り、わたしの手を持ち、
「ですから、大聖堂を
「『
シルジンや他の人も驚いた顔を、私の持つ『
―――――
ソリスキュアに手を引かれ扉を抜ける。
彼らは距離を取り、どうしていいかわからない感じだったけど、わたしは怖かったので身をすくめながら早足に歩く。
わたしがいた部屋は「
そこを出ると、円形の廊下と円周上に扉がいくつか並んでる。
中心には、手すりに囲まれた直径10メートルくらいの吹き抜けがあり、それは一階まで通っているようで、内側に沿って螺旋階段があり、手すりから覗き込んだ階下は目がくらむほどの高さだった。
廊下を左から右回りに歩き「
「どうぞ」
ソリスキュアに手を引かれ入室する。
「おじゃまします……」
中は豪華というわけじゃないけど、品が良いとでもいうのか、テレビで見た高級ホテルの一室みたいに感じられた。
広い居間には、分厚いテーブルをはさんで四人掛けのソファが対面で二つ。
暖炉や本棚、正面には透明な窓が見える。
部屋の左右の壁には扉が二つずつあり、手前右側の扉は開いてて、昔の看護婦さんみたいな真っ白いメイド服? の人が現れ、お辞儀をする。
「カリアム、こちら
「承知いたしました。ときに
「あら、わたくしとしたことが」
ソリスキュアはわたしに向かい聞いてくる。
「
「あや……」
ソリスキュアに名前を聞かれ、あやがねむと、と答えようとして声を止める。
さっきの話の中で気になる言葉があった。
ムトゥ神という言葉。
少しだけ落ち着いた頭に、神様と似たようなわたしの名前を言って怒られないか疑問が浮かぶ。
この子に嫌われてしまったら、たぶんわたしはひどいことになる。
それだけはだめだ。
「アヤ様、ですか?」
「は、はい、それでお願いします」
思わずそう言ってしまったけど、苗字の一部だから、嘘じゃないよね?
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