こじまという男

これは、僕が高校生の頃の話である。

 

 よくある話で、僕にも仲良し5人組みたいなよくつるむグループがあった。学内ヒエラルキーでいうと中の中くらいのしょうもない連中である。

 

 その中に顔はいいが、特にしょうもないこじまという男がいた。

 

 こじまはとにかく物ごとを盛りまくる癖があった。口ぐせは「世界で一番」と「最強」「無限」である。

 

 やれ「世界汗っかきランキング顔部門1位」とか「指スマ世界最強」とか言っていた。

 

 そんなこじまがある日、僕たちに言った。

 

 こじま「昨日3食抜いた状態で、不二家のケーキバイキングに行ったんだけどマジで無限にケーキ食ったわ。100コは食ったけどまだいけた。」

 

 イエローカードである。

 

 いやいやこじま、100コはうそだろうと。せいぜい食えて20コくらいじゃないのかと、僕たちはそう言った。

 

 こじま「100は正直盛った。でも30は確実にいったわ。」

 

 まだあやしい。健全な男子高校生であっても、ケーキ30コが意外とキツいことはみんな知っていた。

 

 こじまの性格からしても、実際のところせいぜい10コ程度食べたところを、大げさに言っているだけだと思った。もしかしたら10コすらあやしいかも知れない。

 

 ぼく「いやこじま。今だったら怒んないから、今回だけはマジで教えて。みんな今回だけはマジだぞ。本当は何コ食べたんだ?」

 

 えぇ…。マジで??

 

 こじまは少し考えて言った。

 

 こじま「2コ」

 

 みんな「2個?!!」

 

 こじまという男 完

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