森ガールの生態

 これは、僕が大学1年生の頃の話である。

 

 当時僕は流行りの森ガール女子とお付き合いをしていた。仮に名前をさゆとする。

 

 さゆはサークルで知り合った女の子で、服で言うとモスモスとか着てガチガチに森ガールの格好をしていた。(そういえば森ガール最近みないですね。森に帰ったのでしょうか?)

 

 さゆはおしとやかな女の子で、デートも自由ヶ丘とか吉祥寺とかそんなところによく行っていた気がする。

 

 デートは重ねたものの、さゆは奥ゆかしいタイプであり、半年くらいプラトニックなお付き合いが続いていた。

 

 そんな中、とあるクリスマスイブの日に泊まりでお台場に行くことになり、僕は心の中でその日を勝負の日に決めていた。

 

(俺はイブにさゆともっと深い関係になるのだ…。)

 

 気合を入れて当時のアルバイト代からは奮発したホテルを予約し、当日を迎えた。

 

 日中のデートが終わるとホテルに向かい、フロントで受付を済ませて入室する。

 

 内心ドキマギしていたが、僕はシラーッとした感じでホテルに入り、いい部屋なんじゃない?とかやっていた。

 

 そして2人でベッドに入り、ムードが高まってきて僕が「さぁいくぞ!」と気合を入れた時にさゆが言った。

 

 さゆ「まって!」

 

 — 静止するぼく。

 

 ぼく「どうしたの?」

 

 — まさか、ここまでに何か不手際があったのか?僕は脳みそをフル回転させていた。

 

 さゆ「いや嫌とかじゃないんだけど…今日は無理なの…。」

 

 ぼく「どうして?こわい?」

 

 さゆ「いや、そうじゃなくて…。」

 

 あらゆる可能性を考えて僕は黙った。何を言うべきか…。しかし、沈黙を破ったのはさゆだった。

 

 さゆ「…処理ができてなくて…。その…。」

 

 — 毛か?

 

 しかし「毛?」と聞くのはあまりにデリカシーがない気がした。

 

 ぼく「えっと…どこの??」

 

 さゆは僕をじっと見たあと、恥ずかしそうに背中を指差すと言った。

 

 さゆ「わたし…背中濃いんだよね」

 

 僕はその時身体に電流が走った。別にそういうフェチがあったわけではない。

 

 僕は特別歴史に明るいわけではないが、歴史の偉人の伝記が好きで、小さい頃から読み漁っていた。そしてあるフラッシュバックが起こったのだ。

 

 — これは…!!

 

 そう。坂本龍馬である。

 

 坂本龍馬の「龍馬」という名前は、龍馬が生まれた時、背中に龍のたてがみのように毛が生えていたことから名付けられたという。(諸説あります。)

 

 歴史の偉人と一緒じゃないか。言いたい…。俺はこの発見を伝えたい…。

 

 20秒の熟考の後に僕は言った。

 

 ぼく「— 坂本龍馬?」

 

 さゆ「しね!!!」

 

 森ガールは歴史の偉人に詳しい。

 

 森ガールの生態 完

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