07 教えてクリス先生・ダンジョンの仕組み編
ダンジョン、迷宮。
私が読んだ本では様々な形があり、入るたびに地形が変わるダンジョンや、奥にボスがいるダンジョンもあるらしい。
ボスを倒したら消えるダンジョンや時間とともに消えるダンジョンもあし普通の洞窟として残るものなど一定の法則が無い。
あるとすれば、人の好奇心を誘うように出来ている事。
神官のミラが私にダンジョンの事を補足してくれる。
「だから調査団が向かう場合もある。あまりに危険な場合は封鎖もありうるが、冒険者は宝が欲しい。封鎖された所で裏から入るんじゃけどな。あったあったこれだろう。クルっ」
「了解した」
人間が屈めば通れる穴があり、そこから生暖かい風が吹き出している。
クルはしゃがむと杖を取り出して魔法を打った。
小さい爆発とともに人が一人入れるほどの大きさになる。
「すごい」
クルが照れると、ジャンとミラがクルの頭を叩いて先にすすむ。
仲いいわよねぇ。
おじさん同士のじゃれあいは見ていてちょっと、キモいけど。
私が最後に入ると、洞窟内は天井が光っており明るかった。
「明るい……」
「不思議だろ? ダンジョンの中にはこうやって人に優しく出来てる。
まぁそのぶん、そういうダンジョンは強敵が多い。宝の一個でも見つけてさっさと帰るか」
「っても、洞窟内に宝箱なんてあるわけが……」
私は途中で言葉をとめる。
開けてください。といわんばかりに大きな木箱が置いてあるからだ。
ジャンはなれた手つきで箱を調べると、鍵穴に針金をいれる。
パカっとあけると、小さい小瓶を手にしていた。
「ねーちゃん、口が開いているけどどうした?」
「いや、普通に箱があって驚いたのよ……」
「ねーちゃんダンジョン初心者だろ? さっきも言ったけどな人間を誘い込むように出来てるんだ、なぜか宝箱もある」
ミラが咳払いをして注目を集めた。
「ジャン、彼女は冒険者に成り立てでしょうに。補足しましょう。
この箱の中身は過去に死んだ冒険者の物という噂もあります、かの有名な青騎士物語。あの話では三十年前に行方不明になった父親の剣を息子が宝箱から見つけた。と書されていますな」
「え、じゃぁそのポーション? も誰かの持ち物?」
「じゃねえか? 流石に成分は調べないと飲めねえけど洗浄されていたりもするからなぁ」
一つ賢くなった。
「さて、次にすすもう。調査団を鉢合わせると面倒だ。
剣の一本、もしくは宝石でもあればなぁ。
何心配するな、ねーちゃんの借金はすぐに返すからな」
ジャンを先頭に私達はダンジョン内部を歩き続けた。
途中でいくつかの宝箱をあけ貴金属を手に入れる。
暫くすると四角い部屋に入った。
出入り口が四方向にあり、次の部屋も同じように四角で、同じように四方向に出入り口がある。
一部屋目と違うのは、部屋の中にゴブリンが沸いている。
「自然発生したわけじゃなさそうね」
「お、部屋のすみに宝があるぜ」
私以外の三人がゴブリンを処理して箱を開けた。
中には皮袋が入っていて旧金貨が十枚入っていた。
「ひゅー。これだったら換金しないですむな。ほれ、ねーちゃん持ってきな、利子付だ」
「どうもっ……で、帰るわけ?」
「宝石などを換金しても四十枚ぐらいか、帰ろう」
「え?」
本当に帰るとは思わなかった。
あまりに驚いていると、ジャックがあごを触って笑い出す。
「いいか、ねーちゃん。冒険者に大事なのは死なない事だ。それに俺の感が長くいたら危ないって言っている」
「そう? 私はワクワクしかないんだけど」
ゾクっとした悪寒が私を襲う。
ダンジョンの影から何かか来る。
「まにあっ――」
――てっ!
私はジャンの鎧を引っ張って後ろに投げ飛ばす。
背後で悲鳴が聞こえたと同時に、ジャンがいた場所に大きな斧が振り下ろされた。
巨大な赤色をした腕が、その斧を持ち上げると、のっそりと影から顔をだす。
「いてえええ、おいねーちゃんって。サイクロプス!」
ジャンが後ろで叫ぶと同時に
斧を持ち上げて振り下ろす。
その単調な攻撃をかわすと、ゾクゾクしてきた。
「ねーちゃん、に、にげるぞ!」
「嬢ちゃん、迷宮のボスだっワシらが食い止めるからにげっ」
「いま防御魔法を唱える、ジャン前へ」
外野のミラクルジャンが煩い。
「静かにするかして、邪魔ですっ!」
思わず貴族の時の言葉がでる。
「おいっ!ねーちゃ…………」
私の体に重たい衝撃がくわわると、視界が一気に飛ぶ。
背中に激しい痛みがくると、サイクロプスが小さくなっていく。
壁を破壊して吹き飛ばされている。
「いったああああっっっ」
受身を取ってゴロゴロと転がり起き上がる。
部屋の中には骨が散乱していてクッション代わりになったのを確認した。
「面白い…………」
これよこれ!
黙って貴族していたら味わえないこの興奮!
私は腰の剣を抜いて一気に跳躍した。
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