第8話

「は、はやく!逃げちゃうじゃない!おねがい!絶対につかまえて!」


「わ、わかった」


被害者の指さす方に確かに逃亡者が走っているのを確認できた、慌てて後を追うのだが...


え?被害者?あの人が被害者で、今逃げてるのが加害者でいいんだよな?


山崎はあたりまえの事を自分に言い聞かせた。


「は、はやく!」


そう言って山崎を急かす男は中肉中背で髭は伸ばし放題、しかも上下色違いの汚れたジャージを着ていて、まるで...ホームレスの様ないでたちなのだ。


しかも、さきほどから、女性の言葉を使っているので、そちらの方も色違いなのかも知れない...。


いや、別にホームレスで、そちらの方面の方だからどうというわけではないが...同じ市民ではあるし...。


しかし、逃げてる方の女性の方が、遠目にも身なりが良いのがわかる。


紺のタイトなスーツに身を包んでいる出で立ちとそのスーツに見劣りしないプロポーションは、どこかの社長秘書を連想させた。


女性が策のある公園を横断して逃げたので仕方なく自転車から降りて追いかけた。


「ま、まちなさい!」


しかし

一応大声で言ってみるのだが、いまいち釈然としないのか自慢の瞬足も本気を出せずにいた。

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