飛行機

出張で飛行機に乗っていると、機体がグラグラと大きく揺れ始めた。

流石にこれは危険だなと思った瞬間、上から酸素マスクが垂れ落ちてきた。

慌てて酸素マスクを掴んだつもりが、よく見るとそれは見覚えのある私鉄の吊り革だった。

電車通勤の私にとって、吊り革さえあれば飛行機の揺れなど問題ではないのだ。

私は立ち上がって吊り革を握り、揺れを上下左右にいなしながら、吊り革と一緒に垂れ落ちて来た週刊誌の中吊り広告を、平日の朝の様に死んだ目をして眺めた。

他の乗客も皆同じだった。

私達はアクビが出そうな程、冷静だった。

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