第11話 エヘッ! 11

「やって来ました! カーディフ!」

 おみっちゃんたちはウェールズ最大の都市カーディフにやって来た。

「これでアン王女、エドワード王子、アンドルー王子はパパラッチとは関係がないのが分かったわね。」

 ちなみにエドワードとアンドルーの一族は亡き者となった。

「ということは黒の組織パパラッチと繋がっているのは、私を含めたおじい様のチャールズ一族ということになるのね。」

 残されたエリザベス女王の子供はチャールズだけである。

「チャールズは元は私の旦那です。」

 ダイアナのプチ情報。

「まさか!? 身内の犯行とは!? 日本もイギリスもどこに行っても怖いんだね。お金と権力が絡むと。」

 女将さんはできれば関わり合いたくはない。

「でも、チャールズ一派の誰が黒の組織パパラッチと繋がっているの!?」

 謎は深まるばかり。

「やっぱりカミラよ! カミラに違いない! あの女狐め! 絶対に許さないわよ!」

 ダイアナは結婚中も旦那のチャールズにカミラと浮気されまくったので恨みが絶えない。

「一先ず下半身ゲバゲバ女のカミラは置いといて。」

 処理されるカミラ。

「おじいちゃんとダイアナおばあ様の間に私のお父さんのウイリアムと父の弟のヘンリーおじさんがいます。」

 チャールズとダイアナの間には息子が2人いる。ウイリアムとヘンリーである。

「おお! 最愛の私の息子たちよ! 立派になったもんね! お母さんは嬉しいわよ! アハッ!」 

 ダイアナは成長した息子たちに感激する。

「おじい様のチャールズは王位継承権1位。お父さんのウイリアムは2位。お母さんのキャサリンには王位継承権の権利はない。私の兄のジョージと弟のルイは殺されたから、私は王位継承権は第3位ね。」

 シャーロットの王位継承権は第3位である。

「そして第4位がヘンリーおじさんっと。」

 シャーロットの父の弟のヘンリー王子は第4位である。

「でもヘンリーおじさんはメーガンという悪い女に誑かされてイギリス王室を出たから王位継承権は放棄したはずよね。」

 ヘンリーおじさんは女にだらしなかった。

「でもヘンリーおじさんとメーガンおばさんの間にアーチ―という男の子がいるから、この子も王位継承権を持っているとしたら第5位よ。」

 緊迫するイギリスの王位継承権争い。

「エドワード家とアンドルー家は滅んだから、生き残っているアンおばあ様が王位継承権は6位ね。」

 骨肉の王位継承権争いは身内の人数を減らしていく。

「そして、ここカーディフにはヘンリーおじさんの家族がいるわ。」

 カーディフにヘンリーの家族がいる。

「それでは白黒つけるために行ってみよう!」

「おお!」

 おみっちゃんたちはヘンリー王子を探すことにした。


「やって来ました! ヘンリーおじさんの家!」

 おみっちゃんたちはヘンリー王子の家にやって来た。

「ピンポーン! ヘンリーおじさん! いらっしゃいますか? おお! シャーロット! よく来たね! 上がって行きなさい! ありがとうございます! さあ! 入りましょう!」

 他人の家に勝手に入るのが得意になったシャーロット王女。

「だから不法侵入だって。イギリス皇室の将来が心配だよ。」

 女将さんは未来のイギリスの治安は悪くなるだろうと想像した。

「さすが私の弟子だ。エヘッ!」

 いつの間にかシャーロットはおみっちゃんの弟子になっていた。

「ちょっと、おみっちゃん。カワイイ孫娘に悪いことを教えないでよ。」

 ダイアナおばあ様から苦情が入る。

「変な言い方をしないでよ! ダイアナ! あなたも私の弟子なんだからね!」

 そしてダイアナもいつの間にかおみっちゃんの弟子扱いされていた。

「え!? いつの間に!?」

 当の本人のダイアナも知らなかった。

「女将さんも私の弟子になりませんか?」

「結構だよ。それに私があんたに剣術と忍術を教えた師匠なんだからね。」

 女将さんはおみっちゃんの師匠であった。

「こんなに王位継承権争いが忙しいと茶店で商売をしている暇がないね。」

 女将さんの茶店での売り上げはほぼなかった。

「それでもおみっちゃんのデスボイスで皆殺しだから、遺品や死んだ王族の家の中を探せば貴重なお宝がザックザクと手に入るからね。楽な商売だよ。イヒッ!」

 完全に指名手配の逃走犯と化しているおみっちゃんたち。

「おお! シャーロット! シャーロットじゃないか!」

 家の中からヘンリーが出てくる。

「騒いでたら見つかっちゃいましたね。エヘッ!」

 いつでも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。

「良かった。これで不法侵入ではなくなる。私のカワイイ孫娘が悪いことをしませんように。」

 神に祈るダイアナ。

「シャーロット! 無事だったんだね! 良かった! 心配したんだよ!」

 ヘンリー王子は心からシャーロットを心配していた。 

「ありがとう! ヘンリーおじ様! 私は簡単には死にませんよ! アハッ!」

 シャーロットも笑顔でヘンリーに答える。

「さあ! お友達も中に入ってゆっくりしてくれたまえ!」

「失礼します!」

 おみっちゃんたちはヘンリーの家に招かれて入っていく。


「ようこそ! シャーロット王女!」

 ヘンリーの妻のメーガンと息子のアーチ―がシャーロットたちを出迎える。

「紅茶をどうぞ。」

 メーガンはシャーロットにお茶を出してくれる。

「ど、ど、毒は入っていないでしょうね?」

 何度も毒殺されそうになったので警戒するシャーロット。

「酷い!? あんまりだわ!?」

 シャーロットの言葉にショックを受けるメーガン。

「毒は入っているけれど!」

「入っとるんかい!?」

 やはりシャーロットは命を狙われる運命である。

「でもね。王位継承権争いなんてくだらないわ。私はそんなものに興味はないし、カワイイ息子のアーチ―が元気で成長してくれたらいいの! 私は他に何も望まないわ!」

 メーガンもやはり一人の母親であった。

「でも、アーチ―にはイギリス国王になってほしいのよね?」

「その通り! 私の息子が次期イギリス国王になるのよ! オッホッホー!」

 メーガンは息子のアーチ―をイギリス国王にしたかった。

「この人、心の声が漏れるけど大丈夫なの?」

「悪気はないんだ。悪気は。」

 ヘンリーがメーガンをフォロする。

「どうして、こんな女に引っかかったんだか。我が息子ながら情けない。とほほほ・・・・・・。」

 ダイアナは息子の女癖の悪さを悔やんだ。

「あの失礼な人は誰ですか?」

 メーガンはダイアナに怒っていた。

「あんたのお姑さんだよ。」

 もしダイアナが生きていればメーガンの義理の母になる。


「ヘンリーおじさん。」

「なんだい? シャーロット。」

「おじさんは悪の組織パパラッチとつながりがあるの?」

 シャーロットはヘンリーに単刀直入に聞いてみた。

「いいや。私はパパラッチとは関係がない。それはそうだろう。パパラッチは私の愛する母を殺した奴らだ。そんな奴らと手を組むはずがない。」

 ヘンリーの母親ダイアナは悪の組織パパラッチに殺されたのだから。

「それもそうね。」

 納得するシャーロット。

「じゃあパパラッチと結託しているのはメーガンってことで。」

 シャーロットはメーガンがパパラッチと関係があると決めつける。

「失礼ね! どうして旦那の母親を殺したパパラッチなんかと関係がある訳ないでしょ!」

 メーガンはパパラッチとの関係を否定した。

「じゃあ!? いったい誰がパパラッチと繋がっているんだ!?」

 おみっちゃんたちは振出しに戻ってしまう。

「はい! は~い! 僕がパパラッチと繋がっているんだよ! キャハッ!」

 喜んでアーチが手を上げる。

「はいはい。子供が嘘をついてはいけません。」

 おみっちゃんたちはアーチ―の言葉を子供の戯言だと思い聞き流した。

「子供だと思ってバカにするなよ!」

 アーチーから悍ましい気が発せられる。

「これは邪気!?」

 シャーロットはアーチ―から発せられる禍々しい気を感じる。

「ふっふっふ。子供だと思って油断しましたね。僕は黒の組織パパラッチの幹部ナイトメアです。」

 なんとアーチーは悪の組織パパラッチの幹部の一人だった。

「どうして子供のあなたがパパラッチなんかになるのよ?」

 シャーロットの素朴な疑問である。

「僕はイギリスの国王になりたいのです。僕は平和主義者のお父さんとお母さんとは違います。欲と野心の塊の僕は喜んで魂を邪神パパラッチ様に売り渡しました。」

 恐るべし! 純粋な子供アーチ―の野望。

「なんて恐ろしいの!? 今時の子供は!?」

 シャーロットはアーチ―に恐怖を感じた。

「私の子供の頃なんて田んぼで案山子に歌を歌って遊んでましたよ!?」

 おみっちゃんも邪悪な子供のアーチ―にある意味で恐怖した。

「邪神パパラッチ!? そんな邪神を聞いたことがないんだけどね?」

 お金の神の女将さんは邪神パパラッチの存在を知らなかった。

「私も神になれますかね?」

 おみっちゃんも神に憧れた。

「既にあんたはある意味で神だよ。」

 女将さんは大妖怪のおみっちゃんを一種の神ともいえると認める。

「やったー! 私は歌神になります! エヘッ!」

 大喜びのエヘ幽霊。

「いいや。あんたも邪神だよ。」

 女将さんは冷たく言い放つ。

「ええー!? なんでですか!? 私、こんなに可愛いのに! エヘッ!」

 おみっちゃんは自称カワイイ幽霊である。

「やめなさい! アーチ―! 普通の良い子に戻りなさい!」

 シャーロットはお姉さんとしてアーチ―に立ち塞がる。

「それは残念。既にお父さんとお母さんも邪神パパラッチ様から頂いた僕のナイトメアの力で悪夢の中を彷徨う言いなり人形です。」

 アーチ―は邪神パパラッチから悪夢のナイトメアの力を得たという。

「や、やめろ・・・・・・。」

「助けて・・・・・・。」

 ヘンリーとメーガンはアーチ―の操り人形にされていた。

「シャーロットお姉ちゃん。お姉ちゃんも僕の操り人形にしてあげるよ。いけ! ナイトメア!」

 アーチ―はシャーロットもナイトメアの力で操ろうとしていた。

「ヒヒーン!」

 黒いお馬さんが現れてシャーロットに襲い掛かる。

「キャアアアアアア!?」

 悲鳴をあげるシャーロット。

「危ない! おみっちゃん! 歌を歌っていいよ!」

 女将さんの困った時はおみっちゃんに歌わせる作戦である。

「いいんですか? 本当にいいんですか?」

 鬼気迫る展開でも何度も聞き直し確認する笑顔のおみっちゃん。

「いいから早く歌いなよ! バイト代を少なくするよ!」

 女将さんの必殺技のパワハラである。

「それだけはご勘弁を! 歌いますから許してください! エヘッ!」

 おみっちゃんは賃金カットに弱かった。正に茶店で働く弱者のアルバイトである。

「耳栓用意!」

 女将さん、シャーロット、ダイアナは急いで耳栓をする。

「はい! 1番! おみっちゃん歌います! 曲は良い子は眠る! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」

 おみっちゃんが歌い出した。おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。

「ウワアアアアア!? なんだ!? この酷い歌声は!?」

 アーチ―が苦しみだした。

「ヒヒーン!? ・・・・・・。」

 悪夢のナイトメアもおみっちゃんの歌を聞かされて苦しみながら消えていった。

「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」

 気持ち良く歌を歌い続けるおみっちゃん。

「僕はイギリス国王になるんだ!? ギャアアアアアアー!」

 アーチ―は断末魔の叫び声をあげ滅んでいった。

「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった!」

 歌を歌い終えたおみっちゃんはご満悦だった。

「ありがとうございました。おかげで成仏できます。」

「息子を倒してくれてありがとうございました。あの世で家族三人で幸せに暮らします。」

 おみっちゃんの目の前にヘンリーとメーガンが現れておみっちゃんに感謝を述べる。

「それはどういたしまして。お役に立てて何よりです。エヘッ!」

 よく分かっていなけれども感謝されてご満悦なエヘ幽霊。

「さようなら。」

「また逢う日まで。」

「バイバイ。」

 ヘンリー家族は天に召されていった。

「歌って、素晴らしいな。エヘッ!」

 自画自賛のエヘ幽霊。

「そうだね。歌に罪はないよ。」

 女将さんは罪があるのはおみっちゃんだと言いたかった。

「さあ、次の街へ急ごうか。」

「おお!」

 おみっちゃんたちの冒険はつづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る