第15話 エヘッ! 15

「やって来ました! リヴァプール!」

 おみっちゃんたちは観光都市リヴァプールにやって来た。

「ここには王族はいません。」

 ダイアナのプチ情報。

「そういえば、もう倒すべき王族もいないわね。」

 ほとんどおみっちゃんの歌の餌食になった。

「アン叔母様と、もうエリザベス女王しかいないわ。」

 それとシャーロットの3人しか生きていない。

「急に不幸が続くわね。何があったのかしら?」

 本当に原因が分からないおみっちゃん。

「おまえが原因だろうが!」

「ええー!? 私ですか!? 私は何にもしていませんよ! ただ私は可愛いだけです! エヘッ!」

 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。

「馬の耳に念仏だわ。」

 女将さんはおみっちゃんにものを言うのをやめた。

「さあ! 商売を始めるよ! 茶店の準備をしな! 野郎ども!」

 お金儲けが大好きな女将さん。

「私は女なのでやろうではないんですけど。エヘッ!」

 細かいことを気にすることもあるエヘ幽霊。

「生意気に揚げ足を取ってるんじゃないよ! 給料を払わないぞ!」

 キレる女将さん。

「それだけはお許しください! 悪お代官様!」

 給料を減らされることには弱いおみっちゃん。

「誰が悪代官だ? 誰が?」

 耳を疑う女将さん。

「違った。地獄の守銭奴でした。エヘッ!」

 エヘ幽霊は女将さんの素性をよく知っている。

「その通り! 私が地獄の守銭奴です! ・・・・・・なんでやねん!」

 女将さんは怒り心頭。

「ごめんなさい! 許してください! エヘッ!」

 どんなときも笑顔を忘れなエヘ幽霊。

「許さないぞ! おまえたち!」

 そこに一人の男が現れる。

「いらっしゃいませ! ジャパニーズ・お茶とお団子です! どうぞ! どうぞ! お客様が初めてのお客様です!」

 おみっちゃんは客引きの天才であった。

「そうか? すまんな・・・・・・違う! 私は客ではない!」

 男はお客様ではなかった。

「なに!? 違うのか!? 詐欺で警察に訴えてやる!」

 おみっちゃんと会話するのは大変だった。

「おまえが勝手に勘違いしたんだろうが!」

 お怒りの男。

「そうでした。ごめんなさい。エヘッ!」

 謝れば許されると思っている。

「それでは仕切り直して。おまえは何者だ?」

 おみっちゃんの適応能力と事なかれ主義は素晴らしい。

「俺は悪の組織パパラッチの幹部! 悪魔のサタン様だ! 今度こそシャーロット王女には死んでもらう! ワッハッハー!」

 現れたのは悪魔のサタンであった。

「サンタさん? わ~い! クリスマスプレゼントを下さい! 私、いい子にしていましたよ! エヘッ!」

 おみっちゃんはサタンをサンタクロースと間違える。お馴染みのボケである。

「はい! おみっちゃん! クリスマスプレゼントだよ! メリークリスマス!」

 サタンはおみっちゃんにクリスマスプレゼントを渡す。

「やったー! クリスマスプレゼントだ! サンタさん! ありがとう! わ~い!」

 プレゼントをもらって大喜びのおみっちゃん。

「中身は何かな?」

 早速プレゼントを開けるおみっちゃん。

「ゲホゲホ!?」

 中から煙が出てきた。

「引っかかったな! プレゼントの中身は毒ガスだ! これが本当の苦しみますプレゼントだ! このまま死んでしまえ!」

 プレゼントは毒ガスだった。

「うっ!? 苦しい!?」

 苦しむおみっちゃん。

「これで残りは3人。我が悪の組織パパラッチに歯向かったことを後悔させてやる! ワッハッハー!」

 大笑いするサタン。

「違いますよ。後4人ですよ。エヘッ!」

 おみっちゃんも大笑い。

「ギャアアアアアアー!? なぜ死んだはずのおまえが生きている!?」

 奇々怪々の出来事に驚くサタン。

「いえいえ。私は生きてませんよ。だって私は元から死んでますからね。エヘッ!」

 おみっちゃんは幽霊なので最初から死んでいる。

「私はもう死んでいる! 一回言ってみたかったんですよね。エヘッ!」

 決めゼリフに憧れていたエヘ幽霊。

「でも、これから私が毎回殺されてから物語が始まったり、逆転劇が始まるとか、痛いのは嫌ですよ。盛り上がりますけどね。エヘッ!」

 探求心の強いエヘ幽霊。

「この化け物め!」

 サタンはおみっちゃんをゾンビの様な化け物と恐怖する。

「違います! 私は化け物ではなく、おみっちゃんです! 夢は江戸で歌姫になることです! エヘッ!」

 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。

「「私はもう死んでいる。」か、その視点があったか。約8万字で思いついたのがもったいないね。最初から旅をやり直すのも嫌だし。う~ん。困ったね。」

 女将さんは銭勘定をしている。毎回適当におみっちゃんが歌って終わらせるだけで約8万字もくることができた。でも毎回おみっちゃんが殺されて、幽霊なので関係なくて事件を解決したり、敵を倒す方が盛り上がる。今更より良いプロットが創造される。惜しい。今度のドリーム・コンテストに起用しよう。

「また私が主役ですか? 照れますね。エヘッ!」

 次作も主役をもぎ取るエヘ幽霊。

「おまえたち? いったい何の話をしているんだ?」

 サタンは唖然としている。

「気にするな。どうせ8万字辺りまで読むような一般人はいない。人気作家でもないし、不正もしないから、どれだけ書いても、こんな8万字付近は誰も読まない。ということで、自由だ! ワッハッハー!」

 開き直る女将さん。

「それに「私はもう死んでいる。」や新しいプロットは、次のドリームコンテストが発表されて考え始めたら思い浮かんだだけだからな。それに書いていないと忘れるし。」

 その通り。

「こらー! おまえら真面目にやれよ! 悪の組織パパラッチの幹部が目の前にいるんだぞ! 必死に戦ってシャーロット王女を守れよ!」

 一生懸命に訴える悪の組織パパラッチの幹部サタン。

「そういうおまえも十分に約にやったぞ。」

「え?」

 褒められてキョトンとするサタン。

「おまえがおみっちゃんを殺してくれなかったら、新しい展開は創造されなかった。ありがとう! サンタさん!」

「だから私はサンタだ!」

 遂に言い間違えてしまうサタン。

「ほらな。やっぱりあなたはサンタさんだ。」

「しまった!?」

 うっかりサタン。

「ありがとうございます。私はサンタさんが大好きです。とても大きなクリスマスプレゼントをありがとうございます。エヘッ!」

 おみっちゃんもサタンに深々と頭を下げて感謝する。

「ど、どういたしまして。もう勝手にしてくれ!」

 サタンは匙を投げる。

「それではおみっちゃん。サンタさんにお礼に歌でも歌ってあげなさい。」

 女将さんがおみっちゃんに歌を歌うことを許可する。

「いいんですか? 本当にいいんですか?」

 許可制なので何度も聞き直すおみっちゃん。

「サンタさんに素敵な歌をお返ししようじゃないか!」

「はい! 女将さん!」

 いつものショートコント。

「やったー! 大好きな歌が歌える! エヘッ!」

 大喜びのエヘ幽霊。

「1番! おみっちゃん歌います! 曲は苦しみます・パーティー!」

 おみっちゃんが歌を歌い始める。

「耳栓用意!」

 定着した四文字熟語。女将さん、シャーロット、ダイアナは耳栓をする。

「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」

 おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。

「み、み、耳が潰れる!? なんだ!? この歌声は!? アイツには魔王が宿っているとでもいうのか!?」

 サタンにはおみっちゃんの歌声は魔王の呪われた歌声に聞こえる。

「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」

 おみっちゃんは気持ち良く歌を歌っている。

「こんなところで朽ち果てるなんて!? ギャアアアアアアー!」

 悪の組織パパラッチの幹部サタンは粉々に破壊された。

「ご清聴ありがとうございました! いや~! 気持ち良かった! エヘッ!」

 おみっちゃんは大好きな歌を終えてご満悦である。

「あれ? 誰もいない? 喉が渇いたから水でも飲みに行ったのかな? エヘッ!」

 細かいことは気にしないエヘ幽霊。

「さあ! おみっちゃん! 次の街へ行くよ!」

「は~い!」

 おみっちゃんの冒険はつづく。

 つづく。

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