第十一話 教室での一幕

 現在は四限の現代文の授業中、俺は頬杖をついてボーッと黒板を眺めていた。先生がチョークで黒板に書き込む小気味いい音をBGMに、これからのことについて考える。


 とりあえず場所はあの塔の屋上がいいだろうな、それから指輪も神竜から取れた宝玉を使うとして。宝玉を加工してもらうのはあいつにでも頼めばいいし。


 俺はチラリと隣を見る。そこには紅葉が必死になって黒板を写している姿があった。


 うーん、場所とか指輪よりも大切なことがあるよなぁ。


 俺ははぁっとため息を吐く。そう、カインが実は俺だったとバラすか、またはクレハが紅葉であることを知っていたとバラすか問題だ。


 これに関してはほんとにどうするかだよなぁ。


 俺はバラさなかった場合とバラした場合について脳内で再生してみる。



バラした場合...


「なぁ、俺と結婚してくれませんか?それと、実は俺の中身は仁なんだ」



 いや、普通にキモい。キモすぎて想像した自分でも吐き気がする。


「バラさないのが無難かなぁ」


「何がバラさないのよ?」


 やべっ!?声出てた?


 俺は声のした方向を向く。そこには少し呆れたような表情をした紅葉がいた。


「あぁー、いや。なんでもない。独り言だから」


「はぁ?なんで授業中に独り言言ってるの?」


「少し考え事をしていて...」


「そういうのは人にバレないようにやりなさいよ。変に気を使うでしょ?」


「紅葉って気使えたの?」


 紅葉の眉間に皺が寄る。俺はビクッと肩を震わせる。まるで蛇に睨まれた蛙のようだ。


「なに?喧嘩売ってるの?上等じゃん。表出ろや」


「ごめん、冗談だから。いや、マジで。紅葉と戦ったら二度と表に出られない体になるから」


 俺はペコペコとなんども頭を下げる。マジでこえぇぇぇぇ...。あの顔は小さい子には絶対見せられないな。


 紅葉は舌打ちしてからまた黒板の板書をノートに写すという作業を再開した。


 とりあえず俺もやることはやるか。


 それから俺もノートにペンを走らせ始めた。


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