第3話:メンヘラ
反省の色を示すかと思いきや、堕落嫁の態度は変わらなかった。ていうか、逆ギレされてしまった。
「うわぁーキモっ」
「はぁ?」
「うざ……メンヘラじゃん。うわぁ……男のメンヘラとかキモッ。マジでキモい……本当キモい。最悪じゃん」
メンヘラ呼ばわりされるのは初めての経験だった。
普通に考えて誰もが離婚を宣言するような状況だと思うのだが。それにも関わらず、コイツは何を言ってるんだか。
「あのさー。軽々しく離婚しようとか言わないでくれる?」
「軽々しくじゃない。俺は本気だっての」
「ちょっと嫌なことがあったら離婚するとかダルイ。本当にダルイんだけど。授業放棄して職員室に戻る教師レベルに面倒なんだけど」
この女……マジでしばき倒したい。調子に乗りすぎだ。
こちら側は必死に言ってるのに、メンヘラだのなんだのと言い出して、聞く耳を全く持たないのだ。これでは俺が悪者扱いじゃないか。
「あのさーお前いいかげんにしろよ」
「それはこっちのセリフなんだけど!?」
「さっきから話を聞いてれば、自分勝手な言い分ばっかりだ」
「はぁ? どっちがよ。離婚しようとか言い出しのはそっちじゃない。てか、どうして離婚するとか突然言い出したわけ?」
女ってのは占いとかその類にすぐにハマっちまう。自分がこれだと思ったものを信じてしまうのだ。それに準じるように、この面倒な女もユルユルな頭の中で必死に考え、そしてパァッと神様がお告げしてくれたのだろうか。
奴は表情を強張らせて、ゆっくりと口を開くのであった。
「女ができたんだね……新しい女ができたんだ。だからもうわたしが要らなくなったから別れようとか言い出したんだ。うわぁー最低じゃん。浮気男じゃん。マジで最低最悪なんだけど」
勝手に一人で妄想を膨らませないでくれるかな?
「前からずっと考えてんだよ。もうお前とは限界だって」
「言い訳は要らないから。離婚したらすぐに他の女と付き合うんでしょ。うわあーもう最悪最低じゃん」
馬鹿女にも伝わるように簡単な言葉で言ってみたものの、コイツの理解力は猿以下だった。少しでも彼女に知性があると思った俺が馬鹿だったとしか言いようがない。
「ずっとわたしは裏切られてたってことでしょ? 今まで妻として頑張ってきてたのに、夫は浮気してたとか……あははは」
「あのさー俺は浮気してないって」
「もう白状してよ!! もううるさい!! 浮気してないとか言っても無駄だから。もうバレてるんだから」
「なら探偵でも雇えよ。本当にやってないんだからさ」
「何、強気で出てるの? 逆ギレですか? 普通ここは素直にごめんなさいするべきところでしょ。浮気がバレたからってさ、急に怒らないでくれるかなー?」
だめだ……こりゃ。話にならん。
もう終わりだな、コイツとは。俺、頑張ったよな。
今までこの堕落嫁の面倒をよく見たものだ。
もうゴールしてもいいよね……??
「おい、これが何か分かるか?」
「うっ。ど、どうして……そ、そんなものを持ってるの?」
離婚届を見せられたら、焦っても仕方がないだろうな。
本当は俺だってこんな手段は使いたくなかったさ。それでももう堪忍袋の尾が切れた。俺はもう無理だと悟ったのだ。
「決まってんだろ。お前みたいなゴミ女と別れるためだ」
「……………………み、み、認めない……わたしは絶対に」
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