第5話 

「うっ...」

そのセーラー服の子はゆっくりと起きあがろうとした。


「...みすず」


みすずは名前を呼ばれて返事をしたほうが良いかどうか迷ったが、一応、返事をする事にした。


「は...はい?」


緊張してイントネーションがめちゃくちゃになってしまった、いや、そんなことより...なんだ今の声は?私の声なのか?まるで...母の声にそっくり...。


突っ伏した女の子はゆっくりとこちらを振り返ると、驚いたように目を見開いた...。


私の顔がそこにあった。


え?...双子なんていたっけ?


あーそういう設定の夢なのか...はいはい、夢の中決定だなこりゃ...しかし、妙にリアルだし、なかなか覚めない夢だな...なんていうか......悪夢だ。


夢の中のもうひとりの私はなおも何か言いたげにこちらを見て口をパクパクと開けたり閉じたりしている。


まるで魚みたい......。


魚は喋った。


「なんで私がいるの?」


それはこっちが聞きたいよ?


「みすずは?」


いや、みすずですけど


「あなた......だれ?」


え?みすずに見えないっての?え?


そう言われて初めて自分の身なりがすこしおかしい事に気がついた。


え?この、地味な服装は、母の普段着てる服にそっくり...


まさか・・・まさか・・・


食卓にあるはずの鏡を探しまくった。


「あっ...」


鏡の中に映っている姿は、悪い予感を的中させていた...。


そこには、驚いた母の顔が映っていた。

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