第13話 エヘッ! 13
「やって来ました! ブリストル!」
おみちゃんたちは湾岸都市ブリストルの街にやって来た。
「ここには私の息子のウイリアムと妻のキャサリンがいます。」
ダイアナのためになるプチ情報である。
「お父さんとお母さんに会えるのね! 嬉しい! アハッ!」
シャーロットは久しぶりにお父さんとお母さんに会えるので大喜びである。
「女将さん! お父さんとお母さんに会ってきていいですか?」
「私も息子に会いに行っていいですか?」
シャーロットとダイアナが外出をしたいと女将さんに申し出る。
「いいよ。言っといで。私も家族の再会を邪魔するほど野暮じゃないよ。」
女将さんは快く二人に外出許可を出す。
「やったー! 行ってきます!」
「行こう! シャーロット!」
「はい!」
シャーロットとダイアナは笑顔でウイリアムとキャサリンを探しに行った。
「おみっちゃん! 私たちは茶店でしっかり稼ぐんだよ!」
女将さんは親子の感動の再会に興味はなかった。
「はい! 女将さん! 今日のアルバイト代は3倍でお願いします!」
詰まらない知恵を持っているおみっちゃん。
「いい・・・・・・訳ない。なんで3倍になるんだよ?」
ひっかけにはひっかからない女将さん。
「バレたか。エヘッ!」
ピンチも笑って誤魔化すエヘ幽霊。
「いらっしゃいませ! ジャパニーズ・茶店! お茶とお団子はいかがですか?」
呼び込みを始めるおみっちゃん。
「お茶とお団子を下さい!」
あっという間にお客様の大行列。
「はい! ありがとうございます! 女将さん! お茶とお団子をお願いします!」
「あいよ!」
息がピッタリの女将さんとおみっちゃん。
「ここにシャーロットがいるのね。」
「そうだね。死んだと思った、うちの子がいるんだよ。」
そこに不審な二人組がやって来た。
「あの・・・・・・。」
男女の二人組はおみっちゃんに声をかけた。
「やめてください! 割り込みわ!」
おみっちゃんは二人組を割り込み犯だと思った。
「え?」
話も聞いてもらえないで悪人扱いされて戸惑う二人組。
「私たちは割り込みではなく、お尋ねしたいのですが・・・・・・。」
自分たちは割り込み犯ではないと主張する二人組。
「はいはい! 質問もしっかり列に並んで順番を待ってくださいね! まあ1時間は待つでしょうが。エヘッ!」
大人気の茶店は1時間以上もお客さんが待つ状態だった。
「仕方がない。最後尾に並ぶとするか。」
「そうですね。あなた。」
男女の二人組は行列の最後尾に並んだ。
「ごめん。おみっちゃん、ちょっとトイレに行ってくるよ。」
「は~い! ごゆっくり!」
運悪く女将さんはトイレに行った。
「お客様を待たせるの悪いわね。う~ん。」
おみっちゃんは考えた。
「そうだ! 私の美声でおもてなしすればいいんだわ! エヘッ!」
ナイスアイデアを思いついたエヘ幽霊。
「お客様方へ! 大変ご好評につき待ち時間が10時間を超しております。そこで私が1曲歌を歌いたいと思います!」
おみっちゃんは行列のお客さんに歌を歌う旨をアナウンスする。
「いいぞ! いいぞ! 歌え!」
好意的に受け止めるお客様たち。
「1番! おみっちゃん歌います! 曲は親子の感動の再会!」
おみっちゃんが歌を歌い始める。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。
「なんだ!? 大地が揺れている!?」
「頭が割れそうだ!? ギャアアアアアアー!?」
「アベシ!」
「ゲホッ!」
「シュビビーン!」
茶店の行列のお客様たちがおみっちゃんの歌を聞いたために体内爆発を起こしていく。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
そうとは知らないでおみっちゃんは気持ち良く歌を歌い続ける。
「せめて一目だけでも娘に会いたかった・・・・・・。ギャアアアアアアー!」
「あなた!? ああ~シャーロット! 我が愛する娘よ! ギャアアアアアアー!」
男女の二人組もおみっちゃんのデスボイスの前に粉々に崩れ去った。
「ご清聴ありがとうございました。ああ~気持ち良かった。エヘッ!」
大好きな歌を歌い終えてご満悦のエヘ幽霊。
「あれ? 誰もいない? みんな、お腹が空いて帰ったのかな? エヘッ!」
細かいことは気にしないエヘ幽霊。
「ただいま~!」
そこにシャーロットとダイアナが帰ってくる。
「おかえりなさい! お父さんとお母さんに会えましたか?」
おみっちゃんはシャーロットたちを気にしている。
「それがお父さんとお母さんは私を探しに街に出たらしいの。」
シャーロットとダイアナはウイリアムとキャサリンには会えなかった。
「そうか。残念ですね。」
同情するおみっちゃん。
「茶店には私のお父さんとお母さんぽい人は来なかった?」
シャーロットはおみっちゃんに尋ねてみた。
「来なかったですね。みんな、お茶とお団子と私の歌を聞きに来たお客さんだけです。」
正しくは茶店なのでお茶とお団子だけである。
「そう。仕方がないわね。」
落ち込むシャーロット。
「でも大丈夫ですよ! きっとロンドンにたどり着けばシャーロットのお父さんとお母さんに会えますよ。」
励ますおみっちゃん。
「ありがとう! おみっちゃん! 私、頑張る!」
シャーロットは元気を取り戻した。
「それほどでも! エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
(私は見てはならないものを見てしまったのでは!?)
その様子を遠くのトイレから見つめる女将さんがいた。
(もし、あの男女の二人組がシャーロットのお父さんとお母さんだった場合。二人を消滅させたのはおみっちゃんということになる!?)
そう。おみっちゃんの歌を聞いてシャーロットのお父さんとお母さんは誇りになったのだった。
(うん。何も見なかったことにしよう。)
女将さんは切り替えは早い。
「おお! おかえり! シャーロット! ダイアナ!」
女将さんが何事もなかったように現れる。
「あ、女将さん。ただ今戻りました。」
シャーロットは明るく女将さんを出迎える。
「ここにはパパラッチがやって来るかもしれないから、ズラかるよ!」
「はい!」
女将さんは疑惑の場所から逃げ出したかった。
「さあ! 冒険に出かけよう!」
「おお!」
おみっちゃんの冒険はつづく。
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