切れ者

「よぅ、久しぶり、こっち来いよ」

「変わらないわね」

「ホント、懐かしいよな」

新規訪問先の会社に入ると、私は初対面の人達に取り囲まれ、そして馴れ馴れしく話し掛けられた。

しかし不思議と嫌な感じもしない。

さすが株式会社同窓会だ。社員教育が徹底している。

「覚えてるか、文房具屋の親父」

意を決して、私がそう投げ掛けると、一人の小柄な男が即答した。

「そりゃあ、学校中で知らない奴はいないぜ。あれ覚えてるか?三角定規事件」

この切れ者が、この会社の責任者に違いなかった。

「…あぁ、勿論」

そう言って笑いながら、今回の商談は厳しくなりそうだと私は思った。

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