キャンプ
これは、僕が大学2年生の頃の話である。
ある夏の日、高校時代仲の良かったグループで久々に集まり、キャンプをすることになった。
キャンプといっても何のことはない。ぼくたちの家の裏すぐに手頃なキャンプ場があり、そこでバンガローを借りて飲み明かそうというのだ。
大学生らしく、お酒が飲めればよく、キャンプらしいことをやろうとかそんなことは一切考えていなかった。
前日に台風が直撃し、あわや中止になるかと思われたが無事に快晴となり、ぼくたちは車に乗り込みキャンプ場に向かった。
形ばかりのBBQもほどほどに、すぐにバンガローで飲み始めた僕たちは、夕方頃にはもうベロベロで全員フルチンというスタイルだった。
ゲームをしたり、奇声をあげたりしていると、友人の1人が「おしっこしてくる」といってバンガローの外に消えた。
すると、1分も経たずにバンガローに駆け込んできてこう言った。
「け、警察がきた…!!」
僕たちは焦った。駆け込んできた友人もフルチンであり、僕たちもフルチンである。
誰かに迷惑をかけた記憶はないが、もしかしたら誰かに通報されたのかも知れない。
取り敢えずグループの中では1番まとも(にみえる)飯塚という男に素早くズボンを履かせ、それ以外の者は部屋の隅に固まった。
飯塚を外に出し、警察の対応を窓の隅からそっと見ていると、2〜3分経ち、飯塚は部屋に戻ってきた。
ぼく「ど、どうだった…?」
飯塚「全然大丈夫だったよ!」
どうやら通報と思ったのは早とちりで、警察の方は昨日の台風で増水した川で泳がないよう、注意喚起に回っていたのだった。
みんなの緊張も緩み、暫くした後、雄叫びと共にまた酒盛りが始まった。
そして、結局一度もパンツを履くことのないまま、朝方に床に突っ伏して眠った。
— 朝、目が覚めるとバンガロー内は凄まじい散らかりぶりで、1番に目覚めた僕は頭が痛くなった。
みんなを起こしながらゴミ片付けをしていると、1,2,3,4,5…。1人足りないのである。
僕は気付いた。(こじまがいない。)
目覚めた1人に聞くと、朝方にトイレに行くといってバンガローから出ていった以降は姿を見ていないという。
勝手なことをしてと腹が立ったが、ふいに昨日のことがフラッシュバックして、少しドキリとした。
(警察「増水している川で泳がないようにね…。」)
もしかして…。
ぼく「あいつ、酔っ払って川に落ちたんじゃねーかな…?」
最初はまさかと言っていた友達も徐々に酔いも覚めて、近くの捜索に行くことにした。
— 5分…10分…見つからない。
僕たちは一度バンガローに集合し、顔を見合わせた。
「警察に相談した方がいいんじゃないか?」
「でも、まだ決まったわけじゃないし…。」
あと5分待って戻らなかったら警察に相談しよう…。
そう話していると勢いよくバタン!とドアが開き、ドアにもたれかかるように何者かが部屋に倒れ込んできた。
「「こじま!!」」
こじまである。みんなが駆け寄ると、酒の酔いか肩で呼吸しているが、無事だった。
ぼく「川に落ちたかと思って焦った…。どこにいたんだよ。」
声を掛けながら、少し冷静になってこじまの様子を見ると、擦り傷だらけでお尻にも血が滲んでいる。どこかで打ったのだろう。
— こんなに無力な人間の姿をみることもそうないよな…。
そう思うとだんだん笑えてきた。フルチンだし。
僕が傷だらけの裸体の男をみてニヤニヤしていると、こじまが口を開いた!
飯塚「こじまが!こじまがなんか言うよ!」
— グ…ググッ…ァ゛…。
こじま「崖から…落ちたくせぇ…。」
絶対崖から落ちたんだと思うよ。
キャンプ 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます