第12話 エヘッ! 12

「やって来ました! コヴェントリー!」

 おみっちゃんたちはコヴェントリーの街にやって来た。

「ここにはイギリスの王族はいないようです。」

 ダイアナがコヴェントリーの街を調べてきた。

「チャンス! これで久しぶりに茶店を開店することができるね! イヒッ!」

 守銭奴の女将さんは金儲けしか考えていない。

「さあ! おみっちゃん! 茶店の準備だ!」

「はい! 女将さん!」

 女将さんたちは茶店の開店準備を始める。

「ここは聖職者が多いの街ね。」

 シャーロットは坊さんや僧侶が多いことに気がついた。

「近くに修道院がありましたね。」

 ダイアナは街を回った時に修道院があったのを思い出した。

「いらっしゃいませ! ジャパニーズ・お茶とお団子ですよ!」

 いよいよ茶店の開店である。

「紅茶とスコーンもありますよ!」

 シャーロットも茶店を手伝う。

「完璧だ! おみっちゃんとシャーロットのカワイイ若い娘が2人いれば、茶店の繁盛は間違いなし! イッヒッヒー!」

 儲かると判断して笑いが止まらない女将さん。

「いらっしゃい! お茶とお団子ですね! ありがとうございます!」

 次々とお客さんがやって来て大繁盛の茶店。

「どうして私は皿洗い担当なの?」

 ダイアナの素朴な疑問。

「ここの責任者は誰だ? 誰の許可を得て店を出している?」

 そこに悪そうな僧侶兵たちがやって来た。

「この人です!」

 女将さんはおみっちゃんを指さす。

「ええー!? 私ですか!?」

 驚くおみっちゃん。

「こいつを連れていけ!」

「ははあ!」

 おみっちゃんを連れていく僧侶兵たち。

「私じゃありません!? 責任者はあの人です!」

 おみっちゃんは女将さんを指さす。

「ゴホン、ゴホン、こんな病人に何ができますでしょうかね。」

 女将さんはか弱い病人を装う。

「こい! やはり責任者はおまえだ!」

 僧侶兵たちはおみっちゃんを連行する。

「嫌!? やめて!? 私は無実だ!? だってこんなにカワイイんだもん! エヘッ!」

 捕まる時もエヘ幽霊。

「物騒な街だね。茶店を片付けるよ。」

 冷静な女将さん。

「女将さん!? おみっちゃんを助けないんですか?」

 おみっちゃんが心配そうなシャーロット。

「どうせ元気に笑顔で戻って来るよ。だっておみっちゃんだもの。」

 女将さんはおみっちゃんのことを信じていた。

「あ、そっか。」

 納得するシャーロット。

「それより修道院が心配だ。神への信仰心なんておみっちゃんの歌声の前では何の役にも立たないだろうからね。」

 おみっちゃんよりも修道院の人々を心配する女将さんであった。

「嫌! 私の出番って荒い物と片付けだけですか!?」

 ダイアナの苦情は誰も聞いていない。


「おまえが東洋の魔女か?」

 修道院ではおみっちゃんは異端児の魔女扱いされ十字架に鎖で吊るされていた。

「いいえ! 違います! 私の名前はおみっちゃん! 夢は江戸で歌姫になることです!」

 どんな状況でも、いつも明るく笑顔で元気に前向きなおみっちゃん。

「こいつは何を言っているんだ? 言葉が通じないのか? やはり魔女だ。」

 おみっちゃんにまた新しい称号が加わった。

「私の名前は領主のレオフリック。隣が妻のゴダイヴァだ。」

 領主のレオフリックと奥さんのゴダイヴァ夫人がいた。

「私の街で無許可で茶店を出していた罰におまえを邪神様の捧げものにしてくれる。」

 おみっちゃんは邪神の生贄にされるらしい。

「邪神!? まさかパパラッチ!?」

 邪神と聞いたら邪神パパラッチが思い浮かぶおみっちゃん。

「ぬぬぬっ!? お主、邪神様を知っているとは・・・・・・おまえも邪神教の者か?」

 レオフリックはおみっちゃんの宗教を尋ねてみた。

「はい! そうなんです! 何を隠そう私は悪の組織パパラッチの幹部の侍忍者のおみっちゃんです! エヘッ!」

 嘘を吐く時も可愛いがるエヘ幽霊。

「おお! 邪教様の使い魔の方でしたか! とんだ御無礼を! 直ぐに鎖を外しなさい!」

「はい!」

 領主のレオフリックは僧侶兵たちにジャンヌダルク状態のおみっちゃんの鎖を解くように命令する。

「大丈夫です。こんな鎖、外そうと思えばいつでも外せますから。エヘッ!」

 おみっちゃんは幽霊なので鎖など通り抜けれる。若しくは忍法で鎖から脱出できる。

「おお! さすが邪教様のお使いの方だ! 素晴らしい! さあ! ごちそうをお食べ下さい! 金銀財宝は全て邪神パパラッチ様に捧げます!」

 レオフリックはおみっちゃんの手品ショーに感激する。

「悪の組織パパラッチとして生きるのもありかも。エヘッ!」

 少し心が悪に傾くエヘ幽霊。

「そういえば私も日本では大妖怪の一人なんだよね。私も立派な邪神のような気もする。」

 おみっちゃんは自分自身のことを初めて考える。

「使い魔のおみっちゃん。どうか邪神様に合わせてください。お願い致します。」

 レオフリックは邪神パパラッチに会ってみたかった。

(どうしよう? 私も邪神パパラッチなんかに会ったことがないんだよね。)

 リクエストに困ってしまうおみっちゃん。

(でも、こいつらも邪神パパラッチには会ったことがないだろうから、邪神ポイ奴らに出てきてもらおう。エヘッ!)

 気転の利くエヘ幽霊。

「いいでしょう! 邪神様を降臨させましょう! しかも3体! エヘ幽霊。」

 大きく発言するエヘ幽霊。

「おお! ありがとうございます!」

 レオフリックは大喜び。

「いきますよ! 忍法! 口寄せの術! いでよ! 私のお友達たち!」

 おみっちゃんは忍法でお友達を呼び寄せる。

「こ、ここはどこだ!?」

 鬼の頭領の酒呑童子。

「あら? おみっちゃん。」

 九尾の狐の玉藻の前。 

「・・・・・・。」

 無口な鬼神の大嶽丸。

「おお! これが邪神様か! 素晴らしい! アーメン!」

 レオフリックたち修道士たちは呼び出された大妖怪たちを拝み倒す。

「おい! エヘ幽霊! これはどういうことだ?」

 いきなり呼び出されて酒呑童子は怒っている。

「この人達が邪神を見たいっていうから、私の知っている一番強いお友達であるみなさんを呼び出したんです。エヘッ!」

 おみっちゃんは大妖怪をお友達だと思っている。

「バカ言うな! 一番邪神なのは・・・・・・おまえだ!」

 酒呑童子はおみっちゃんの極度の音痴でデスボイスで死にかけたことがある。

「それほどでも。エヘッ!」

 攻められても笑って誤魔化すエヘ幽霊。

「それにいきなり口寄せの術で呼び出されても入浴中やトイレ中、着替えている時だったら困るから、事前にアポイントメントを取ってから呼び出してくれって言ってるだろ。」

 玉藻の前も怒っている。

「ごめんなさい。でも私が困った時は助けてくれるって約束したから。」

「え?」

(それはおまえのクソ音痴な歌を止めるために仕方が無く約束しただけだよ!)

 玉藻の前もおみっちゃんは極度の音痴でデスボイスに殺されかかったことがある。

「まあ、仕方がないね。」

 玉藻の前もおみっちゃんの歌の前では無力に等しかった。

「・・・・・・。」

 大嶽丸も何か言っている。

「え? なになに? 私のことが好きだからいつでも呼んでいいよ。ありがとう。タケちゃん。エヘッ!」

 大嶽丸はフレンドリーな扱いを受ける。

「まさか!? 鬼神もこの小娘のデスボイスで消されるというのか!?」

 戦慄を覚える酒呑童子。

「私たち日本の3大妖怪がおみっちゃんの歌声に負けるなんて。」

 ショックで肩を落とす玉藻の前。

「・・・・・・・。」

 大嶽丸もお手上げである。

「おお! 邪神様! お会いできて私たちは幸せです! どうか! この世界を滅ぼしてください! 生きていても楽しいことなんかありません!」

 領主のレオフリックは世界の消滅を祈っていた。

「面倒臭い。」

「あの手でいこう。」

「・・・・・・。」

 三大妖怪たちは目配せして同意した。

「いいだろう。世界を滅ぼしてやろう。」

 酒呑童子は人間の願いを叶えるという。

「おお! さすが邪神様だ! ありがとうございます!」

 邪神教を信じている人々は感謝した。

「その前に使い魔が歌を歌うから聞いてやっておくれ。」

 玉藻の前はおみっちゃんが歌を歌うという。

「え? 歌っていいんですか?」

 確認するおみっちゃん。

「いいんだよ。好きなだけ歌いな。」

 玉藻の前はおみっちゃんに歌を歌うことを許可する。

「やったー! 歌わせてもらいます! エヘッ!」

 大好きな歌が歌えるので大喜びのエヘ幽霊。

「さらばだ!」

「ちゃんと口寄せの術封じの結界を張っておくんだよ!」

「・・・・・・!」

 日本の三大妖怪たちは自ら次元の穴を開きイギリスから去って行った。

「1番! おみっちゃん歌います! 曲はお友達っていいな!」

 おみっちゃんが歌を歌い出す。

「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」

 おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。

「おお! 邪教様の祝福だ!」

 領主のレオフリックたちはおみっちゃんの歌を聞いて笑顔で埃や粉の様に消えていった。

「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」

 そんなことはお構いなしで気持ちよく歌い続けるおみっちゃん。

ピキーン! ガキン! ガタガタガタガタ!

 修道院は跡形もなく崩れ去った。

「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! エヘッ!」

 大好きな歌を歌い終えた。

「あれ? 誰もいない? ご飯の時間だから帰ったのかな?」

 おみっちゃんは何が起こったのかは知らない。

「私も帰ろっと。」

 おみっちゃんも修道院跡から去っていく。


「女将さん! たたいま戻りました!」

 おみっちゃんは女将さんたちの元に帰ってきた。

「ほらね。何事もなかったように戻って来るだろ。」

 女将さんは未来予知ができる。

「そうですね。きっと修道院も崩壊しましたし、中の人々も全滅したんでしょうね。」

 シャーロットも何が起こったのか事態を把握していた。

「哀れな魂たちよ。安らかに眠れ。アーメン。ソーメン。ラーメン。」

 ダイアナも修道院の人々に手を合わせ神に祈る。

「どうしたんですか?」

 おみっちゃんには悪気はない。

「おみっちゃん。仕事をサボったんだから給料は払わないからね。」

 お金にストイックな女将さん。

「ええー!? それだけはご勘弁ください! 江戸に行く旅費が貯まりませんよ!?」

 頭の弱いおみっちゃんは銭勘定ができない。

「可愛いから許してください! エヘッ!」

 エヘ幽霊の通った後には誰も人はいなくなる。そしてエヘ幽霊は伝説になる。

 つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る