腹
「部長、最近貫禄が出ましたね。恰幅が良くなったんじゃないですか?」
私の言葉を聞いて、部長はため息混じりに言った。
「ああ、専務のせいで太ったんだよ」
「飲みですか?」
「いや、そうじゃない。専務が風上で玉手箱を開けたんだ」
風下にいた部長は、副流煙的に玉手箱の煙を浴びて少しだけ歳をとったらしいのだ。
「覚えておけよ。歳をとるというのは、往々にして太るという事なんだ」
部長は自らの腹をさすりながら言った。
私は笑って見せたが、それが分からない程、私ももう若くはないのだ。
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