第47話
俺は9年前力を得てから、一度も全力で戦っていない。正確にはスキルの範疇でしか本気を出していないのだ!俺は1歳の頃からただの生活魔法を工夫して様々な魔法へ変えて利用してきた。
それと同じようにスキルや魔法も使用する感覚を完全に覚えることにより、スキルを発動させようと言葉にしなくとも無詠唱で技でも魔法でも使用することができたのだ。
ある日さらに実験をしていると、やはり生活魔法と同じく無詠唱で使用する技やスキルはイメージ次第で自由に変化させることが可能であった。
だが…これは余りに威力が強すぎた。ただでさえ◯◯神とつくスキルから使えるようになる技はどれもとんでもない威力なのだ!それをさらに威力を上げることの危険性への不安の方が勝り、俺はこの力を封印してきた。
ステータスもスキルも上のメノウさんという強敵を倒し、さらに30分以内にリリィとルージュの回復と蘇生を終えなければならない。力の出し惜しみなどしてる場合ではないのだ!
俺は深呼吸を一度し、己の持つ力を解放した。空から俺に向けて巨大な隕石を降らせる魔法を放っているメノウさんに向けて、俺は火と土と光の魔法を組み合わせ、さらに変化させ、小さな太陽のようなものを放った。小さいとはいえ、その大きさは直径50メートルはあり、表面は炎の波が燃え盛っている。
そこにメノウさんの放った隕石が降り注ぐが、ミニ太陽の熱によって一瞬で燃やし尽くされていく。そのままミニ太陽はまるで重力に引かれていくが如く、メノウさんへ向けて高速で引き寄せられていく。
メノウさんもこれを食らうとマズイと感じたのか必死に回避行動に出るが、ミニ太陽はメノウさんに近づけば近づくほどその速度を増し、地上側に戻ることを邪魔していく。避けることが困難だと思ったのか、メノウさんは次々に強大な魔法やスキルをミニ太陽へ向けて放ち、消そうとするがその全てをただ飲み込んでいくばかりである。
ミニ太陽がメノウさんに当たると、メノウさんの体を燃やし、大量の煙を放ちながら、さらに空高くに運んでいく。もう殆ど点にしか見えないほど天高くまで上昇したところでミニ太陽は爆発し、辺りに凄まじい爆風を起こした。
その爆風は離れていた地上にも降り注ぎ、一瞬ではあったが俺たちの体をも焼いた。
「終わったか。さて、蘇生しないとだな!」
俺はみんなのところへ向かい、リリィとルージュを蘇生しようと思っていたのだが、逆に興奮した様子の仲間たちに激しい勢いで揉みくちゃにされてしまった。
「何なんです!今の魔法の威力ありえませんって!!」
「やっぱりオリオンさんは強すぎです!」
「私たちまで燃やすつもりです?笑」
「どうやったらあんな威力の魔法をはなてるん?1人チート過ぎるやろ!」
「お疲れっす!」
「おいおい、みんなやり過ぎ!!痛いって…リリィとルージュを生き返らせるから話は後だ!」
その一言でみんなは止まってくれた。みんなも仲間の命を救える時間制限を理解しているからだ。
「まずは体を回復だ!…よしっ!これで大丈夫!!次は蘇生を…ぇ?」
その時、俺の意識は消えようとしていた。その前に最後に目に映ったのは首が切られ胴体だけになった自分の姿であった。
「「オリオンさん!!」」
悲痛な皆の声が辺りに響き渡る。皆の前に突然現れ、俺の首を切ったのは倒した筈のメノウさんだった。
「何故お前が生きているんだ!!」
「オリオンさんが…オリオンさんが…許さない!許せない!!」
皆すぐに臨戦体勢に移り、メノウさんに飛びかかっていった。それをメノウさんは無表情で切り裂いていった。最初に斬りかかったカシムは縦に真っ二つに切られ倒れ、次にフッタが斧でメノウさんを背中から切り裂いたところを逆にその両腕を切られ、さらに後ろから迫っていたメッシュごと体を真っ二つに切断された。
俺がフェニックスのスキルで甦るまでに、さらにメネシス、ロイ、ルルまで殺されることとなっていた。
「何てことを!!メノウさん、いや、メノウ!よくも…よくもやったなー!!」
俺は目の前に広がる残酷な光景に怒りを抑えきれずにいたが、アリエスの言葉で俺は一気に冷静になれた。
「オリオン、冷静になって!!もうフェニックスで甦れないんだからね!あんたが死んだら全員このまま蘇生できないんだから!!」
そうだ…俺が死んだら全て終わりなんだ!こんなときこそ冷静にならねばならない。今度こそ間違いなく止めを刺す!!
「ありがとう、アリエス。みんなを連れて離れてるんだ!今度こそ俺が確実に止めを刺す!!」
「分かったわ。みんな仲間の死体を抱えて移動するわよ!」
「「はい!」」
どうやって先ほど生き残ったのか分からないが、俺は今度こそメノウに確実に止めを刺す為にも接近戦で挑むことにした。時間もないし、もうミスは許されないのだ!!
俺は補助魔法を自身に複数かけながら、メノウに向かっていった。メノウはそれに応じ、巨大な黒剣を激しく振り回しながらスキルを放った。
「エクスカリバー!!」
メノウの剣は何物でも切り裂く光に覆われた。
「こちらも同じ技だ!」
俺の手刀は同じく何物でも切り裂く光に覆われた。俺たちはそのままぶつかった。最強の矛対最強の矛の戦いである。
俺の手刀がメノウの剣にぶつかると、メノウの光輝いてた光が一瞬で失い、そのまま俺の手刀で剣は何の抵抗もなく切り裂かれ、その勢いのままメノウの体は真っ二つに切り裂かれた。
「グア!?」
俺はエクスカリバーのスキルに別の魔法の効果を無理やりねじ込んだのだ。それは『ディスピアー』、補助など掛かってる効果を消滅させる魔法である。
「止めだ!」
俺はそのまま手刀で首を斬ろうとしたのだが、そこで予想もしていなかったことが起こった。メノウの姿が突然消えたのだ。移動したのではない、消えたのだ。
そうか!さっきのミニ太陽も転移を使って避けたのか!!何処だ?何処へいった?
俺は気配を探ることに集中した。しかし近くにはメノウの気配を感じられない。と思った瞬間、俺の真後ろに気配が現れ、俺の首を手刀で切り裂こうとしていた。
「させるか!」
俺はエクスかリバーが起動させたままの右手でその腕を切り裂いた。さらに追撃しようとすると再びメノウの姿が消える。
ちっ!転移の使い方が厄介だ!!倒しきれるまでのダメージを負わせることができない!それに転移にしては転移先を細かく設定できすぎだ!!おそらくあれは別のスキルだな…ショート転移ってところか?見える範囲のどこでも移動できるってのが定番だな。
などと考えてるうちに再び、死角へ突然転移してメノウが現れた。今度はタイミングが絶妙すぎて避けるだけで精一杯だった。
ちっ!何て戦闘センスだ。。この数回の衝突で確実に成長していっている。早めにこのショート転移をどうにか攻略しないとやられるのは俺の方か…
俺が反撃しようとしてると、メノウは再び転移し、後ろから俺を手刀で刺そうとした。それに対応しようと動き出した瞬間に再びメノウは俺の真横に転移し、俺の腹にその手刀で貫いた。
「グハッ!」
だがこのくらいのダメージで俺は止まらない!俺もメノウの胸に手刀を突き刺した!!
お互いの体が貫き合い、一瞬の硬直を生み出す。先に動いたのは俺だった。突き刺した手刀を動かしてメノウの体を切り刻んでやろうとしたのだ。それを嫌ったメノウは再びショート転移を使って逃げようとした。…が、今回はメノウにも予想外のことが起きた。
俺の目の前の風景がフワッと一瞬で移動したのだ。体が繋がっていた為に、俺も一緒にショート転移で移動したようだ!
「こりゃーいい!こうやって繋がってさえいれば逃がさすに済むって訳か♪時間もない!もう逃がしてやらないからな!!」
俺は自分の腹に『リジェネーション』とディスピアーの魔法をかけた。リジェネーションは自動回復の魔法である。一気に回復するエクストラヒールと違い、時間経過と共に少しずつ回復していく魔法なのだが、超回復のスキルを持つ俺にはさらに効果が高い。
俺の腹の傷は急速に回復し、メノウの腕を筋肉によってロックした。メノウがエクスカリバーなどを付与して逃げようとしてもそれをディスピアーが打ち消してくれる筈だ。
デメリットとしては新たに体を貫き続けられている激痛が常に襲い続けることだ!
俺の左手は俺を貫いてる手をロックするのに集中し、右手は変わらずにメノウの体を高速で切り刻んでいた。心臓も何度も切ってる筈なのに、メノウは一向に死ぬ様子もない。俺は知らなかったが、メノウの体には7つの心臓が存在しており、確実に殺す為にはその全てを潰す必要があったのだ。
もしかして心臓の場所が人間と違うのか?仕方ない…繋がりが弱くなるから不安だが、一瞬で首を切り裂いてやる!
俺が胸から一気に首頭を切り裂こうと動いた瞬間、メノウは狙っていたように自身の右腕を切り裂き、ショート転移で逃げ出した。
くそ!左手が大人しいと思っていたら、これを狙っていたのか!!
お互いに超回復がある為このくらいで死ぬことはないが、せっかくのチャンスを逃してしまった後悔と、リリィとルージュの蘇生可能時間までもうそれほど残されていないことが俺の心を焦らせる。
ぶっつけ本番でやることではないが、時間もない!試してみるか!!
俺は無謀ともいえることに全てを賭けてみることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます