将棋 ●

『パチリ』

昼休憩に部長と将棋をさした。

部長は手にした駒が滑らない様に、次の手を考える間中ロジンバッグを右手でポンポンさせていた。

『パチリ』

『パチリ』

『パチリ』

………

「おっと、こりゃ少し考えさせてくれよ」

部長はそう言うと、しばらくロジンバッグを弄びながら眉間にシワを寄せた。

見る見るうちに、部長は白い煙幕に包まれた。

「よし王手だ」

煙幕の中から部長の真っ白な右手がヌッと現れた。

『パチリ』

その駒は真っ白で、書かれている文字も読み取れなかった。

「…参りました」

そう言って、私は頭を下げた。

白将棋の異名を持つ部長の無敗記録は続くのだった。

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