08 クリスの気持ちは不完全燃焼である
私の長剣がサイクロプスを捕らえる、赤い腕でガードされると岩を叩いているような感触が伝わってくる。
着地とともに周りを見ると、ミラクルジャンのおっさ……おじさん三人は既にいない。
うん。勝てないなら逃げる、動物でもわかる事だ。
ましてや、命をかけるほど重要な戦いじゃない。
「悪いけどっ! 攻撃してくる以上っ死んでもらうわよっ!」
私は剣を構えなおすと大きな巨体へと向かい、その柔らかそうな目玉へと剣をぶち込んだ。暴れる手を回避して最後に蹴りを入れる。
大きな巨体のサイクロプスは仰向けに倒れると動かなくなった。
動かなくなった魔物から剣を引き抜く。
暫くすると魔物が影のように消えていく。
「は?」
慌てて振り返ると、前の部屋のゴブリンの死体も消えている。
「え。いやちょっと……? っ!!」
突然の殺気から場所を離れると、元気なサイクロプスが斧を振り下ろしていた。
背後からも殺気を感じて、振り返るとこっちにもいた。
「ちょっとっ! 二対一とか卑怯とおもいわないのっ!?」
地面に刺さった斧を拾おうとした腕に蹴りをいれてジャンプする。
目玉に剣をさしてすぐに引き抜く、そして残った一匹も同じように倒した。
落ちた斧を拾ってみると、とんでもなく重い。
そして、私が手にした斧以外がチリのように消えていった。
「面白い。これがダンジョンって奴なのね。で…………」
どうするか。
ミラクルジャンの三人ズは姿見えない。
貸したお金は返してもらった。
怪我は特にしてない、われながら頑丈すぎる。
だから豪傑って言われたんだけど…………。
「じゃなくてー…………私としては先に進みたいんだけど」
「グオオオオオ」
さっきより一回り大きいサイクロプスに話しかけると、叫び声を上げるだけだ。
倒した魔物は無くなっいて、近くに沸いていた。
ご丁寧に顔部分に鉄火面をつけており目玉が狙えない。
深呼吸をして三度目の構えをとる。
「クリス・コーネリア! 参りますっ!」
私が一歩前に足を踏み出そうとすると、爆音と共にサイクロプスが吹っ飛んだ。
それはもう綺麗に上半身がない。
あっけにとられていくなか、部屋の中に十数人の男性がパタパタと走っていく。
全員紺色の制服をきていてどこかの部隊に見えた。
「よう、ねーちゃん無事だったかっ!」
聞き覚えある声に振り向くと、ジャンが安心したような顔で私を見ている。
その背後には長身の男性と、その横では表情が読み取れない私に切りかかってきた黒髪の男性がいた。
「やぁやぁやぁ、また会いましたね。ええっとクリスさんでしたかな」
「ええっと……ジョンと、誰さん?」
「これは失礼、前回は移動中とはいえ秘密だったので名をいえませんでしたが、帝国調査団の副隊長をしていますミッケルと申します」
「どうも……」
「本来は隊長が挨拶するべきでしょうが、今はいませんので。ねぇジョン」
ミッケルさんは、横にいるジョンの頭を何度も叩くと嬉しそうな顔をしはじめる。
ミラとクルも無事だったようで、他の人と一緒になにやら作業をしているのが見えた。
「ってか逃げたんじゃないの? 普通そうするけど」
「普通わな、助けられるようなら助ける、それも冒険者だ。
「…………そうね」
あれで四体目なのは、黙っておこう。
「我々としても
ミッケルさんの手配で、私は別の調査団の人に部屋の隅に移動させられた。
他の人たちはダンジョンを調べてよくわからない事をしている。
紅茶を渡され一口飲むも心が落ち着かない。
これから命を掛けた戦いが始まると胸躍らせたのに。
つまんない。
つまんない。つまんない。つまんない。
つまんない。つまんない。つまんない。
つまんない。つまんない。つまんない。
つまんない。つまんない。つまんない。
つまんない。つまんない。つまんない。
「おいっ!」
「はっ! な、なんでしょうか?」
気づけば目の前に黒髪のジョンがいた。
「何か呪いか?」
「何が?」
「…………自覚が無いなら別にいい」
変な男だ。
「先行部隊からの話ではこの奥は行き止まりらしいな、ボスらしいボスも見受けられない」
「というと?」
「黙って帰るんだな」
むかつくー! この全部知ってますよ? みたいな顔。
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