不器用な私 ●

残業で疲れた私はパソコンから顔を上げると、大きく息を吐きボキボキッと首を回した。

「おっ、もうこんな時間か。確かに疲れたな」

そう言って、課長も首を回した。

しかし、課長の首から出た音はキュッキュッだった。

「…今のは聞かなかった事にしてくれ」

課長は柔和な表情をしていたが、目の奥は笑っていなかった。

やはり、課長が幼少期に親に捨てられ、その後鳴子のコケシに育てられたという噂は本当だったのだ。

しかし、課長の過去に何があろうと、私は課長を信じてついて行くと決めているのだ。

「へ?課長はん、何の事でござんしょう」

私はしっかりと、とぼけて見せた。

課長はうつむいた。

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