第50話

 ファーレは俺の存在に対して怒りの感情と共に、恐れの感情も生まれていた。本来スキルでいくら攻撃されようと自分達神を傷つけることは可能だが、殺すことは絶対に不可能なように設定さるている。


それなのに目の前の男の攻撃でこの短時間に2度も殺されてしまったのだ!神には自動復活の力が備わってるが、勿論無限ではない。年に5度まで、つまりあと3度殺されれば本当に死んでしまうのだ!



「何故神を殺せるほどの魔法を使うことができるの?あんたは一体なんなのよ?」



「知ってるだろ?俺はただの転生者だ!そして、さっきの魔法は全て俺が作り出した魔法だ!!お前ら神が作った設定なんて一切関係ない!それが答えだ!!」



「魔法を作った?あんたは神にでもなるつもり?」



「はあ?俺はお前らみたいな糞な存在と一緒の存在には死んでもなりたくないね!俺は人間として平穏な普通の生活を送りたかっただけだ!!それをことごとく邪魔してくれたのはお前ら2人だろーが!!」



「ふーん、それで私たちを殺しに来たと…そんなに上手くいくかしらね?」



「お前はバカか?既に2回も殺されたくせに何上から目線で言ってるんだ!?さっさともう1回死んどけ!!」




 俺は再びファーレの目の前にショート転移し、ファーレの心臓へ目掛け手刀を突き刺した。さらにそのまま体内の水分を無理矢理吸収し、ファーレをミイラのようにしてやった。



「性格に見あった姿になったな!これなら燃えやすい筈だ!」



俺は再び地獄の業火てファーレを燃やし尽くしてやった。



「バカな!俺たちが避けることもできないなんて…お前の強さは一体何なのだ!?」



ベトログが驚愕な顔を浮かべている。



「簡単な話だ!この世界では魔法の力はイメージの力だ!!俺たちはラノベ好きだ!そのイメージをどこまでも膨らませられる存在なんだ!お前たちは面白半分で俺らをおもちゃにした!俺らが成長すれば、自分等を殺せる力を持つなんて考えもせずにな!!」



俺は再びショート転移でベトログの目の前に飛び、回復阻害効果を付与したエクスカリバーで細切れに切り裂き、燃やした尽くした。



さらに再び復活したばかりのファーレに向けてメノウ戦で使った小型太陽を放った。ファーレは小型太陽に燃やされながら、空高くに吹き飛ばされ、大爆発を起こした。


死んでるかは分からないが、かなりの苦痛を与えたのは間違いないだろう。




 同じ神界ではゼウスローゼン様とトリスが神の力を取り戻す為に動いていた。懐かしい我が家の中は恐ろしいほど散らかっていた。



「あの邪神どもは…まあいい!早くポータルマリアの心臓を探さねば!!コカトリスはそちらを探してくれ!」



「ゼウスローゼン様、ポータルマリアの心臓とは赤い巨大な宝石でよいのですよね??あの邪神たちが持ってるのではないのですか?」



「ポータルマリアの心臓はこの屋敷から絶対に持ち出せぬよう作ったのだ。必ずこの屋敷のどこかに隠してる筈だ!」



「ゼウスローゼン様、もしかしてあれでは?」



「あの邪神どもは…まさかごみの中に埋もれさせているとは!!だが、これで私はポータルマリアの神の権限を取り戻せる!」



ポータルマリアの心臓にはパスワードがあり、現在のパスワードはあの邪神たちが設定したものだろうからゼウスローゼンにも分からないが、実はゼウスローゼンはこんなこともあろうかとマスターパスワードというものを別に用意していたのだ。それを使いゼウスローゼンはポータルマリアの神の権限を取り戻した。


そして地上の様子を見たゼウスローゼンが見たものは、世界中の魔物が王都へ集結している姿だった。




 この時地上では再び大混乱が起きていた。


異変は実は俺たちがメノウと戦い出した頃から始まっていた。俺の持つ全干渉無効のスキルの効果で、地上の様子を見ていたファーレとベトログには地上の様子を見ることが叶わなくなってしまったのだ。



『何故地上の様子を見ることができないんだ?あそこで何が起きてる?』



『ベトログ、落ち着いて。きっとあそこにいる誰かが全干渉無効のスキルを持ってるのよ!だから私たちでも見れなくなったんだと思うわ。』



『ちっ、嫌なスキルを取ってやがる!俺たちの楽しみが減るじゃないか!!』



『じゃー嫌がらせでもしてみる?』



『嫌がらせ?』



『地上の全魔物たちの生息地をあの王都に変えてしまいましょう!そうしたら魔物たちは生息地へ移動しようとあそこに集結するわ!!』



『そうしたらあの地は地獄に変わるだろうな!だが、その様子が見れないのは戴けないぞ!?』



『それも考えてるわ!魔物があそこに集結するまで1日から5日ってとこね。1日もあれば、その中の魔物の何体かを私たちの目、耳にして様子を見ることができる筈よ!』



『それはいい!じゃー早速取りかかろう!!』



 これにより俺たちが神界に行ってまもなく、王都はあらゆる魔物たちが押し寄せる地獄の地と化していた。それを守る城壁も先の戦いで崩れ落ち、次々と現れる魔物と真っ正面から討伐する以外に方法がなかった。


それでも転生者たちの活躍でその圧倒的な数の暴力にも負けず、魔物たちを倒し続けていた。



「雑魚ばかりだが、キリがないな!」



「やっぱりあの邪神たち録でもねーな!!」



「これ多分世界中の魔物をここに集めてるんじゃないかしら?」



「もしそうだとしたら、まだまだこれは始まったばかりってことか…」



「うー、眠る暇あるかな?」



「ねーかもな!」



「「えー!?」」



「その時は交代で休憩取るようにするしかないわね!!」



「この騒ぎの中、安心して寝れないよ。。」



「バーカ、仮眠でいいんだよ!戦闘に支障がない程度は疲労を回復していかねーと危険だからな!!」



「そっか!」



「あっ!デカイのも来はじめたよ!!」



「あれはレッドドラゴンか!多いな…」



「100匹くらいはいそうね。」



「まあ、俺たちなら楽勝だ!!」




 神界では神の権限を取り戻したゼウスローゼンが、地上の魔物たちの生息地の設定を1つ1つ戻していっていた。それに伴い、魔物たちは少しずつではあるが進行を取り止め本来の生息地に戻っていくことになった。


生息地とは、あくまでそこにいることが当たり前だと認識させることであって、そこに絶対にいなければならないと強制させるものではない。何が言いたいかと言うと、イレギュラー的なことがあれば生息地に戻ることよりもそちらを優先してしまうのだ!


つまり既に戦闘状態になっている魔物にはそんな設定の差など些末な差であり、戦闘行為を止めてまで生息地に戻ることはないということだ!



 現在、地上では転生者たちが100を越えるレッドドラゴンの集団と戦っていた。



「アイスグングニル!!」



アリエスの放った氷魔法の槍でまた一体のレッドドラゴンが打ち落とされていく。



「いいなー!私のナイフじゃ、ここまで遠距離だと大したダメージ与えられないのが悔しいわ!!」



「ルージュはその分、そこら中にいる地上の魔物に集中しといてよ!遠距離は俺たちに任せといて!!ホールドニーショット!」



ボリーの放った矢はレッドドラゴンに命中するとその冷気でレッドドラゴンを凍結させた。そのまま地上に落下したレッドドラゴンはバラバラに砕け散り死滅した。



「ボリーの癖に生意気ね!」



ルージュは理不尽にボリーの鼻をつまみ上げ、そのまま弾いた。



「あ痛ててて!ルージュ何するんだよ!?俺が何をしたって言うんだよ?」



「ボリー止めとけ!それ以上言うともう一度やられるぞ!!ルージュは昨日初っぱなに殺された腹いせしたいのに、大物相手に活躍できないのが悔しいんだ!分かってやれ!」



「フッターー!!その口を切り刻まれたいらしいわね?」



「え?何で!?俺が何をしたっていうんだー!」



「その分かった風な生意気な口が気に入らないのよ!!」



結局フッタも同じように鼻を弾かれることになったのは仕方ないことだろう。




 あれだけ多く存在していたレッドドラゴンたちも順調に減って残り30匹を切ったところでそれは起こった。



「あれ?何だ!?力が抜ける…」



「私もよ!何だか一気に弱体化したみたいな…状態異常でもくらったかな?」



「違うわ!ステータスを見て!!GPで取ったスキルが何一つ無くなってるわ!」



「ほ、本当だ!!俺の弓神も全能力最大値解放も消えてる。どうなってるんだ?」



「オリオンの言ってた通りになっちゃったみたいね…私たちにファーレ神の加護が無くなってるのよ!」



そう、ファーレ神の加護が消え、俺たち転生者たちはそのチートスキルの一切を失うこととなってしまっていた。





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