幽霊
「見てしまったんだ、会長の幽霊を」
専務は眉間にシワを寄せ、小声で続けた。
「会長の幽霊は氷山の一角だ。幽霊は一人いたら百人いるからな」
そう言うと、専務は事務所に大量の線香を仕掛けた。
濛々と煙が立ち上り、我々は逃げる様に事務所を出た。
しばらくは事務所に入れないので、皆所在なく廊下の窓から外を眺めた。
空は晴れ渡り、そこには“青雲”と書かれた連凧が綺麗に上がっていた。
それは何か良い事が起こりそうな、気持ちの良い朝の出来事だった。
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