第6話
「なんなんだよ!」
いい加減腹がたってきたみすずは言葉が乱暴になっていた。
「なんなんだよこれは!」
「ちょっと」
「なんだよ!ちょっとちょっととか言うのかよ!双子かよ!いや双子のほうがよかったよ!ふざけるなよ!」
あまりの剣幕にゆり子は黙るしかなかった。
「なんだよその顔は?キョトンかよ!キョトンとしてれば良いのかよ!飲み込み悪すぎだろ!」
尚も状況が掴めないらしい母の前に壁に掛かってる鏡を外してドンとテーブルの上に置いた。
「な...。」
声にならない母
「な?」
嘲笑するかの様に繰り返す娘
「これは...みすずよね?」
じゃなかったらなんだというんだ...
いや、ある意味本来のみすずではないから、みすずとは言えないか......
「夢...よね?」
「夢に決まってるだろ!」
みすずは大声で言ったが...
どんどん自信がなくなっていく自分をどうしようもなかった。
なんで、覚めないんだ...この夢は。
だんだん怒りで誤魔化していた不安が心に忍び寄ってくる...。
なんだよ...このままなのか?
まさか...このまま覚めない気なのか?
この悪夢は!
「あなた...みすずなのね?大丈夫!大丈夫だから!」
「なにが?」
答えながらみすずは泣いていた...。
「なにが...どう...大丈夫なのか...」
ゆり子は駆け寄って崩れそうなわが子を抱きとめた...。
「大丈夫だから!」
母も泣いていた...。
なにがなにやらわからない状況でパニックに陥らなかったのは、やはり、母性の強さだったのかも知れない。
「大丈夫。」
もしも見知らぬ人がたまたまこの様子を見ていたら
朝の日差しの中で
セーラー服の女の子の胸に頭を埋めて泣いている母親らしき女性という光景を
どう自分の中で解釈するのだろうか。
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