第14話 エヘッ! 14
「やって来ました! エディンバラ!」
おみっちゃんたちは城郭都市エディンバラにやって来た。
「ここには・・・・・・憎い! 浮気者チャールズと売婦カミラがいる!」
情報収集係りのダイアナの様子が少し変だ。
「許さんぞ! 獣どもめ! おまえたちは人間の皮を被った悪魔だ!」
それもそのはず。チャールズはダイアナの元夫で、カミラは結婚中も浮気をしていた不倫相手なのだから。それがダイアナが暗殺されたら、ちゃっかりと後釜に収まり、今やイギリス皇室の王位継承権争い1位の男の妻である。カミラは栄華を極めていた。
「おみっちゃん! 歌を歌いなさい! こうなったら野外ライブよ!」
いつも野外ライブなんですけどね。
「いいんですか?」
前のめりで鼻息荒く確認するおみっちゃん。
「私が許します! 歯向かうものは冥界に連れて行きます!」
幽霊のダイアナは確実に燃え盛る怨霊になっていた。素晴らしい進化だ。
「いいんじゃないかな。歌を歌ったら。」
「そうそう。おばあ様が怖いから。」
女将さんとシャーロットはダイアナが怖いので白旗を上げていた。
「分かりました! 歌わせてもらいます! エヘッ!」
歌の許可が満場一致で出たので大喜びのエヘ幽霊。
「1番! おみっちゃん歌います! 曲は陥落、落城。」
渋いタイトル。まるで演歌。
「耳栓用意!」
女将さん、シャーロット、ダイアナが耳栓をする。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。
ゴゴゴゴゴゴゴー!
エディンバラ城が崩落していく。激しい音を出しながら崩れ去っていく。歴史の遺物など、形があるものなど、いつかは滅びるのだ。それがおみっちゃんの歌であったというだけ。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
そんなことはお構いなしに気持ち良く歌を歌い続けるおみっちゃん。
「ご清聴ありがとうございました。エヘッ!」
おみっちゃんは歌を歌い終えた。
「あれ? お城がなくなってる? 散歩にでも出かけたのかな? エヘッ!」
細かいことは気にしないエヘ幽霊。
「これでダイアナの気も済んだだろう。」
「安らかに眠ってね。おじい様、おばあ様。」
女将さんとシャーロットは亡くなった魂の成仏を祈る。
「勝った!」
ダイアナは勝利に酔いしれる。
「許さんぞ! おまえたち!」
そこに一人の女が現れる。
「なんだ!?」
不意を突かれるおみっちゃんたち。
「か、カミラ!?」
「おばあ様!?」
ダイアナとシャーロットは目を疑った。死んだと思われたカミラが現れたのだ。
「いや!? よく見ろ! 足が無い! あれは幽霊だ!」
女将さんは良い所に気がついた。
「なんですと!?」
幽霊カミラの登場に幽霊のおみっちゃんとダイアナも驚く。
「おまえたち! 何をやってくれたんだい!? おかげで私もチャールズも死んじゃったじゃないかい!」
確かにカミラとチャールズはおみっちゃんのデスボイスで殺されたらしい。
「そりゃそうだろう。おみっちゃんのデスボイスからは誰も逃げることはできないからね。」
女将さんも納得のおみっちゃんのデスボイスの殺傷力。
「だが私はただでは死なないよ! 死んでも生き抜いてやる! ケッケッケ!」
そして化けて出たのが幽霊カミラである。
「あれは幽霊ってレベルじゃないね。怨霊? 死霊? いいや、魑魅魍魎だね。」
恨みが高まってカミラは魑魅魍魎カミラとして現れた。ちなみに魑魅魍魎とは私利私欲のために悪だくみをする者らしい。まさにカミラ。
「おまえは!? シャーロット!?」
カミラはシャーロットの存在に気がついた。
「おばあ様。お久しぶりです。」
丁寧に挨拶をするシャーロット。
「そうか! おまえの仕業だね! 亡きダイアナの血を引き継ぐ者へ! 私に復讐のつもりかい!」
カミラもダイアナのことが大っ嫌いだった。
「そうよ! その通りよ!」
ここでダイアナが前に出る。
「ダイアナ!? なぜおまえがここに!?」
カミラはダイアナを見て驚く。
「確かにおまえは死んだはず!? なぜここにいる!?」
「地獄の淵から舞い戻ってきたわよ! あなたに恨みがあるのを思い出してね!」
ダイアナはカミラに宣戦布告する。
「やれるもんならやってみな! この魑魅魍魎となった私を倒せるもんなら倒してみな!」
強気のカミラ。
「分かった。おみっちゃん、歌を歌っていいよ。」
ダイアナはおみっちゃんにスルーパス。
「いいんですか? 今日二回目ですけど、本当に歌っていいんですか?」
前のめりからの口から涎を垂らしながらおみちゃんは確認する。
「いいわよ。思う存分歌っちゃってよ!」
ダイアナはおみっちゃんに歌を歌う許可を出す。
「やったー! 成仏するまで歌い続けますよ! エヘッ!」
おみっちゃんは歌が歌えるので大喜び。
「1番! おみっちゃん歌います! 曲は極楽浄土!」
おみっちゃんが歌を歌い始める。
「耳栓用意!」
女将さん、ダイアナ、シャーロットは耳栓をする。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
おみっちゃんが歌を歌い始める。
「なんだ!? この怪音波は!? 頭が割れる!? まさか!? この歌声には神の声が混じっているというのか!?」
魑魅魍魎のカミラはおみっちゃんの歌声に神を感じた。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
そんなことは気にしないで気持ち良く歌を歌い続けるおみっちゃん。
「私が、この私が浄化されるというのか!? この雑念の塊の私が!? ギャアアアアアアー!」
カミラはおみっちゃんの歌声に成仏させられた。
「魑魅魍魎が幽霊に成仏させられるって、滑稽だね。」
女将さんは呆れて言葉も出ない。
「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! エヘッ!」
おみっちゃんは大好きな歌を歌い終えてご満悦だった。
「あれ? 誰もいない? みんな、どら焼きでも食べに行ったのかな?」
細かいことは気にしないおみっちゃん。
「おみっちゃん。次の街へ行くよ。」
「は~い!」
おみっちゃんの冒険はつづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。