逆だったかもしれねェ
これは、僕が中学3年生の頃の話である。
当時僕は思春期の真っ只中でありながら、高校受験を控え、悶々としながらも日々勉強をこなしていた。
英語が苦手だった僕は、母親に知り合いの家庭教師をあてがわれ、毎週日曜日、夕方になると家庭教師宅に自転車で通っていた。(こちらが出向くスタイルであった)
僕は英語が嫌いであったが、先生はわりと綺麗な女性であったので、天秤に掛けた結果、毎週まじめに通学していた。
そんなある日曜日の昼下がり、僕はひょんなことから2冊のエッチ本を手に入れ、有頂天になっていた。
ぼく(これは一生の宝になるに違いない…。)
しかし、2時間後別人になった僕は、今度は本の処分に頭を悩ませていた。
ぼく(こんなもんいらねぇよ…。親に見つかったらやばい…。)
今夜のうちに処分しなければならない。
それが僕の出した結論であった。
— チャンスはある…。
家庭教師に向かう道中、どこかに捨てればいい。川なんかがいいだろう。
ちょうど少し寄り道すれば、手頃な川がある。そこにしよう。
僕はそう結論付け、普段は教科書とノート、筆箱だけを入れているリュックに、2冊のエッチ本を忍ばせ、その日の授業に向かった。
— しかし予想外のアクシデントがあった。まだ夏の頃だったため、向かう道中はまだ明るかったのである。
ぼく(これでは人目につくな…。)
そう思った僕は、作戦を変更し、暗くなった帰り道にエッチ本を捨てることにした。
行きの道中は気が気ではなかった。急に警察に呼び止められ、リュックの中身を確認されるのではないだろうか?
無事に家庭教師宅に着いた後も、気が気ではなかった。先生が急にリュックの中身を開けようとするんじゃないか?僕は教科書と取り違えてエッチ本を出してしまわないだろうか?
そんな不安も杞憂に終わり、授業後に帰りの自転車に乗り込むと、僕はなんだか気が大きくなっていた。
ぼく(…わざわざ川なんかに捨てに行く必要あるのか?)
別に本に名前が書いてあるわけでもないし、その辺に落ちていれば未来ある若者が拾うだろう。
すっかり暗くなっていたこともあり、リュックから手探りでエッチ本を2冊取り出すと、これ見よがしに先生の家の前の小道に、並べた。
ぼく「これでよし。」
僕は行きよりも軽くなったリュックを背負うと、身も心も軽く帰路を急いだ。
これで健全なリュックに元通りだ。参考書にノート、それと筆箱。今なら警察に呼び止められようが怖くはない。
自宅につき、自転車を停め、ただいまの挨拶もそこそこに玄関をくぐり、自室に戻ると、リュックをガバッと開いた。
エッチ本2冊と筆箱しか入ってなかった。
逆だったかもしれねェ 完
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