第二話 欠陥品の人助け

「あの、彼女達が嫌がっているので、どいてくれませんか?」


 カケルは、男たちに問いかける。  


 その声は、とても落ち着き、冷えた声だった。


 男たちはカケルを見る。


「どけだと?」


 男は高圧的にカケルに話す。


「はい。どいてください」


 カケルは、さっきと同じように冷たい声で話す。


「そうか。それは俺たちが『特異体質者』であることを知って言っているのか?」


 男たちは、指の関節を鳴らしたり、中指を前後に曲げたりと、意味不明な威嚇をする。


 だが、この現代社会特異体質を持っているだけで、周りと態度を変えられることも少なくない。


 それで、男たちは自分の特異体質を見せつけて、

 カケルをビビらせようとしているのだ。


 だが、


「そんなの、どうでもいいので。どいてください。」


 カケルは、変わらず同じよう、男たちにどくように言う。

 そんなカケルを見て男たちは、


「そうか、……そこまで言うのなら」


「見せてやるよ、これが特異体質者の拳だぁ!!」


 自分をバカにされたと思い、指を逆に曲げることができる男が、カケルに殴りかかる。


「あ、危ない!!」


 言い寄られていた、姉である女子が声を上げ、それに合わせて妹であろう女子も顔を上げる。


「オラァぁ!!」


 男の拳がカケルの顔にめがけて飛ぶ。


 男たちはニヤリと笑う。

 姉妹は、今にも泣きそうな表情になる。


 だがカケルは、冷静に一言。


「『制限解除リミット・オフ』」


 そう、呟いたカケルの顔に拳が、


「なっ!?」


 入らなかった。


 カケルは男の拳を、手で、いや指で止めたのだ。


「そんな、バカな!?」


 驚いているスキに、男の手首を取る。


「あんた、指を逆に曲げれるんだっけ?」


「な!、おい離……!!」


 男はカケルの、手を引き離そうとするが、逆にカケルに手首を強力な力で握られる。


 男は一体どこにそんな力があるのかと、驚きの顔でカケルを見る。


「さて、試してみてもいいか?」


「な、何を」


 カケルは、男の言葉を無視して男の指を掴む。


 そして中指を曲げる。


「お、本当に曲がってる」


「当然だろ、分かったら離せよ」


 男はカケルから離れようとするが、さらに強い力で手首を掴まれる。


「まぁ、待て。……これ、他の指はどうなんだ?」



「ま、曲がらない。曲がるのは中指だけだ」


 男は慌てたように言う。


「そうか…」


「!分かったなら、離してくれよ」


 どうやら、カケルが諦めたと思ったらしく、男は手を話すように指示する。


「そうだな。でも、試さないと本当かどうかわからないよな」


 カケルは、そう言いながら男の人指し指を握り、逆方向に曲げる。


「へ?……っっああァァ!!」 


 すると、男が叫びだすが、カケルは気に留めず続ける。


「あ、あぁぁ。折れる!折れるからぁー」


 そんな言葉を聞き、流石にまずいと思ったのか


「おっと、これ以上やると本当に折れるな」


 カケルは、手を離す。


「だから!そう言ってるだろ。あぁ、痛っぁ」


 中指を曲げれる男は、膝を付き自分の指を擦る。


 すると、


「て、てめぇ。良くもやってくだなぁ!」


 次は、指の関節がなる男が殴りかかってくる。


「おっと」


 カケルは、それを手のひらで受け止める。


「あんたは、指の関節が鳴るんだっけ?」


 カケルが問いかけると、男は、


「そうだ、よっ!」


 返答しながらも、もう片方の拳をカケルに打つ。

 だが、


「なに!?」


 それも、手のひらで受け止められてしまった。


「じゃあ、実際に鳴らしてみるか」


 カケルはそう言うと、受け止めた男の拳を少しずつ力を込めて握る。


 すると、゛ミシミシ゛、と音がする。


「ちょ、やめ。それ俺の特異体質の音じゃな…」


 カケルは、男の声など聞こえていないかのように、更に力を込める。


「ほ、本当にやめ…やめろー!!」


 男が痛みに耐えきれず叫んだので、カケルは手を離してやる。


「ふぅ〜、あんまりいい音じゃなかったな」


 カケルは、男たちに顔を向ける。


「「ひっ!!」」


 男たちは、怯えたようにカケルの顔を見る。


「さて、まだやるか?」


 カケルが無表情で問いかけると、


「「す、すいませんでしたぁぁー」」


 男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


「さて、『制限起動リミット・オン』」


 カケルは呟き、その場を立ち去ろうとする。


「あ、あのっ」


「ん?」


 カケルは後ろから声をかけられ振り向く。


「助けていただきありがとうございました」


 姉と思われる、ショートカットの青髪の少女にお礼を言われる。

 続いて、


「あ、ありがとうございました」


 姉とよく顔立ちが似た、妹であろうロングの青髪の少女にお礼を言われる。


 だがカケルは、お礼を言われたことよりその少女達の顔がよく似ていることに驚いている。


(双子だったのか)


「あの、どうかされました?」 


 姉である少女に聞かれると、カケルはここから立ち去ろうとする。


「いな、何でもない。それじゃあ、これで……あ」


 カケルが歩こうとすると、身体がよろけ


「「あっ!!」」


 ゛バタン゛


 カケルは、その場に倒れた。




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