「おや、何だいこの印は？」

私は家にある食料品に、どれも『八マーク認証』と書かれている事に気が付いた。

「やだ、あなた今更何言ってるのよ。コマーシャルで、しきりにやってるじゃない」

呆れ顔の妻は続けた。

「これは食料品の賞味期限が近付くにつれて、パッケージに八の字が現れる仕組みになってるのよ。パッと見て、どれから消費すれば良いか分かるから、食品ロスの観点から評価されてるの」

「それはエコだな。知らなかった」

「最近うちは『八マーク認証』の物しか買ってないわ」

私達は、戸棚から一つひとつ食料品を手に取りながら『八マーク認証』を確認した。

「あぁ、これは八の字が出てないから、まだまだ賞味期限は先だな」

「ほらあなた、これは薄っすら八の字が出てるでしょ。賞味期限は来月よ」

「なるほどなぁ」

「きゃあ！」

妻が叫んだ。

戸棚の奥から取り出したカップラーメンには、パッケージの下半分に深い八の字が刻まれていた。

見ると、賞味期限は今日だった。

「…おい、もしかしてこの八の字は、ほうれい線じゃないのか」

「…そうね、あなた」

「…不気味だな」

「…不気味ね、あなた」

私達は、深いほうれい線の刻まれたカップラーメンを前に立ち尽くすしかなかった。

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