隣の家の亭主
隣の家の亭主が塀から顔を出して言った。
「最近、居心地が悪いと思いませんか?」
そう言われてみれば、確かに最近マイホームに帰っても借家の様に感じたし、自分で稼いだ金で飯を食っても、他人の奢りの様な引け目を感じた。
隣の家の亭主は続けた。
「私、見ちゃったんですよ。三日前の晩に向かいの家の親父が酔っ払って町内の電信柱に抱き付きながら帰って行くのを」
「つまり…どういう事でしょう?」
私はお隣さんの話を理解出来ずにいた。
「つまりね、マーキングですよ。今やこの町内は、あの親父の縄張りとなったのです」
「まさか…」
「しかし、悪くないものですよ。…見飽きた妻が、今や他人妻ですから」
隣の家の亭主は下品に笑った。
私は妻を思い浮かべ、他人の様なのは今に始まった事ではないと考えていた。
そして空はとにかく澄み渡っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。