カツオのこと
カツオは小学生のときに、友達にからかわれて、カッとなって、教室の窓をあけて、花びんを思いっきり放り投げました。もし校庭にだれかがいて、それが当たったりなんかしていたら、カツオはもう、立ち直ることはできなくなっていたかもしれません。
カツオは、先生や両親からこっぴどくおこられて、泣いて、泣いて、泣きやんだらかんがえて、もう二度と、こんなことはしないでおこうと決めました。
それからというもの、カツオは、暴力なんてふるわないのはもちろん、ひとに悪口をいったりなんかせず、優しく、こころ温かいひとになっていきました。
でもカツオは、いいことをしても、こんな風に言われることがあるのです。
「窓から花びんを投げたやつに、言われたくない」
けんかをしている同級生を止めようとして、「ケガをしたら危ないから、落ちつこう」と言うと、「お前だって、花びんを投げて、ひとにケガをさせようとしたじゃないか」と、せめられるのです。なんなら、けんかをしていたはずのふたりが、カツオに悪口をいうために、けんかをやめることもありました。
そう言われることがふえるたび、カツオはもう、身の回りでたいへんなことが起こっても、だれかを助けようとすることをためらうようになりました。自分にそんなことをする「しかく」はないのだと思うようになったのです。
――――――
この文章をよんで、だれかが、「自分はぜったいにまちがいを起こさないでおこう」と思ったのだとしたら、わたしはざんねんです。
ひとは、気をつけていても、まちがいを起こすものですから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます